熱間鍛造工場の工程と設備 段取りが長くなる理由|鍛造のシャフト・ハブのAI生産スケジューリング 1
2026.11.03A1:生産計画・スケジューリング , S08:金型や治具を使う工程で納期遅れと段取りを最少化したいこの連載では、車輪を取り付けるハブ輪と、ドライブシャフトの端にある等速ジョイントの外輪を熱間鍛造でつくる工場を例にします。基礎知識、課題、解決策、ROI試算、導入の進め方の順に、5回で説明します。今回は、部品の役割と工場の全体像を取り上げ、熱間鍛造ラインの段取りがいちばん長くなる理由と、このラインがボトルネックになることを説明します。

1. 金属部品とは
自動車には、鋼やアルミ、銅を加工した部品が数多く使われています。金属は樹脂より強く熱にも耐えるため、力や熱を受ける箇所に向いています。これらの部品をまとめて金属部品と呼びます。この連載で扱う軸と輪の部品も、鋼を加工した金属部品です。
2. 鍛造のシャフト・ハブとは ― 用途、つくり方、品番
車の中には、エンジンの回転を車輪へ伝える軸や、車の重さを支えながら回る輪があります。これらは強い力と回転を受け続けるため、鋼の棒を熱して型で押しつぶしてつくります。金属を叩いたり押したりして形をつくる加工を鍛造と呼び、鍛造でつくる軸と輪の部品を、この連載では鍛造のシャフト・ハブと呼びます。2012年の統計では、日本の鍛造品の約7割が自動車用でした。
鍛造のシャフト・ハブには、変速機の中の軸、後輪の車軸、ドライブシャフト、車輪を取り付ける輪などがあります。この連載では、このうち車輪のそばで組になって働き、同じ工程でつくれる2つの部品を取り上げます。
1つは、ドライブシャフトの車輪側の端にある部品です。軸の付いたカップ形で、ハンドルを切って角度が付いても、回転を同じ速さで車輪に伝えます。この部品を等速ジョイントの外輪と呼びます。
もう1つは、軸受の中で回り、車輪をボルトで取り付ける部品です。この部品をハブ輪と呼び、車の重さを支えます。

ここで取り上げる外輪もハブ輪も、1,100℃以上に熱した鋼で鍛造します。この鍛造を熱間鍛造と呼びます。鍛造すると、削り出すよりも金属の中の筋が部品の形に沿って続くため、強い部品になります。
軸受の玉が転がる面のように、強い力を繰り返し受けて傷みやすい部分は、あとで硬くします。コイルで部品の必要な部分だけを熱し、すぐに冷やして硬くする方法を高周波焼入れと呼び、部品を1個ずつ処理します。
品番は、部品の形、鋼の種類、軸の長さ、ボルト穴の数のうち、どれか1つでも違えば別になります。このうち鋼の種類は、この連載では2種類です。1つはハブ輪に多い炭素0.53%ほどの炭素鋼で、S53Cと呼びます。もう1つは、鍛造したあとの冷やし方を管理することで、焼入れと焼戻しをしなくても強さが得られる鋼で、非調質鋼と呼びます。
3. 典型的な工場と、スケジュールの対象となる工程
想定するのは、棒鋼を切る帯鋸(おびのこ)を2台、熱間鍛造ラインを3本備え、旋削から高周波焼入れ、研削までを1か所で行う中規模の工場です。工場は2交替で1日16時間、年250日動いており、1台・1ラインの年間の稼働時間は4,000時間です。約150品番のハブ輪と外輪をつくり、軸受メーカーとドライブシャフトのメーカーへ納めます。
量産車種向けの約120品番は、オーダを受ける前につくり、在庫として持っておきます。これらの品番を見込生産品と呼びます。つくる量は、納入先から先々の生産予定として知らされる数量に合わせて決めます。この数量を内示数量と呼びます。
見込生産品の在庫には、欠品しないように最低限確保しておく量を、品番ごとに決めておきます。この量を安全在庫と呼びます。在庫が安全在庫を下回る前につくって補充する進め方が、在庫補充生産です。
補修用や生産台数の少ない車種、試作の約30品番は、オーダを受けてから納期に間に合うようにつくります。これらの品番を受注生産品と呼びます。
生産工程は、切断から研削・検査までの6工程です。次の品番に移るときは、設備の設定を替えてから生産を始め、この切替にかかる時間を段取り時間と呼びます。段取りは、どの工程でも2人で行います。
最初の工程では、帯鋸が棒鋼を部品1個分の長さに切ります。この1個分の材料をビレットと呼びます。
次の熱間鍛造ラインでは、誘導加熱装置のコイルの中にビレットを通し、電磁誘導で約1,200℃に熱して、鍛造プレスに送ります。鍛造プレスは、1台の中に並べた複数の金型で、ビレットを少しずつ押しつぶして形をつくり、最後に外周にはみ出した余分な肉を打ち抜きます。打ち終えた部品はコンベアの上で、風を当てながら決めた速さで冷やします。この冷やし方を制御冷却と呼び、非調質鋼の強さはここで決まります。
そのあと、CNC旋盤で外径や内径を削り、高周波焼入れで転がる面を硬くし、研削盤で仕上げて寸法を確かめます。旋削では、部品をつかむチャックのつめを、大きさに合わせて替えます。
