【金属部品・ネジのAI生産スケジューリング 2】課題~ 欠品対応の割り込みが段取り時間と在庫を押し上げる
2026.09.29A1:生産計画・スケジューリング , S08:金型や治具を使う工程で納期遅れと段取りを最少化したい全5回の2回目です。第1回では、工程と段取りのしくみを確認しました。今回はその中身を、4つの課題として順に見ていきます。
想定する工場
連続伸線機3台、パーツフォーマー6台、転造盤8台、バレル処理ライン2本、画像選別機6台。品番は約400で、8割が在庫を持って補充する規格品、2割が受注生産の図面品です。段取り工と計画担当者はそれぞれ2人。炭素鋼ネジとステンレスネジを、自動車部品メーカー、ネジ商社、産業機械メーカーに納めています。

課題1 欠品対応の督促と悪循環
在庫が減って欠品が近づくと、社内では督促が始まります。営業と在庫管理が品番ごとの残量を確認し、生産管理が補充の前倒しを現場に求めます。この工場では、管理者3人がそれぞれ月40時間ほどを欠品の監視と割り込みの調整に使い、合わせて月120時間になります。
この管理時間、120時間を使っても、工場全体のスループットは増えません。変わるのは品番の順番だけで、ボトルネックである圧造が通せる量は同じためです。さらに、督促が生むコストは管理者の時間だけではありません。次の3つのステップで悪循環が起きます。
① 欠品しそうな品番を見つける → ② その品番の補充を早めるよう督促する → ③ 割り込まれた分だけ他の品番の補充が遅れ、次の欠品予備軍になる → ① に戻る。
②の督促を受けて、生産順序を飛ばして先に流す対応を特急対応と呼びます。図面品の納期が迫ったときも、同じ特急対応が起きます。特急対応のたびに金型と材質の並びが崩れ、段取り時間が増えます。設備が製品を作れる時間が減るため、③の遅れはさらに大きくなります。
督促以外の対応として、在庫Minすなわち安全在庫の水準を高く設定し、早めに補充を始める方法もあります。欠品は遠ざかりますが、全品番でこれを行えば、工場に残る在庫はその分だけ増えます。こうして在庫と段取り時間の両方が増え続けます。
次に挙げる3つの課題は、この悪循環によって大きくなっています。段取り時間の増加、ロットサイズの判断の揺れ、在庫の増加の順に見ていきます。
課題2 段取りコストの増大
段取りにかかるコストは3つに分かれます。
・人のコスト:圧造は段取り工、ほかの工程は作業者が段取りを受け持ちます。定時内に収まらなければ残業になります
・資材と電気のコスト:清掃には溶剤と圧縮空気を使い、めっき液は切替のたびに一部を入れ替えます
・設備のコスト:段取り中も償却費は発生しますが、その間は製品ができません
工程ごとに1台あたりの月間段取り時間を積み上げると、5つの工程で月476時間になります。いちばん長いのは圧造で、6台で月216時間です。
1台あたりでは月36時間です。パーツフォーマーは交替勤務で、1台あたり月360時間の操業時間があります。その1割が段取りに使われている計算です。
36時間の内訳は、生産順序で変わります。金型の交換が90分の一式交換になるか30分の部分交換で済むか、材質切替の清掃が90分になるか30分になるかは、どの品番の次にどの品番を流すかで決まります。並べ方を見直せば、36時間は短くできます。
課題3 大ロットと小ロットのジレンマ
段取り時間を減らしたいなら、ロットサイズを大きくして同じ品番を続けて長く作る方法があります。切替が少なくなるためです。ところが、大きくすると別の問題が出ます。
| ロットサイズの選び方 | 良くなること | 悪くなること |
| 大ロット(まとめて作る) | 段取り時間が減る | 他の品番の補充が後回しになり、欠品の危険が増える。在庫も増える |
| 小ロット(小分けに作る) | 補充が細かく回り、在庫も減る | 品番の切替が多くなり、段取り時間が増える |
最適なロットサイズは、月ごとに変わります。規格品では品番ごとの出荷のペースと在庫の残りが、図面品ではオーダの量と納期までの余裕が、それぞれ毎月違うためです。
ところが実際には、この最適値を計算する手立てがありません。結果として、そのときの要求に合わせて決めることになります。現場から段取りが多すぎると言われてロットサイズを大きくし、その後、生産管理からは在庫が多すぎると言われて小さくします。
段取り時間と欠品の危険を同時に小さくするには、品番ごとにロットサイズの最適値を計算する必要があります。
課題4 在庫保有コストの増大
工場に残っている完成品や仕掛品は、会計上は棚卸資産として計上されます。欠品をおそれて在庫Minを高めに設定し、よく出る品番を多めに作ることがあります。これが作り過ぎと呼ばれる状態で、棚卸資産が増える直接の原因です。
在庫を置くと、次の3つの負担が生じます。
・保管場所:ネジは1本が数グラムでも、本数がそろえば相当な重さになります。1本8グラムのボルトを1品番10万本持てば0.8トンで、これが100品番あれば80トンです。重量に耐える棚と床が必要になり、置ける場所が限られます
・資金:材料費と加工費が先行して支出され、出荷までは運転資金として固定されます。在庫回転率が下がるほど、資金が固定される期間は長くなります
・廃棄:材質や表面処理の指定が変わると旧仕様の在庫は転用できず、陳腐化在庫として評価損または廃棄損の対象になります。炭素鋼とステンレスは見た目が似ていても代わりにはなりません このうち保管と資金のコストを合わせたものが在庫保有コストです。棚卸資産に対する年間の割合で表します。この工場の見込みは、1億8,000万円に対して年10%です。
まとめ
4つの課題のうち3つは、すでに数字になって表れています。欠品対応と調整に使う管理者の時間は月120時間、段取り時間は月476時間、棚卸資産は1億8,000万円です。段取り時間には人と資材のコストがかかるうえ、設備が止まっている間の償却費も回収できません。残る1つのロットサイズには単独の金額項目がありませんが、方針が月ごとに変わること自体が、段取り時間と在庫の両方を押し上げています。
4つは別々の問題に見えますが、どれも生産順序が最適化されていないことから生じています。言い換えれば、生産順序を見直せば4つすべてに同時に効きます。これらを減らせる分だけ金額に換算すると、年間で2,000万円を超えます。具体的な計算は、第4回で前提値と削減率を置いて行います。
次回は金額の前に、何をどう変えれば4つが同時に減るのかを扱います。
先週組んだ計画は、週の途中で何回組み替えましたか?



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