【金属部品・アルミダイカストのAI生産スケジューリング 1】基礎知識 ~ 金型を替えるたびに最初の数個を捨てるダイカスト工場の全体像

2026.10.08A1:生産計画・スケジューリング , S08:金型や治具を使う工程で納期遅れと段取りを最少化したい

この連載では、アルミダイカストでケース類をつくる工場を例に、基礎知識、課題、解決策、ROI試算、導入の進め方の順に5回で説明します。1回目の今回は、工場の設備と工程を説明します。

金属部品・アルミダイカストのAI生産スケジューリング 第1回 基礎知識 インフォグラフィック

1. 金属部品とは

自動車には、鋼板やアルミ、鋼の棒材を加工した部品が数多く使われています。樹脂より強く、熱にも耐えるため、力と熱を受ける箇所や、油や冷却水を閉じ込める箇所に向いています。これらの部品をまとめて金属部品と呼びます。溶かした金属を型に流して固める鋳造は、プレス加工や切削と並ぶ、金属部品の代表的な加工法の1つです。

2. アルミダイカストのケース類とは ― 用途と構成部品

溶かしたアルミを金型に高い圧力で流し込み、短い時間で固める鋳造の方法をダイカストと呼びます。日本ダイカスト協会の統計では、2025年に国内でつくられたダイカストの約9割が自動車用です。薄い壁と複雑な形を一度につくれるため、変速機の歯車を収めるトランスミッションケース、EVのモーターを収めるモーターハウジング、モーターを動かす電子部品を収めるインバーターケース、エンジンの下で油をためるオイルパンなどの箱形の部品に使われます。

ケース類は、中に歯車やモーターを組み込み、ふたを付けた組立品として車に載ります。このように、より大きな製品に組み込まれる部品を構成部品と呼びます。ケースは油や冷却水を閉じ込めるため、ほかの部品と合わせる面を平らに削り、ボルトの穴をあけ、漏れがないかを調べてから納めます。

品番は、ケースの形状、取付座の仕様、合金の組み合わせで決まります。量産車種向けの形状は30種類あり、そのうち20種類には、車種によってボルトで留める取付座(ボス)の有無だけが違う仕様がもう1つあるため、50品番になります。この50品番のうち、EVのモーターハウジングの10品番は、熱を伝えやすい合金でつくります。残りの40品番は、ダイカストで広く使われるアルミ合金(ADC12)でつくります。

50品番は、完成車メーカーの量産車種向けで、先々の生産予定として知らされる数量、つまり内示数量に合わせて先につくり、在庫として持っておきます。この50品番を見込生産品と呼びます。見込生産品では、出荷のばらつきがあっても欠品しないように最低限持っておく在庫の量を決めておき、この量を安全在庫と呼びます。在庫が安全在庫を下回る前につくって補充する進め方を在庫補充生産と呼びます。

量産が終わった車種の補修用や、少量の車種、試作のケースは約15品番あり、オーダを受けてから、その納期に間に合うようにつくります。この進め方を受注生産と呼び、この約15品番を受注生産品と呼びます。品番数では、見込生産品が約8割、受注生産品が約2割です。急ぎの生産が必要になるのは、見込生産品では在庫が安全在庫を下回りそうなとき、受注生産品では納期が近づいたときです。

3. 典型的な工場と、スケジュールの対象となる工程

想定するのは、型締力2,000t級のダイカストマシンを6台持ち、鋳造から機械加工までを1か所で行う中規模の工場です。型締力は金型を閉じておく力で、ダイカストマシンの大きさを表します。工場は2交替で1日16時間、月20日動いており、1台の月の稼働時間は320時間です。

ある品番から次の品番に移るときは、金型を替え、金型を温め、温まるまでに流した製品を捨ててから、生産を始めます。この切替にかかる時間を段取り時間と呼びます。どの工程でも、段取りはその工程の作業者に応援の作業者が加わり、2人で行います。下の表は、ダイカストから洗浄・リークテストまでの5工程を、生産計画の対象としてまとめたものです。

工程設備台数設備単価作業者段取り条件段取り時間(1回)月間段取り時間
ダイカストダイカストマシン(2,000t級)6台12,000円/時6人金型の交換と暖機、合金の切替40〜240分240時間
トリミングトリミングプレス6台1,000円/時3人トリミング型の交換25分30時間
X線検査X線検査装置1台2,000円/時1人検査治具とプログラムの交換25分30時間
機械加工マシニングセンタ12台2,000円/時4人加工治具とプログラムの交換60分120時間
洗浄・リークテスト洗浄・リークテストライン1ライン3,000円/時2人検査治具の交換15分10時間
合計———16人——430時間

工程は表の順に進み、ダイカストでケースの形に固め、トリミングで余分な部分を切り落とし、X線検査で中にできた空洞を調べます。空洞を鋳巣(いす)と呼び、油や冷却水の漏れの原因になります。機械加工で面を削って穴をあけ、洗浄で切りくずを落とし、リークテストで漏れがないことを確かめてから出荷します。ダイカストの前には、合金ごとに1基ずつ、計2基の溶解炉があり、地金と、トリミングで切り落とした部分を溶かしています。

