鍛造工場の4つの課題 金型交換と特急対応|鍛造のシャフト・ハブのAI生産スケジューリング 2
2026.11.03A1:生産計画・スケジューリング , S08:金型や治具を使う工程で納期遅れと段取りを最少化したい全5回の2回目です。前回は、工場の設備と工程、ボトルネックである熱間鍛造ラインを説明しました。今回は、現場で実際に起きている課題を、金型の交換と鋼種の切替による段取り時間とコストの増加、欠品と受注生産品の納期による特急対応、ロットサイズが最適化できず在庫が増えること、熱間鍛造ラインと旋削の同期がとれないこと、の4つに整理して説明します。

想定する工場
第1回と同じ鍛造の工場で、見込生産品と受注生産品を同じ設備で併産しています。生産計画は計画担当者2人が表計算ソフトで毎日作り直し、進捗管理担当者2人が在庫と生産の進み具合を管理しています。
課題1. 金型の交換と鋼種の切替による段取り時間とコストの増加
課題1は、熱間鍛造ラインの段取りに時間がかかり、その分のコストがかさむことです。熱間鍛造ラインはこの工場のボトルネックで、段取りの間は製品を打てません。品番が替わるたびに金型の交換か鋼種の切替が要るため、段取り時間は積み重なり、その間もコストがかかります。ここでは、段取り時間を切替の種類ごとに計算し、そのあと段取りのコストを、①作業者の人件費、②資材と電力、③止まっている設備のコストの3つに分けて説明します。
鋼種の切替は、向きによって時間が違います。S53Cから非調質鋼へ移るときは、制御冷却の風の強さとコンベアの速さを替え、初めに打った2個を冷ましてから硬さを測るので、この工場では40分かかります。非調質鋼からS53Cへ戻るときは、冷却の条件を戻して寸法だけを確かめるので、20分です。
熱間鍛造ライン1本の段取りは、1か月に金型の交換が24回、鋼種の切替が向きごとに3回、両方が重なるものが6回です。重なる6回は、非調質鋼へ移る3回が110分、S53Cへ戻る3回は冷却を戻す作業が金型の交換の間に終わるので90分です。1本あたりでは、90分×24回+40分×3回+20分×3回+110分×3回+90分×3回で月49時間、3本では147時間です。
①作業者の人件費は、段取りをする作業者にかかるコストです。長引いた分の生産は残業で補うので、残業相当の単価がかかります。
②資材と電力のコストは、捨てる部品の材料とそれを熱した電力、それに次の金型を予熱台で温める電力です。捨てる部品は、金型の交換のたびの初品と、非調質鋼へ移る切替のたびに硬さを測る部品で、1回は2個から5個でも、3本で月306個になります。
③止まっている設備のコストは、購入代金を使用年数に割り振った償却費と保守のコストです。どちらも止まっている間もかかり、その間は売上げを生みません。
課題2. 欠品と受注生産品の納期による特急対応
課題2は、急ぎの品番を割り込ませると後ろの品番が遅れ、管理の手間も増えることです。遅れた品番がまた急ぎになるため、割り込みは繰り返されます。ここでは、割り込みが起きる仕組み、後ろの品番の遅れ、管理にかかる時間の順に説明します。
見込生産品で在庫が安全在庫を下回りそうな品番や、受注生産品で納期が近いのに着手していないオーダが見つかると、進捗管理担当者はその品番をより早くつくるよう現場に求めます。これを督促と呼びます。督促を受けて、決めてあった生産順序を組み替えて急ぎの品番を先につくることを特急対応と呼びます。
特急対応で後ろの品番の着手がどれだけ遅れるかを、熱間鍛造ライン1本の例で示します。ハブ輪Aを8時から12時まで打ち、90分の金型の交換のあと13時30分からハブ輪Bを打つ予定のところに、督促を受けて外輪Cを先に割り込ませたとします。もう1本のラインが金型の交換で予熱台を使っていたため、外輪Cの金型の予熱を1時間待ち、金型の交換90分、外輪Cの2時間、ハブ輪Bに戻す金型の交換90分が続きます。ハブ輪Bを打ち始めるのは18時になり、予定より4時間30分遅れます。

