【ギアのAI生産スケジューリング 2】課題 ~ 納期を守るほど在庫が膨らむ歯車工場のジレンマ

2026.07.07A1:生産計画・スケジューリング , S08:金型や治具を使う工程で納期遅れと段取りを最少化したい

前回は歯車づくりの全体像、つまり基礎知識を見ました。全5回のうち第2回となる今回は、いよいよ現場の悩みを取り上げます。ここで挙げる悩みが、第4回で年間いくらの損失になるかを試算します。今回は金額には踏み込まず、課題と「こうなりたい」という願いだけを整理します。

想定する工場(第2回の前提)

項目
品番数280品番(多品種小ロット)
主な工程切断→旋削→歯切り→熱処理→研削→検査→出荷(スケジューリングの主役は旋削・歯切り・研削の3工程)
段取り影響の大きい主力設備旋削5台・歯切り7台・研削6台(計18台)
作業者20人
計画担当者2人

課題1 ― 納期厳守が当たり前、その裏で増える残業と督促

納期を守るのは当然の約束です。けれど守ろうとするほど残業が増え、遅れそうな注文への督促(催促)も増えます。やっかいなのは、督促はかけるほど現場の段取りを乱すことです。「あれを先に」と割り込みが入るたび、段取り替えが増え、かつ、ほかの注文が後ろにずれて遅れます。その遅れがまた新たな督促を呼び、かえって全体の効率が落ちていきます。

課題2 ― 納期を守るほど、在庫が膨らむという綱引き

遅れを避けようとすると、二つの余裕を大きく取りたくなります。ひとつは納期余裕時間(納期バッファ)で、余裕をもって早めに作るため、工程途中の仕掛品や完成した製品の在庫が増えます。もうひとつは安全在庫で、必要量より多めに作り置きするため、製品在庫が増えます。歯車は工程が直列で長く、途中の仕掛品も積み上がりやすいので、納期を守るほど在庫が膨らむ綱引きに陥りがちです。

課題3 ― 段取り替えのあいだ、高価な機械が価値を生まない

品番が替わるたびに、機械は段取り替えのため止まります。段取り替えのあいだは、試し削りや調整はしていても、出荷できる製品は生まれません。止まっている時間からは、リターンが生まれないのです。これは時間単価の分だけ損失になります。歯切り盤や研削盤のように単価の高い機械ほど、この損失は重くのしかかります。

課題4 ― 「まとめれば効率的」の落とし穴

段取りを減らすには、同じ品番をまとめて大ロットで作るのが近道に見えます。ところが大ロットにすると、後ろに並ぶ注文の納期遅れが増えます。逆に小ロットにすると納期は守りやすい代わりに段取り替えが増える。この大ロットと小ロットのジレンマが、計画担当者を毎日悩ませます。

効率化で減らしたいもの

減らしたいものいまの状態
段取り時間品番替えのたびに機械が止まる
残業納期に間に合わせるため恒常化
過剰な在庫作り置き・工程途中の仕掛品が膨らむ
督促業務遅れそうな注文を追いかけ続ける
計画作成残業組み替えのたびに計画を作り直す
設備停止段取り由来で主力機が止まる

まとめ ― 悩みは、つながっている

四つの悩みはバラバラではなく、ひとつの根からつながっています。納期を守るための余裕が在庫を膨らませ、督促が段取りを乱し、ロットの判断が遅れと段取りの板挟みを生む。とりわけ在庫は、見えにくい負担です。仕掛品や製品として積み上がったお金は、売れて現金になるまで使えないまま倉庫で眠り、その間ずっと保管費もかかり続けます。

もし、これらの悩みを同時に小さくできる並べ方があるとしたら。あなたの工場では、いま挙げた悩みのうち、どれがいちばん大きな重荷に感じられるでしょうか。

タグ : 在庫増加 多品種小ロット 歯車工場 段取り替え 生産管理 納期遅れ