表の設備単価は、購入代金を使用年数に割り振った額と保守のコストを、1台(洗浄・リークテストは1ライン)の稼働時間で割った、1時間あたりの金額です。溶けたアルミを保つ電力とガスは使った分だけかかるため、設備単価には含めていません。作業者の時間単価は1人3,000円です。設備と作業者のほかに、計画を立てる計画担当者が2人、在庫と進み具合を管理する管理担当者が2人います。

ダイカストの段取りは、金型交換と暖機と捨てるショットでできています

溶かした金属を溶湯(ようとう)と呼び、金型に溶湯を1回流し込むことをショットと呼びます。冷えた金型に溶湯を流すと、すぐに固まって形が欠けるため、ダイカストでは金型を作業に適した温度まで温めてから生産します。これを暖機と呼びます。

暖機の間に流した数ショット分のケースは、寸法も内部の品質も安定しないため捨てます。この工場では、金型をすべて替えた後の暖機で5ショットを捨てています。段取りは金型を替える作業の時間だけだと考えがちですが、ダイカストでは、暖機を終えて良品が出始めるまでが段取りです。

表のとおり、ダイカストの段取り時間は1回40分から240分まで幅があります。幅ができる理由は金型と合金の2つで、どちらも前後に流す品番の組み合わせで時間が変わります。

同じ形状で取付座の有無だけが違う品番に移るときは、金型の一部分である入れ子を替える部分交換だけなので、段取りは40分で終わります。金型の本体は温まったままなので、暖機も短く、捨てるショットもありません。形状の違う品番に移るときは金型をすべて替える一式交換になり、交換に120分、暖機に30分、合わせて150分かかります。

熱を伝えやすい合金は、ADC12に含まれる銅が混ざると熱の伝わりやすさが下がります。そのため、ADC12から熱を伝えやすい合金に替えるときは、ダイカストマシンの横で溶湯を保つ保持炉の中身を入れ替え、混ざった分を流して捨てるのに90分をかけます。熱を伝えやすい合金からADC12に戻すときも、保持炉に残った溶湯を入れ替えますが、ADC12に少し混ざっても性質は大きく変わらないため、この工場では30分としています。一式交換と、ADC12から熱を伝えやすい合金への切替が重なると、150分と90分を足した240分が最長になります。

1台では、月に部分交換が6回、一式交換が12回あります。このうち合金の切替を伴うものが、ADC12から熱を伝えやすい合金へ3回、熱を伝えやすい合金からADC12へ3回あり、そのたびに溶湯の入れ替えの時間が加わります。足し合わせると月2,400分、つまり40時間で、6台分が表の240時間になります。

金型を外で温めておく予熱炉は、工場に1基です。1型を温めるのに60分かかるため、2台が同じ時刻に一式交換に入ると、後のダイカストマシンは予熱炉が空くまで最大60分待ちます。

4. 生産管理で目指すことと、ボトルネック

この工場の生産管理は、欠品と納期遅れを防ぎながら、段取り時間と在庫を減らすことを目指しています。見込生産品では、在庫が安全在庫を下回った回数を安全在庫違反回数として数え、主な指標にしています。ケースが欠品すると、納入先の変速機やモーターの組立ラインが止まるためです。

工場が1か月に出荷できる量は、最も能力に余裕のない工程で決まります。この工程をボトルネックと呼び、単位時間あたりに工場から出ていく製品の量をスループットと呼びます。この工場のボトルネックはダイカストで、根拠は2つあります。月間段取り時間が240時間と5工程で最も長く、合計430時間の半分を超えていることと、予熱炉が1基しかないため6台が同時に一式交換に入れず、6台あっても6台分の生産量にはならないことです。

5. まとめ

アルミダイカストのケース類の工場では、約65品番が5つの工程を流れ、見込生産品の補充と受注生産品の納期対応が同じ設備を使うため、どちらを先に流すかを毎日決めなければなりません。ダイカストの段取りは、金型交換、暖機、暖機の間に捨てるショットの3つでできており、前後の品番の組み合わせによって40分から240分まで変わります。これに、予熱炉が1基しかないという制約も加わります。

次回は、欠品と納期遅れを防ぐことと、段取り時間と在庫を減らすことがなぜ両立しにくいのかを、現場で起きている4つの課題として整理します。あなたの工場では、先月ダイカストの段取りで捨てたショットが何個あったか、すぐに答えられますか?

解説動画

この回の内容を、動画でも説明しています。

次のコラム

特急対応を1件受けるたびに、なぜ段取り時間と在庫が増えていくのか。止めても冷やせない保持炉のエネルギーまで含めて、ダイカスト工場の4つの課題が1つの原因でつながっている仕組みを解き明かします。

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