この遅れは、予熱台を待った1時間、増えた金型の交換の90分、外輪Cを打った2時間を足したものです。遅れたハブ輪Bのような品番が、次の特急対応の候補になります。
この工場では、進捗管理担当者2人が、在庫の確認と督促に月110時間を費やしています。この作業は製品を直接つくらないため、かかる人件費は間接人件費になります。
課題3. ロットサイズが最適化できず、在庫が増える
課題3は、品番ごとに1回でつくる量を適切に決められず、在庫が増えることです。まとめてつくると段取りは減りますがほかの品番が遅れ、少しずつつくると段取りが増えます。ここでは、つくる量が大小に揺れる仕組みと、在庫にかかるコストを説明します。
現場は、金型の交換を減らそうとして、同じ品番を2週間分まとめて流します。1回の生産でまとめてつくるひとまとまりをロットと呼び、ロットの量をロットサイズと呼びます。ロットサイズを大きくすると段取り時間を短縮できます。ただし、その品番が熱間鍛造ラインを長い時間占有し、ほかの見込生産品の補充と受注生産品の着手が遅れます。
遅れた見込生産品の在庫が安全在庫を下回ると、今度はロットサイズを小さくし、金型の交換が増えて段取り時間が増加します。現場は、大ロットと小ロットを交互に繰り返します。
大ロットで2週間分まとめて鍛造したハブ輪は、出荷までの間、製品の在庫になります。欠品を避けようとするほど、安全在庫も多めに設定するようになり、在庫はさらに増えます。
棒鋼と切ったビレット、加工の途中の品物、製品は、会計上棚卸資産として計上され、この工場では1億8,000万円あります。在庫を持つと、置き場の保管コストと、在庫に使った資金をほかに使えないことによる負担がかかります。これを在庫保有コストと呼びます。
この工場の在庫保有コストは、年1,800万円です。在庫額に対する在庫保有コストの割合を保管コスト率と呼び、この工場では年10%として棚卸資産の額に掛けて求めています。
課題4. 熱間鍛造ラインと旋削の同期がとれず、鍛造した部品が置き場で待つ
課題4は、熱間鍛造ラインと旋削で生産順序を別々に決めるため、鍛造した部品が旋盤の前で待つことです。2つの工程では、段取り時間が短くなる生産順序が異なります。ここでは、順序が異なる理由と、部品が待つ例を説明します。
熱間鍛造ラインでは、金型の交換に時間がかかるので、同じ金型を続けて使える順に流すほうが有利です。この工場の旋盤では、部品の大きさが同じなら、プログラムと工具の補正だけなので、段取りは15分です。大きさが変わると、チャックのつめと治具を替えるので、50分かかります。そのため旋削では、同じ大きさの部品をまとめて削るほうが、段取り時間が短くなります。
2つの工程で別々に生産順序を決めると、鍛造した部品は、旋盤がその大きさのつめに替わるまで待つことになります。例えば、小径のハブ輪を、熱間鍛造ラインが火曜の10時に打ち終えたとします。旋盤が大径の部品を削り続け、小径のつめに替えて削り始めるのが水曜の8時なら、ハブ輪は加工の途中のまま22時間、旋盤の前の置き場で待ちます。

置き場で待つハブ輪のような、加工の途中の品物を仕掛品と呼びます。材料が工場に入ってから製品として出ていくまでの時間を製造リードタイムと呼び、置き場で待つ時間もその一部です。
反対に、旋削に合わせて熱間鍛造ラインの生産順序を決めると、金型の交換が増え、予熱台と段取り工の手が空くのを待つラインが出てきます。どちらの工程に合わせても、もう一方の工程で待ちか段取りが増えます。
まとめ
4つの課題は、原因と結果の関係でつながっています。特急対応で組み替えると金型の交換が増え、ロットサイズを大きくすると在庫が増えて特急対応がまた起き、金型の交換が少ない順に鍛造すると部品は旋盤の前で待ちます。原因は1つで、金型、鋼の種類、予熱台の台数と段取り工の人数、ロットサイズ、旋盤のつめを替える時刻を同時に見ないまま生産順序を決め、安全在庫を下回りそうな品番や納期の接近が見つかるたびに、特急対応で組み替えていることです。
次回は、この4つをまとめて解決する方法を説明します。あなたの工場では、明日熱間鍛造ラインで流す品番の生産順序は、何を基準に決まっているでしょうか?
解説動画
この回の内容を、動画でも説明しています。
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