【金属部品・アルミダイカストのAI生産スケジューリング 2】課題 ~ 特急対応と、止めても冷やせない炉が生む4つの課題

2026.10.08A1:生産計画・スケジューリング , S08:金型や治具を使う工程で納期遅れと段取りを最少化したい

全5回の2回目です。前回は、工場の設備と工程と、ボトルネックであるダイカストを説明しました。今回は、現場で実際に起きている課題を4つに整理します。この4つについては、次の第3回で、最適化の4要素のどれが主に解決するかを示します。

金属部品・アルミダイカストのAI生産スケジューリング 第2回 課題 インフォグラフィック

想定する工場

第1回と同じ、2,000t級のダイカストマシン6台と、マシニングセンタ12台を持つケース類の工場です。約65品番のうち、量産車種向けの見込生産品が50品番、補修用・少量車種・試作の受注生産品が約15品番あり、この2種類を同じ設備で併産しています。生産計画は計画担当者2人が表計算ソフトで毎日作り直し、管理担当者2人が在庫と進み具合を管理しています。

課題1. 欠品と受注生産品の納期による特急対応

見込生産品では在庫が安全在庫を下回りそうな品番が見つかったとき、受注生産品では納期が近いのに着手していないオーダが見つかったとき、管理担当者はその品番を予定より早くつくるよう現場に求めます。これを督促と呼び、督促を受けて、決めてあった生産順序を組み替えて急ぎの品番を先につくることを特急対応と呼びます。

特急対応で急ぎの品番を先につくると、前後に流す品番の組み合わせが変わり、金型と合金の切替が増えます。同じ形状で続けて流すはずだった2つの仕様の間に形状の違う品番が入れば、部分交換1回と一式交換1回で190分だった段取りが一式交換2回の300分になり、暖機の間に捨てるショットも5個から10個に増えます。ADC12の間に熱を伝えやすい合金が入れば、90分と30分の溶湯の入れ替えが加わります。段取り時間が増加した分だけ後ろの品番の着手が遅れ、遅れた品番が次の特急対応の候補になります。

管理担当者2人は、在庫の確認と督促に月100時間を使っています。この作業は製品を直接つくらないため、かかる人件費は間接人件費になります。督促によって生産順序が入れ替わっても、工場がつくれる量は増えません。

課題2. 金型交換と暖機による段取り時間とコストの増加

第1回の表のとおり、5工程の月間段取り時間は430時間で、うち240時間がダイカストです。1台あたりでは月40時間となり、月の稼働時間320時間の1割強にあたります。

段取りのコストは、作業者の人件費、資材と電力、止まっている設備のコストの3つに分かれます。人件費は、段取りが予定より長引くと、その分の生産を残業で補うため、残業相当の単価がかかります。資材と電力には、暖機の間に捨てるショットを溶かし直すコストと、金型に吹き付ける離型剤のほか、次の課題3で扱う保持炉の電力とガスが含まれます。設備のコストは、購入代金を使用年数に割り振った償却費と保守のコストで、設備が止まっていても発生し、止まっている時間の分は製品で回収できません。

段取り時間が増加すると、動ける時間のうち実際に製品をつくった時間の割合、つまり設備稼働率が下がります。第1回で説明したとおり、ダイカストの段取り時間は前後の品番の組み合わせで変わります。したがって月240時間のうち一部は、生産順序の組み方によって生じている時間です。

捨てるショットは溶かし直してもう一度使えるため、損はないと考えがちです。実際には、溶かし直す電力とガスがかかり、溶かすたびにアルミの一部が酸化して目減りします。そのショットをつくったダイカストマシンの時間も戻りません。

課題3. 止めても冷やせない保持炉のエネルギー

ダイカストマシンの横の保持炉は、溶湯を固まらない温度に保ち続けています。溶湯が冷えて固まると、炉から取り出して溶かし直さなければならないため、段取りでダイカストマシンが止まっている間も、保持炉の加熱は止められません。金型交換と暖機に150分かかれば、その150分の間、製品をつくらないまま溶湯を保つ電力とガスを使います。

