【金属部品・アルミダイカストのAI生産スケジューリング 3】解決策 ~ 金型交換と合金の切替を減らす生産順序を最適化AIで決める

2026.10.08A1:生産計画・スケジューリング , S08:金型や治具を使う工程で納期遅れと段取りを最少化したい

全5回の3回目です。前回は、特急対応、金型交換と暖機による段取り時間の増加、止めても冷やせない保持炉のエネルギー、鋳造と機械加工の間にたまる鋳物という4つの課題を説明しました。今回は、この4つを同時に扱う考え方を説明します。金額は次の第4回で計算します。

金属部品・アルミダイカストのAI生産スケジューリング 第3回 解決策 インフォグラフィック

1. 人が生産順序を決めるときの限界

この工場では、6台のダイカストマシンで1週間に約27ロットを流します。ロットが変わるたびに段取りをするので、ロットの数は段取りの回数と同じです。第1回で説明したとおり、段取りは1台で月18回(部分交換6回と一式交換12回)あり、6台では月108回、1週間あたりでは約27回になります。

27ロットを1列に並べる順序だけでも27の階乗、約10の28乗通りあり、どのダイカストマシンに割り振るかを加えるとさらに増えます。計画担当者が実際に比べられるのは、経験から選んだ数通りの順序だけです。

どの順序が良いかは、前後の品番の組み合わせで決まります。同じ形状の2つの仕様を続けて流せば部分交換だけになり、ADC12と熱を伝えやすい合金が交互になれば溶湯の入れ替えが増えます。加えて、見込生産品の在庫の残り、受注生産品の納期、予熱炉の空き、後工程の機械加工の空き時間も同時に見る必要があります。

2. 最適化AIができること

生産計画を人の手ではなく計算で作るしくみを、生産スケジューラと呼びます。生産スケジューラのうち、守るべき条件を与えると、その範囲で最も良い生産順序を計算で探し出すものが最適化AIです。与える条件には、部分交換と一式交換の時間、暖機の間に捨てるショットの数、合金の切替の時間、予熱炉が1基であること、見込生産品の安全在庫、受注生産品の納期が入ります。これらの条件を制約条件と呼びます。

最適化AIが決めるのは、品番をどの設備で流すか、流す順序(この決め方を投入順序最適化と呼びます)、1回につくる個数、前後の工程の着手時刻の4つです。下の表は、4つの要素と、それぞれが主に解決する第2回の課題を並べたものです。1つの要素が複数の課題の解決に寄与することもあり、対応はおおむねの目安です。

最適化の要素内容主に解決する第2回の課題
作業の設備への割付け同じ形状、同じ合金の品番を同じダイカストマシンに集め、6台の負荷をならす課題2 段取り時間とコストの増加、課題3 保持炉のエネルギー
投入順序最適化安全在庫と納期を守りながら、同じ金型と同じ合金が続く生産順序を決める課題1 特急対応
ロットサイズの決定出荷の量、在庫の残り、安全在庫から、1回につくる個数を決める課題4 ロットサイズと、工程の間にたまる鋳物
工程の同期機械加工の着手時刻を、ダイカストの完了時刻と出荷の順に合わせる課題4 ロットサイズと、工程の間にたまる鋳物

割付けでは、熱を伝えやすい合金の品番を決まったダイカストマシンに集めれば、ほかのダイカストマシンでは溶湯の入れ替えが起きません。そのうえで、一部の設備だけに負荷が偏らないようにならします。この調整を負荷平準化と呼びます。工程の同期では、ダイカストが終わる時刻に合わせて機械加工の着手を決めるため、工程の間で待つ仕掛品が減り、製造リードタイムが短くなります。

3. 生産順序を組み替えると、何が起きるのか

(1) 同じ形状のロットを続けて流す

例として、1台のダイカストマシンでトランスミッションケースを2ロット、オイルパンを1ロット流す場面を考えます。どちらもADC12でつくるため、合金の切替はありません。2つのトランスミッションケースは取付座の有無だけが違うので、その間の段取りは部分交換の40分です。トランスミッションケースとオイルパンは形状が違うので、その間の段取りは一式交換の150分です。

補充が必要になる時期の早い順に並べると、トランスミッションケース(取付座あり)、オイルパン、トランスミッションケース(取付座なし)の順になることがあります。下の2つの表は、この順と、組み替えた順を比べたものです。3つのロットを流す順に1行ずつ並べ、前のロットから切り替えるときの段取りを書いています。