一部の外輪は、鍛造と旋削の間に熱処理炉に入れ、焼入れと焼戻しで強さと粘りを整えます。炉に何をまとめて入れるかは品質に直結するため熟練者が決めており、この連載では炉の予定を決まったものとして扱います。熱処理炉は、鍛造の前にビレットを熱する誘導加熱装置とは別の設備です。
下の表は、6工程の設備と段取り時間を進む順にまとめたものです。設備単価は、設備1台(熱間鍛造は1ライン)の1時間あたりのコストです。熱処理は熟練者が計画するので、段取り時間は残りの5工程で数えます。
| 工程 | 設備 | 台数 | 設備単価 | 作業者 | 段取り条件 | 段取り時間(1回) | 月間段取り時間 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 切断 | 帯鋸 | 2台 | 750円/時 | 1人 | 棒鋼の種類と太さ、切る長さの切替 | 15分 | 20時間 |
| 熱間鍛造 | 誘導加熱装置と鍛造プレスのライン | 3ライン | 18,750円/時 | 6人 | 金型の交換、鋼種の切替 | 20〜110分 | 147時間 |
| 熱処理(一部の外輪) | 熱処理炉 | 1基 | — | — | 熟練者が計画 | — | — |
| 旋削 | CNC旋盤 | 10台 | 2,250円/時 | 5人 | プログラムと工具の補正、チャックのつめと治具の交換 | 15〜50分 | 80時間 |
| 高周波焼入れ | 高周波焼入れ装置 | 3台 | 3,750円/時 | 1人 | 加熱コイルと治具の交換、最初の部品の硬さの確認 | 40分 | 36時間 |
| 研削・検査 | 研削盤と測定機 | 4台 | 3,000円/時 | 2人 | 砥石の形直し、治具の交換 | 30分 | 32時間 |
| 合計 | — | — | — | 15人 | — | — | 315時間 |
熱間鍛造ラインの段取り時間は、前後の品番で変わります
熱間鍛造ラインの切替には、鋼の種類だけを替える切替と、金型を替える切替があり、2つが重なると最も長い場合で110分になります。どちらの切替になるかは、前の品番と次の品番で、金型と鋼の種類が同じかどうかで決まります。
鋼の種類だけを替えるのは、同じ金型を使う品番どうしで、鋼の種類が違うときです。制御冷却の条件を替え、初めに打った部品で寸法や硬さを確かめるので、この工場では20分から40分をかけています。この切替を鋼種の切替と呼びます。
金型を替えるのは、部品の形が替わるときです。金型は、冷たいまま熱したビレットを打つと割れやすいため、取り付ける前に予熱台で約250℃まで温めておきます。温めた金型を付け替え、送りと高さを調整し、初めに打った部品で寸法を確かめるので、この工場では90分かかります。この切替を金型の交換と呼びます。
段取りは金型を付け替える時間だけだと考えがちですが、寸法の合う部品が出始めるまでが段取りです。金型を替えたあと、寸法を確かめるために初めに打つ3個は、製品にせず捨てます。この部品を初品と呼びます。
金型の予熱台は1台、段取り工は2人です
予熱台は1台で、一度に1組しか温められず、温めるのに2時間かかります。金型の交換は、専門の段取り工2人が組になって、3本のラインの分をすべて受け持ちます。
熱間鍛造ラインが3本あっても、金型を替える時刻が近いと、生産量は3本分より少なくなります。2本のラインが続けて金型の交換を始めると、後のラインは、次の金型の予熱が間に合わず、温まるまで待つためです。
4. 生産管理で目指すことと、ボトルネック
この工場の生産管理は、欠品と納期遅れを防ぎながら、段取り時間と在庫を減らすことを目指しています。ハブ輪や外輪が欠品すると、納入先の組立が止まります。そのため見込生産品では、在庫が安全在庫を下回った回数を安全在庫違反回数として数え、主な指標にしています。
工場が1か月に出荷できる量は、最も能力に余裕のない工程で決まります。この工程をボトルネックと呼びます。単位時間あたりに工場から出ていく製品の量を、スループットと呼びます。
この工場のボトルネックは熱間鍛造ラインで、根拠は2つあります。1つは、表のとおり、月間段取り時間が5工程で最も長く、合計の約47%を占めることです。もう1つは、前の小見出しのとおり、金型の交換が続くとラインが予熱を待ち、生産量が3本分より少なくなることです。
5. まとめ
ハブ輪と外輪の品番が切断から研削・検査までの工程を流れ、見込生産品の補充と受注生産品の納期対応が同じ設備を使います。熱間鍛造ラインの段取り時間は、前後の品番で変わります。金型の交換には、1台の予熱台と2人の段取り工が要ります。段取り時間が最も長く、金型の交換が続くと予熱を待つ熱間鍛造ラインが、この工場のボトルネックです。
次回は、欠品と納期遅れを防ぐことと、段取り時間と在庫を減らすことがなぜ両立しにくいのかを、4つの課題に分けて説明します。あなたの工場では、先月熱間鍛造ラインの金型を何回替えたか、すぐに答えられますか?
解説動画
この回の内容を、動画でも説明しています。
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