【金属部品・ネジのAI生産スケジューリング 4】ROI試算~ 年間2,401万円の内訳を計算式で確かめ

2026.09.29A1:生産計画・スケジューリング , S08:金型や治具を使う工程で納期遅れと段取りを最少化したい

全5回の4回目です。第2回で挙げた4つの課題が、第3回の解決策でどれだけ減るのかを、ここで金額にします。

1. 試算の考え方

生産スケジューラを導入して1年間に得られる金額を、この連載では年間Return値と呼びます。計算するのは、この値だけです。ROIのInvestmentにあたる導入コストは会社ごとに大きく違うため、ここでは扱いません。

年間Return値は、①計画作成人件費、②間接人件費、③段取り作業費(残業相当)、④段取りコスト(資材・電力)、⑤在庫保有コスト、⑥設備費(機械の稼働回復)の6つを合計した金額です。

このうち⑤以外の5つは、同じ計算の型を使います。1か月に減る時間を求め、単価を掛け、12か月分にします。⑤だけは時間ではなく、棚卸資産の金額に率を掛けて計算します。いずれも掛け算だけの計算式なので、電卓で検算できます。

2. 前提値 – この値を元に年間Return値を計算します

区分項目値
段取り時間伸線 3台 / 1台あたり月間段取り時間24時間
段取り時間圧造 6台 / 1台あたり月間段取り時間36時間
段取り時間転造 8台 / 1台あたり月間段取り時間12時間
段取り時間表面処理 2ライン / 1ラインあたり月間段取り時間28時間
段取り時間検査・選別 6台 / 1台あたり月間段取り時間6時間
段取り時間段取り削減率25%
計画時間計画担当者 / 1人あたり計画作成時間2人 / 月50時間
計画時間計画削減率 / 計画人件費単価40% / 4,300円/時
間接コスト管理者 / 1人あたり欠品対応と調整の時間3人 / 月40時間
間接コスト管理時間削減率 / 管理人件費単価30% / 4,500円/時
段取りコスト段取り作業単価(残業相当)3,500円/時
段取りコスト資材・電力単価(溶剤、圧縮空気、めっき液)2,500円/時
在庫コスト棚卸資産 / 在庫圧縮率 / 保管コスト率1億8,000万円 / 15% / 10%
設備コスト機械単価 伸線 / 圧造 / 転造 / 表面処理 / 検査4,000 / 9,000 / 3,000 / 6,000 / 1,500円/時

段取り作業単価は、第1回の表にある作業者の時間単価に残業割増を乗せた値です。段取りが定時に収まらない分は残業として支払われるためです。在庫圧縮率は、棚卸資産を何%減らせるかを表す値です。保管コスト率は、その棚卸資産を1年間持ち続けるためにかかるコストの割合です。倉庫の費用と、資金が固定されることによる負担を含みます。

年間Return値を自社の数字で出すには、上の前提値を置き換えてください。以降の計算は、上記表の値を用います。

3. 削減時間の計算

段取り時間削減 = 工程ごとに(台数 × 1台あたり月間段取り時間 × 段取り削減率)を計算し、5工程分を合計する

工程台数月間段取り時間 (時間/台)工程合計 (時間/月)×25% 削減時間 (時間/月)
伸線3台247218
圧造6台3621654
転造8台129624
表面処理2ライン285614
検査・選別6台6369
合計——476119

5つの工程を合わせた段取り時間削減は月119時間です。この値を以下の③と④と⑥の計算に用います。

計画時間削減 = 計画担当者数 × 計画作成時間 × 計画削減率 = 2人 × 50時間 × 40% = 月40時間

管理時間削減 = 管理者数 × 欠品対応と調整の時間 × 管理時間削減率 = 3人 × 40時間 × 30% = 月36時間

4. 6つの年間Return値の計算

6つの年間Return値を、項目ごとの計算式とあわせて示します。

項目計算式年間金額(円)
① 計画作成人件費40時間 × 4,300円 × 12か月2,064,000
② 間接人件費36時間 × 4,500円 × 12か月1,944,000
③ 段取り作業費(残業相当)119時間 × 3,500円 × 12か月4,998,000
④ 段取りコスト(資材・電力)119時間 × 2,500円 × 12か月3,570,000
⑤ 在庫保有コスト1億8,000万円 × 15% × 10%2,700,000
⑥ 設備費(機械の稼働回復)下の表のとおり8,730,000

