金型交換を減らす生産順序 最適化AIで何が変わる?|モーターコアのAI生産スケジューリング 3

2026.11.01A1:生産計画・スケジューリング , S08:金型や治具を使う工程で納期遅れと段取りを最少化したい

全5回の3回目です。前回は、①金型の交換と試し打ちによる段取り時間とコストの増加、②特急対応、③ロットサイズが最適化できず在庫が増えること、④スリッターと大型プレス機の同期がとれずスリット材が置き場で待つこと、という4つの課題を説明しました。今回は、この4つを同時に扱う考え方を取り上げます。金額は第4回で扱います。

モーターコアのAI生産スケジューリング 第3回 インフォグラフィック

大型プレス機で3ロットを流す例では、生産順序を組み替えるだけで段取り時間が240分から140分に短縮し、捨てるスリット材も40mから25mに減ります。生産順序の組み方で生じていた分を減らすことで、段取り時間は全工程で30%短縮できると見込みます。

1. 人が生産順序を決めるときの限界

ロットが変わるたびに段取りをするので、ロットの数は段取り回数と同じです。第2回で説明した4種類の切替の回数を足すと、大型プレス機の段取り回数は1台で月57回、2台で月114回あり、1週間あたりでは約28回になります。つまり、この工場の大型プレス機では、1週間に約28ロットを流します。

プレス機の前で、打ち抜いた部品を確かめる作業者
プレス機の前で、打ち抜いた部品を確かめる作業者

28ロットを1列に並べる順序だけでも28の階乗、約10の29乗通りあり、それぞれのロットを2台のどちらで打つかを加えるとさらに増えます。計画担当者は、経験をもとに順序を1つ組み、段取りや納期に無理が見つかれば組み直す、という試行錯誤を重ねて1つの計画を決めます。約10の29乗通りのうち、その試行錯誤で実際に試せる順序はごく一部です。

段取り時間は、前後の品番の組み合わせで決まります。同じ品番を続けて流せばコイルの継ぎ替えだけになり、違う品番が交互になれば金型の交換が増えます。段取り時間のほかに、見込生産品の在庫の残り、受注生産品の納期、クレーンと段取り工の空き、金型の研ぎ直しの時期、スリッターでスリット材を切る時刻も同時に見る必要があります。

2. 最適化AIができること

生産計画を人の手ではなく計算で作るしくみを、生産スケジューラと呼びます。生産スケジューラのうち、守るべき条件を与えると、その範囲で最も良い生産順序を計算で探し出すものが最適化AIです。

与える条件には、①コイルの継ぎ替えと金型の交換の時間、②かしめと接着を切り替えるときの時間、③試し打ちで捨てる長さ、④天井クレーンが1基で段取り工が2人であること、⑤金型の研ぎ直しの時期、⑥見込生産品ごとの安全在庫、⑦受注生産品の納期が入ります。これらの条件を制約条件と呼びます。

最適化AIが決めるのは、品番をどの設備で流すか、流す順序、1回につくる量、前後の工程の着手時刻の4つです。前の2つを、それぞれ作業の設備への割付け、投入順序最適化と呼びます。後の2つは、ロットサイズの決定と工程の同期で、工程の同期は第2回で説明した同期化にあたります。下の表は、4つの要素と、それぞれが主に解決する第2回の課題を並べたものです。

最適化の要素内容主に解決する第2回の課題
作業の設備への割付け同じ品番のロットを同じプレス機に集め、2台の金型の交換の時刻が重ならないよう仕事の量をならす課題1 金型の交換の増加
投入順序最適化安全在庫と納期を守りながら、同じ品番が続き、かしめと接着の切替が少ない生産順序を決める課題2 特急対応
ロットサイズの決定出荷の量、在庫の残り、安全在庫から、1回につくる量を決める課題3 ロットサイズが最適化できない
工程の同期大型プレス機の予定に合わせて、スリッターでスリット材を切る順序と時刻を決める課題4 スリッターと大型プレス機の同期

割付けでは、2台の大型プレス機の金型の交換が同じ時刻に重ならないよう、どちらのプレス機でどの品番を打つかを決めます。そのうえで、一部の設備だけに仕事の量、つまり負荷が偏らないようにならします。この調整を負荷平準化と呼びます。

工程の同期では、表のとおり、スリッターでスリット材を切る順序と時刻を大型プレス機の予定に合わせます。そのため、プレス機の前で待つ仕掛品が減り、製造リードタイムが短くなります。

最適化AIを使うと、計画を作る時間と管理の時間も減ります。計画を作る時間が減るのは、順序を組んでは組み直す試行錯誤を、人の代わりに最適化AIが行うためです。

管理の時間が減るのは、安全在庫と納期を守れる生産順序がはじめから計画に入るためです。進捗管理担当者が、安全在庫を下回りそうな品番や遅れそうな受注生産品を探して督促する回数が減ります。

3. 生産順序を組み替えると、何が起きるのか

(1) 同じ品番のロットを続けて流す

例として、大型プレス機1台で駆動用のステータコアを3ロット打つ場面を考えます。どれもかしめで固める品番なので、かしめと接着の切替はありません。

機種Aのステータコアは、補充が必要になる時期の違う2ロットに分けてつくります。2つのロットの間の段取りはコイルの継ぎ替えの20分、捨てるスリット材は5mです。機種Bのステータコアは金型が違うので、機種Aとの間の段取りは金型の交換の120分、捨てるスリット材は20mです。

見込生産品も、補充が必要になる時期を納期と考えます。納期が早いものから並べると、機種A(1ロット目)、機種B、機種A(2ロット目)の順になることがあります。下の2つの表は、この順と、組み替えた順を比べたものです。3つのロットを流す順に1行ずつ並べ、前のロットから切り替えるときの段取りを書いています。

