【金属部品・ボディパネルのAI生産スケジューリング 3】解決策 ~ 金型と材質の生産順序を最適化AIで組み替える

2026.10.09A1:生産計画・スケジューリング , S08:金型や治具を使う工程で納期遅れと段取りを最少化したい

全5回の3回目です。前回は、特急対応、段取り時間の増加、ロットサイズが定まらないこと、在庫保有コストの増加という4つの課題を説明しました。今回は、この4つを同時に扱う考え方を説明します。金額は次の第4回で計算します。

金属部品・ボディパネルのAI生産スケジューリング 第3回 インフォグラフィック

1. 人が生産順序を決めるときの限界

この工場では、2本のプレスラインで1週間に約18ロットを流します。ロットが変わるたびに段取りをするので、ロットの数は段取りの回数と同じです。第1回で説明したとおり段取りは1ラインで月36回あり、2本では月72回、1週間あたりでは約18回になります。

18ロットを1列に並べる順序だけでも18の階乗、約10の16乗通りあり、どちらのラインに割り振るかを加えるとさらに増えます。計画担当者が実際に比べられるのは、経験から選んだ数通りの順序だけです。

どの順序が良いかは、前後の品番の組み合わせで決まります。第1回で説明したとおり、同じ形状の2つの仕様を続けて流せば部分交換だけになり、鋼板とアルミ板が交互になれば清掃が増えます。加えて、見込生産品の在庫の残り、受注生産品の納期、天井クレーンの空き、後工程のヘミングセルの空き時間も同時に見る必要があります。条件を1つずつ順に決めていくと、先に決めたことと後に決めたことが食い違います。

2. 最適化AIができること

生産計画を人の手ではなく計算で作るしくみを、生産スケジューラと呼びます。生産スケジューラのうち、守るべき条件を与えると、その範囲で最も良い生産順序を計算で探し出すものが最適化AIです。与える条件には、金型の部分交換と一式交換の時間、材質切替の清掃時間、天井クレーンが1基であること、見込生産品の安全在庫、受注生産品の納期が入ります。これらの条件を制約条件と呼びます。

最適化AIが決めるのは、品番をどの設備で流すか、流す順序(この決め方を投入順序最適化と呼びます)、1回につくる枚数、前後の工程の着手時刻の4つです。下の表は、4つの要素と、それぞれが主に解決する第2回の課題を並べたものです。1つの要素が複数の課題の解決に寄与することもあり、対応はおおむねの目安です。

最適化の要素内容主に解決する第2回の課題
作業の設備への割付け品番をどちらのプレスラインで流すかを決め、2本の負荷をならす課題2 段取り時間とコストの増加
投入順序最適化安全在庫と納期を守りながら、同じ金型と同じ材質が続く生産順序を決める課題1 特急対応
ロットサイズの決定出荷の量、在庫の残り、安全在庫から、1回につくる枚数を決める課題3 ロットサイズが定まらない
工程の同期ブランキングとヘミングの着手時刻を、プレス成形の完了時刻に合わせる課題4 在庫保有コストの増加

割付けでは、同じ形状の品番や同じ材質の品番を同じラインに集め、一式交換と清掃の回数を減らします。そのうえで、片方のラインだけに負荷が偏らないようにならします。この調整を負荷平準化と呼びます。工程の同期では、プレス成形が終わる時刻に合わせてヘミングの着手を決めるため、工程の間で待つ仕掛品が減り、製造リードタイムが短くなります。

3. 生産順序を組み替えると、何が起きるのか

(1) 同じ形状のロットを続けて流す

例として、1本のラインでフェンダーを2ロット、フードを1ロット流す場面を考えます。2つのフェンダーは取付穴があるかないかだけが違うので、その間の段取りは部分交換の40分です。フェンダーとフードは形状が違うので、その間の段取りは一式交換の120分です。

納期の早い順に並べると、フェンダー、フード、フェンダーの順になることがあります。この順では一式交換が2回で240分かかります。フェンダー、フェンダー、フードの順に組み替えると、部分交換の40分と一式交換の120分で160分になり、80分短縮できます。

(2) 4つの要件を同時に満たす

金型の交換だけを見れば、同じ形状のロットをすべて続けて流すのが最短です。ところが、フェンダーのロットを長く続けると、その間はフードをつくれず、フードの在庫が安全在庫を下回ります。

人が順に決める場合は、まず欠品と納期の近い品番を前に置き、次にロットサイズを決め、最後に同じ形状がまとまるよう並べ替えます。最後の並べ替えでフェンダーをまとめると、最初に前へ置いたフードが後ろにずれます。フードを元の位置に戻すと、今度は一式交換が増えて段取り時間が増加します。順に決める進め方では、この手戻りが終わりません。

最適化AIは、安全在庫、納期、段取り時間、ロットサイズの4つを1つの計算の中で同時に扱います。そのため、フードの在庫が安全在庫を下回らない範囲で、フェンダーをできるだけ続けて流す順序を見つけます。品番が変わるたびに金型の交換か清掃が必要になるため、段取り時間そのものは残ります。短縮できるのは生産順序の組み方で生じていた分で、この連載ではその削減率を全工程で30%と置きます。

4. 計画外の事象が起きたらリスケジュールする

計画どおりに進まない日は、毎月のように起きます。プレス機の故障でラインが止まる、コイルの入荷が遅れる、架装メーカーから急ぎのオーダが入る、などです。この工場では、計画担当者が約140品番の在庫と納期を見直して計画を作り直すのに半日かかり、その間、現場は前の計画のまま動きます。

最適化AIでは、止まったラインや新しいオーダを条件として入れ直せば、人が半日かけて作り直すより短い時間で新しい計画ができます。計算にかかる時間は品番の数や制約条件の多さによって変わり、数分で終わることもあれば、それ以上かかることもあります。この計画の作り直しをリスケジュールと呼びます。短い時間で作り直せれば、残業で補う以外に、生産順序を組み替える、もう1本のラインに振り替えるなどの対応を選べます。

できあがった計画は計画担当者が確認し、現場で守っている決まりに合わない箇所だけを直します。毎回同じ箇所を直しているなら、その内容を制約条件として加えます。最後の判断は人が行います。

まとめ

第2回の4つの課題は、安全在庫を下回りそうな品番や納期の接近が見つかるたびに、生産順序が特急対応で組み直されることが原因でした。最適化AIは、設備への割付け、投入順序、ロットサイズ、工程の同期の4要素を1回の計算で決めます。そのため、金型の交換を減らすと欠品が出て、欠品を防ぐと金型の交換が増える、という手戻りを人が繰り返す必要がなくなります。プレスラインを買い替えたり改造したりする投資をせずに、ボトルネックであるプレス成形の段取り時間を短縮できます。

次回は、段取り時間の30%短縮と、計画と管理の時間削減が、1年でいくらになるのかを計算します。あなたの工場で、先月プレス成形の金型の一式交換が何回あったか、記録は残っているでしょうか?

解説動画

この回の内容を、動画でも説明しています。

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段取り時間の短縮は、1年でいくらになるのか。6つのコストダウン項目を計算式で積み上げると、年間Return値は38,827,800円。前提値を自社の数字に差し替えれば、誰でも同じ式で検算できます。

タグ : リスケジュール 制約条件 投入順序最適化 最適化AI 段取り短縮 生産スケジューラ 生産スケジューリング 生産管理 負荷平準化 金型交換