⑥は工程ごとに機械単価が違うため、分けて計算します。

設備費 = 工程ごとに(削減時間 × 機械単価 × 12か月)を計算し、5工程分を合計する

工程削減時間 (時間/月)機械単価 (円/時)年間金額(円)
伸線184,000864,000
    
圧造549,0005,832,000
転造243,000864,000
表面処理146,0001,008,000
検査・選別91,500162,000
合計119—8,730,000

ボトルネックの圧造が5,832,000円で、⑥の中でいちばん大きくなります。削減時間が5工程で最も長く、機械単価も最も高いためです。第1回でボトルネックとして挙げた工程が、金額でも最大になります。

5. 合計の年間Return値

合計 = ① 2,064,000 + ② 1,944,000 + ③ 4,998,000 + ④ 3,570,000 + ⑤ 2,700,000 + ⑥ 8,730,000 = 年間 24,006,000 円

年間で約2,401万円です。月あたりに直すと約200万円になります。

この試算の使い方は2つあります。1つは検算です。①から⑥までの6つの金額を足し、記載した合計と一致するかを確かめます。

もう1つは感度の確認です。単価を1つだけ自社の値に変えて、合計がどれだけ動くかを見ます。合計が大きく動く項目から手を入れると、効果が出やすくなります。下の表は、6つの項目が合計に占める割合です。

項目年間金額(円)構成比
① 計画作成人件費2,064,0008.6%
② 間接人件費1,944,0008.1%
③ 段取り作業費(残業相当)4,998,00020.8%
④ 段取りコスト(資材・電力)3,570,00014.9%
⑤ 在庫保有コスト2,700,00011.2%
⑥ 設備費(機械の稼働回復)8,730,00036.4%
合計24,006,000100.0%

6. 変動費と固定費に分けて理解する

生産量や作業時間に応じて増減するコストを変動費と呼びます。残業代、溶剤、めっき液、圧縮空気をつくる電気代が変動費です。生産量が変わっても総額が変わらないコストを固定費と呼びます。機械の償却費、倉庫の賃借料、正社員の基本給が固定費です。

6つの年間Return値は、金額の性質で3つに分かれます。

区分項目金額の性質年間金額(円)
変動費①②③④時間が減れば、その分の残業代と資材のコストがそのまま減る12,576,000
在庫⑤棚卸資産が減れば、保管と資金のコストが減る2,700,000
固定費⑥償却費の総額は変わらないが、機械が動く時間が増えるため、同じ固定費でより多く作れる8,730,000

⑥の効果は、需要が増えたときに現れます。圧造が製品を作れる時間が、月54時間増えます。その分だけ生産量を増やせるため、受注が増えたときに増設せずに応えられます。売上と利益が増えるうえ、設備投資の時期も後ろに延ばせます。

7. まとめ

合計は年間24,006,000円です。このうち支出がそのまま減る分が15,276,000円、設備の稼働率が上がる分に相当する設備費が8,730,000円です。

6つのうち構成比がいちばん大きいのは⑥設備費の36.4%です。ボトルネックである圧造が止まっている時間をどれだけ減らせるかが、金額の4割を左右します。自社に当てはめるときは、機械単価がいちばん高い設備の段取り時間から確認してください。

次回は、この計算式に自社の数字を入れられるようにするための導入の進め方を扱います。

自社の台数と単価を入れたら、合計はいくらになりますか?

タグ : 圧造 設備稼働率 在庫圧縮 効果 段取り時間 削減 効果 生産スケジューラ ROI 生産管理