組み替える前

流す順品番前のロットからの切替段取り時間捨てるショット
1番目トランスミッションケース(取付座あり)———
2番目オイルパン形状が違うので一式交換150分5個
3番目トランスミッションケース(取付座なし)形状が違うので一式交換150分5個
合計——300分10個

組み替えた後

流す順品番前のロットからの切替段取り時間捨てるショット
1番目トランスミッションケース(取付座あり)———
2番目トランスミッションケース(取付座なし)取付座だけが違うので部分交換40分0個
3番目オイルパン形状が違うので一式交換150分5個
合計——190分5個

1番目に流すロットの前の段取りは、どちらの順でも同じなので、表には入れていません。表のとおり、組み替えると段取り時間は110分短縮し、一式交換が1回減るため、捨てるショットも5個減ります。補充の時期の早い順に並べるのが最も安全な計画に見えますが、この例のように一式交換が増え、増えた段取り時間の分だけ後ろの品番の着手が遅れます。

(2) 4つの要件を同時に満たす

金型の交換だけを見れば、同じ形状のロットをすべて続けて流すのが最短です。ところが、トランスミッションケースのロットを長く続けると、その間はオイルパンをつくれず、オイルパンの在庫が安全在庫を下回ります。

人が順に決める場合は、まず欠品と納期の近い品番を前に置き、次にロットサイズを決め、最後に同じ形状がまとまるよう並べ替えます。最後の並べ替えでトランスミッションケースをまとめると、最初に前へ置いたオイルパンが後ろにずれます。オイルパンを元の位置に戻すと、今度は一式交換が増えて段取り時間が増加します。順に決める進め方では、この手戻りが終わりません。

最適化AIは、安全在庫、納期、段取り時間、ロットサイズの4つを1つの計算の中で同時に扱います。そのため、オイルパンの在庫が安全在庫を下回らない範囲で、トランスミッションケースをできるだけ続けて流す順序を見つけます。品番が変わるたびに金型の交換か合金の切替が必要になるため、段取り時間そのものは残ります。短縮できるのは生産順序の組み方で生じていた分で、この連載ではその削減率を全工程で30%と置きます。

4. 計画外の事象が起きたらリスケジュールする

計画どおりに進まない日は珍しくありません。ダイカストマシンの故障で1台が止まる、金型に割れが見つかって修理に出す、補修用の急ぎのオーダが入る、などです。この工場では、計画担当者が約65品番の在庫と納期を見直して計画を作り直すのに半日かかり、その間、現場は前の計画のまま動きます。

最適化AIでは、止まった設備や新しいオーダを条件として入れ直せば、人が半日かけて作り直すより短い時間で新しい計画ができます。計算にかかる時間は品番の数や制約条件の多さによって変わり、数分以上かかることもあります。この計画の作り直しをリスケジュールと呼びます。短い時間で作り直せれば、残業で補う以外に、生産順序を組み替える、ほかのダイカストマシンに振り替えるなどの対応を選べます。

できあがった計画は計画担当者が確認し、現場で守っている決まりに合わない箇所だけを直します。毎回同じ箇所を直しているなら、その内容を制約条件として加えます。最後の判断は人が行います。

まとめ

第2回で説明した4つの課題は、金型、合金、予熱炉、ロットサイズ、機械加工の着手を同時に見ないまま生産順序を決め、督促が入るたびに特急対応で組み替えていることから起きていました。最適化AIは、設備への割付け、投入順序、ロットサイズ、工程の同期の4要素を1回の計算で決めます。そのため、金型の交換を減らすと欠品が出て、欠品を防ぐと金型の交換が増える、という手戻りを人が繰り返す必要がなくなります。ダイカストマシンを買い足したり改造したりする投資をせずに、ボトルネックであるダイカストの段取り時間と、捨てるショットを減らせます。

次回は、段取り時間の30%短縮と、計画と管理の時間削減が、1年でいくらになるのかを計算します。あなたの工場で、先月ダイカストの一式交換が何回あったか、記録は残っているでしょうか?

解説動画

この回の内容を、動画でも説明しています。

次のコラム

段取り時間の30%短縮は、1年でいくらになるのか。6つのコストダウン項目を計算式で積み上げると、年間Return値は37,551,600円。前提値を自社の数字に差し替えれば、誰でも同じ式で検算できます。

タグ : リスケジュール 制約条件 合金切替 投入順序最適化 最適化AI 生産スケジューラ 生産スケジューリング 生産管理 負荷平準化 金型交換