【プレス加工工程のAI生産スケジューリング 2】課題 ~ 300品番・200金型、組めば組むほど苦しくなるスケジュール

2026.06.29A1:生産計画・スケジューリング , S08:金型や治具を使う工程で納期遅れと段取りを最少化したい

プレス工場の生産計画を任された担当者が、必ずと言ってよいほど直面する壁があります。それは「効率を上げようとすると納期が遅れ、納期を守ろうとすると効率が落ちる」という、出口の見えない板挟みです。今回は、ある工場の現場を例に、その課題の正体を見ていきましょう。

300品番、200金型という複雑さ

想定する工場には、プレス機が20台、作業者が20人います。扱う品番は300、金型は200個。プレス機と金型の組み合わせをどう割り当てるかというスケジューリング自体が複雑で、日々この計画を行うこと自体が、極めて難易度の高い作業になります。

項目条件
プレス機20台(使用時間単価 5,000円/時)
作業者数20人
品番数300
金型数200

止まるたびに生まれる損失

プレス機は1台あたり1時間5,000円という使用時間単価を持っています。段取り替え、つまり金型を載せ替えるたびに機械は停止し、その間は何も生み出しません。20台が同時に止まれば、停止時間に比例して損失が積み上がっていきます。だからこそ、段取り時間を減らすことが現場の悲願となるのです。

段取り替えの作業は、ひと口に言っても中身は多岐にわたります。前の金型を外し、次の金型を運び、機械に取り付けて位置を合わせ、試し打ちをして品質を確認し、ようやく本生産に入る。この一連の流れの間、プレス機は止まったままです。扱う品番が300もあれば、一日のうちに何度も段取り替えが発生し、その積み重ねが無視できない停止時間になります。多品種少量の生産現場ほど、この段取りの負担は重くのしかかります。

まとめれば遅れ、ばらせば増える

ところが、ここに大きなジレンマが潜んでいます。段取りを減らそうと同じ金型の品番をまとめて生産ロットを大きくすると、後回しになった品番の納期遅れが増えてしまいます。逆に納期を守ろうと小ロットで細かく作れば、段取り替えの回数が跳ね上がり、機械の停止時間が増える。効率と納期は、まさにシーソーの関係なのです。どちらか一方を立てれば、もう一方が崩れる。この綱引きの中で、計画担当者は毎日、最適な落としどころを探し続けています。

読めない金型トラブル

さらに現場を悩ませるのが金型トラブルです。200個もの金型を抱えていれば、どれがいつ不調になるかを事前に読み切ることはできません。トラブルが起きれば、その金型を使う予定だった計画は即座に組み替えが必要になりますが、複雑に絡み合ったスケジュールを手作業で急に変更するのは至難の業です。一つの金型が複数の品番に関わっていれば、その影響は連鎖し、玉突きのように後続の予定を狂わせます。結果として、しわ寄せは残業時間となって現場にのしかかります。

計画担当者にのしかかる毎日の重圧

こうした条件をすべて頭に入れながら、計画担当者は毎日、膨大な組み合わせの中から実行可能な計画を組み立てています。特急注文が一本入るだけで、組みかけの計画は大きく揺らぎます。経験と勘に頼った属人的な計画は、担当者が不在になれば回らなくなり、引き継ぎも容易ではありません。計画作成そのものに費やす時間も、見えにくいながら確実なコストとして積み上がっているのです。

加えて忘れてはならないのが、納期遅延が単なる時間の問題にとどまらない点です。約束した日に間に合わなければ、顧客の信頼は少しずつ削られ、次の受注にも影響します。逆に短納期にきちんと応えられる工場は、それだけで競争力を持ちます。つまり段取りや残業の問題は、現場の効率にとどまらず、工場全体の評価や受注の行方にまで静かにつながっているのです。だからこそ、目の前のKPIだけでなく、その先にある経営への影響まで見据える必要があります。

効率化がもたらすコストダウンの余地

裏を返せば、この板挟みを少しでも解きほぐせれば、いくつものコストダウンが見込めるということでもあります。第一に段取り時間の削減。段取り替えのたびに発生する作業費、資材費、電気代などが抑えられ、機械が止まる時間も減ります。第二に納期遅延件数の削減。遅れによる信頼の損失や、それを取り戻すための負担を防げます。第三に計画作成時間の削減。担当者が計画表とにらめっこする時間そのものが、付加価値を生まない隠れたコストです。そして第四に設備停止時間の削減。止まっていた設備が動けば、それだけ生み出せる価値が増えます。これらはいずれも、いま現場が「できれば手に入れたい」と願っている効果ばかりです。

コストダウンの種類現場で起きていること見るべきKPI
段取り時間の削減段取りで作業費・資材費・電気代がかかる段取り時間
納期遅延件数の削減遅延で信頼を損なう納期遅延件数
計画作成時間の削減計画づくりに時間を奪われる計画作成工数
設備停止時間の削減止まった設備が価値を生まない設備停止時間

段取り時間をはじめとするこれらのKPIが、なかなか下がらない。効率も納期も、すべてを同時に良くしたいのに、人の手で組む計画ではどこかが必ず犠牲になる。多くのプレス工場が抱えるこの構造的な悩みは、もはや個人の努力や経験だけで乗り越えられるものなのでしょうか。

タグ : 使用時間単価 小ロット 段取り時間 段取り替え 生産ロット 納期遅延件数 計画作成時間 設備停止時間 金型トラブル
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高橋邦芳 + Asprovaコンサルティングチーム + 生成AI