溶解と保持は、ダイカストで使うエネルギーの大部分を占めます。英国の鋳造の業界誌(Foundry Trade Journal)に炉メーカーが寄せた記事では、ダイカストのエネルギーのコストの最大77%が溶解の工程だという見方が示されています。段取り時間が長いほど、ケースをつくらずに溶湯を保つだけの電力とガスが増え、ケース1個あたりのコストが上がります。

課題4. ロットサイズが定まらず、鋳造と機械加工の間に鋳物がたまる

1回の生産でまとめてつくる個数をロットサイズと呼びます。現場は、金型交換と暖機の回数を減らそうとして、同じ品番を2日分まとめて鋳造します。ロットサイズを大きくすると段取り時間は短縮しますが、1つの品番がダイカストマシンを長い時間使うため、待っている別の見込生産品の補充と受注生産品の着手が遅れます。

遅れた品番の在庫が安全在庫を下回ると、今度はロットサイズを小さくし、切替が増えて段取り時間が増加します。現場は、大ロットと小ロットを交互に繰り返します。欠品を避けようとするほど、第1回で説明した安全在庫も多めに決めるようになり、出荷を待つ製品の在庫も増えます。

まとめて鋳造したケースは、機械加工が出荷の順に1日分ずつ加工するため、2つの工程の間で待ちます。例えば、あるトランスミッションケースの鋳造が火曜の16時に終わっても、そのうち後の1日分の機械加工の着手が木曜の8時になれば、ケースは加工の途中のまま40時間置き場で待ちます。この加工の途中の品物を仕掛品と呼びます。

材料が工場に入ってから製品として出ていくまでの時間を製造リードタイムと呼び、この40時間も製造リードタイムに含まれます。鋳造はまとめてつくりたい、機械加工は出荷の順に分けてつくりたい、という違いがあるため、工程ごとに別々に順序を決めると、2つの工程の間に鋳物がたまります。前の工程が終わった時刻に後の工程が着手できるよう、工程どうしの時刻をそろえることを同期化と呼びます。

地金、仕掛品、製品は、会計上棚卸資産として扱われ、この工場では2億8,000万円あります。在庫を持つと、置き場の保管コストと、在庫に使った資金をほかに使えないことによる負担がかかり、これを在庫保有コストと呼びます。在庫額に対するこの負担の割合を保管コスト率と呼び、この工場では年12%としています。2億8,000万円に掛けると、年3,360万円になります。

まとめ

4つの課題は、それぞれ別に起きているのではなく、原因と結果の関係でつながっています。特急対応で前後に流す品番の組み合わせが変わると、金型と合金の切替が増えて段取り時間が増加し、捨てるショットも増えます。段取りで止まっている間も保持炉は溶湯を保ち続けるため、ケースをつくらずに使う電力とガスが増えます。その段取り時間を減らそうとロットサイズを大きくすると、補充が遅れて特急対応がまた増え、鋳造と機械加工の間に鋳物がたまります。

4つの課題の原因は1つです。金型、合金、予熱炉、ロットサイズ、機械加工の着手を同時に見て生産順序を決めていないため、安全在庫を下回りそうな品番や納期の接近が見つかるたびに、特急対応で生産順序を組み直していることです。次回は、この4つの課題を1回の計算でまとめて解決する方法を説明します。あなたの工場では、明日ダイカストで流す品番の生産順序は、何を基準に決まっているでしょうか?

解説動画

この回の内容を、動画でも説明しています。

次のコラム

27ロットの並べ方は約10の28乗通り。人が経験から選べるのは数通りだけです。金型交換と合金の切替を減らす順序に組み替えるだけで段取りが110分短くなる例を使い、最適化AIが4つの課題を同時に解く考え方を説明します。

タグ : エネルギーコスト ロットサイズ 保持炉 在庫保有コスト 安全在庫違反 特急対応 生産スケジューラ 生産スケジューリング 生産管理 督促