組み替える前

流す順品番前のロットからの切替段取り時間捨てるスリット材
1番目機種Aのステータコア(1ロット目)———
2番目機種Bのステータコア金型が違うので金型の交換120分20m
3番目機種Aのステータコア(2ロット目)金型が違うので金型の交換120分20m
合計——240分40m

組み替えた後

流す順品番前のロットからの切替段取り時間捨てるスリット材
1番目機種Aのステータコア(1ロット目)———
2番目機種Aのステータコア(2ロット目)同じ品番なのでコイルの継ぎ替え20分5m
3番目機種Bのステータコア金型が違うので金型の交換120分20m
合計——140分25m
組み替える前と後のガントチャート。段取りが100分短くなり、3ロットが100分早く終わる(1ロットを打つ時間は説明のための仮の長さ)
組み替える前と後のガントチャート。段取りが100分短くなり、3ロットが100分早く終わる(1ロットを打つ時間は説明のための仮の長さ)

1番目に流すロットの前の段取りは、どちらの順でも同じなので、表には入れていません。表のとおり、組み替えると段取り時間は100分短縮し、金型の交換が1回減るため、捨てるスリット材も15m減ります。

納期の早い順に並べるのが、最も安全な計画に見えます。ところが、この例のように金型の交換が増えて段取り時間が増加し、その分だけ後ろの品番の着手が遅れます。

ただし、組み替えてよいのは、機種Bが納期に遅れない場合だけです。機種Bを後ろに回しても納期に間に合うかを確かめ、間に合うときに限って、金型の交換が減る順に入れ替えます。間に合わないときは、納期の早い順のままにします。

納期に間に合う並びのなかで、段取り時間が最も短くなるものを選べれば、工場の負担はさらに減ります。しかし、品番が増えると組み合わせは急に増えるため、人が試しながら最短の並びを見つけるのは難しくなります。

品物がいくつもの工程を順に通る工場では、途中の工程の順序を入れ替えるのは、さらに難しくなります。例えばスリッターの順序を入れ替えても、納期に遅れるかどうかは、後ろのプレス機や検査、梱包の予定まで見ないと分かりません。途中の工程だけを見ても、納期を守れるかは分からないからです。

(2) 4つの要件を同時に満たす

金型の交換だけを見れば、同じ品番のロットをすべて続けて流すのが最短です。ところが、機種Aを長く続けると、その間はほかの見込生産品をつくれず、在庫が安全在庫を下回ります。

人が順に決める場合は、まず欠品が近い品番と納期が近いオーダを前に置き、次にロットサイズを決め、最後に同じ金型が続くよう並べ替えます。最後の並べ替えで機種Aをまとめると、最初に前へ置いた機種Bが後ろにずれます。

機種Bを元の位置に戻すと、今度は金型の交換が増えて段取り時間が増加します。2台の金型の交換が重ならないようにずらすと、スリッターでスリット材を切る順序がまた動きます。順に決める進め方では、この手戻りが終わりません。

最適化AIは、安全在庫、納期、段取り時間、ロットサイズの4つを、クレーンと段取り工の空きとスリッターでスリット材を切る時刻も含めて1つの計算の中で同時に扱います。そのため、ほかの見込生産品の在庫が安全在庫を下回らない範囲で、同じ品番をできるだけ続けて流す順序を見つけます。

ゼロにはなりませんが、生産順序の組み方で生じていた分の段取り時間は短縮できます。ゼロにならないのは、品番が変わるたびに金型の交換が必要なためです。この連載では、段取り時間の削減率を全工程で30%と置きます。

4. 計画外の事象が起きたらリスケジュールする

計画どおりに進まない日は珍しくありません。プレス機の故障で1台が止まる、電磁鋼板のコイルの入荷が遅れる、試作の急ぎのオーダが入る、などです。この工場では、計画担当者が約120品番の在庫と納期を見直して計画を作り直すのに半日かかり、その間、現場は前の計画のまま動きます。

最適化AIでは、止まった設備や新しいオーダを条件として入れ直せば、人が半日かけて作り直すより短い時間で新しい計画ができます。計算にかかる時間は品番の数や制約条件の多さによって変わり、数分以上かかることもあります。この計画の作り直しをリスケジュールと呼びます。短い時間でリスケジュールできれば、残業で補う以外に、生産順序を組み替える、もう1台の大型プレス機に振り替えるなどの対応を選べます。

できあがった計画は計画担当者が確認し、現場で守っている決まりに合わない箇所だけを直します。最後の判断は人が行います。

まとめ

第2回で説明した4つの課題は、金型、かしめか接着か、天井クレーンの台数と段取り工の人数、金型の研ぎ直しの時期、ロットサイズ、スリッターでスリット材を切る時刻を同時に見ないまま生産順序を決め、督促が入るたびに特急対応で組み替えていることから起きていました。最適化AIは、設備への割付け、投入順序、ロットサイズ、工程の同期の4要素を1回の計算で決めます。そのため、金型の交換を減らすと欠品が出て、欠品を防ぐと金型の交換が増える、という手戻りを人が繰り返す必要がなくなります。プレス機を買い足したり改造したりせずに、ボトルネックである大型プレス機の段取り時間と、試し打ちで捨てるスリット材を減らせます。

次回は、段取り時間の30%短縮と、計画と管理の時間削減が、1年でいくらになるのかを計算します。あなたの工場で、計画担当者が計画を一から作り直すのに、いま何時間かかっているでしょうか?

解説動画

この回の内容を、動画でも説明しています。

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段取り時間の30%短縮は、1年でいくらになるのか。6つのコストダウン項目を計算式で積み上げると、年間Return値は28,697,316円。前提値を自社の数字に差し替えれば、同じ式で検算できます。

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