【オフィス家具・パーテーションのAI生産スケジューリング 4】ROI試算 ~ 年間3,051万円、設備を増やさず取り戻せる金額を試算する
2026.07.28A1:生産計画・スケジューリング , S08:金型や治具を使う工程で納期遅れと段取りを最少化したい全5回の4回目、最重要回です。前回の解決策が実際にいくらの戻りになるのか。ここでは、その効果を年間の金額として検算できる形で示します。
1. 先に結論 ―― 年間およそ3,051万円が戻る
この後の前提を置くと、生産スケジューラの導入で年間およそ3,051万円相当のコストが戻る計算になります。これは年間生産額20億円のおよそ1.5%にあたり、設備を増やさずに得られる改善としては小さくない金額です。
この3,051万円は、計画や段取りの人件費、段取りにかかる資材・電力、在庫の保有コスト、設備の稼働など、いくつかの削減額を積み上げた合計です。ここから先は、前提の数字を置き、削減できる時間を求め、それを金額に直すという順に計算をたどって、この金額にどうたどり着くかを確かめていきます。

2. 試算の前提 ―― あなたの工場の数字
まず、工場そのものの数字です。自社の値に置き換えれば、そのまま試算できます。
| 前提項目 | 値 |
| 対象設備 (合計台数) | 14台 (塗装4/溶接組立6/検査梱包4) |
| 設備の使用単価 | 塗装 4,000 ・ 溶接組立 3,400 ・ 検査梱包 3,800 (円/時間) |
| 段取り時間 (工程別) | 塗装 60 ・ 溶接組立 30 ・ 検査梱包 30 (時間/月・台) |
| 計画担当者数 | 2名 |
| 計画作成時間 | 80 時間/月・人 (計画の組み直しを含む) |
| 管理担当者数 | 2名 |
| 管理時間 | 80 時間/月・人 (納期回答・督促・進捗確認・現場への指示を含む) |
| 平均在庫額 | 200,000,000 円 |
| 計画人件費単価 | 4,000 円/時間 |
| 管理人件費単価 | 4,000 円/時間 |
| 段取り作業単価 | 3,600 円/時間 |
| 資材・電力単価 | 1,300 円/時間 |
| 品番数 | 5,000品番 (工場規模の目安) |
次に、削減率とコスト率の前提です。上の数字にこれらを掛けて、あとで各コストダウン項目を算出します。
| 削減率・コスト率 | 値 |
| 段取り削減率 | 30% |
| 計画時間削減率 | 50% |
| 管理時間削減率 | 50% |
| 在庫圧縮率 | 20% |
| 保管コスト率 (年) | 15% |
なお、表中の保管コスト率とは、在庫を1年間持つのにかかる費用(倉庫スペース・管理の手間・資金の金利・劣化リスクなど)が在庫額に占める割合のことです。一般に年8〜25%程度とされ、ここでは15%と置いています。
3. 段取りの削減時間
各コストダウン項目は月の削減時間 × 単価 × 12で計算します。まず計算のもとになる段取り削減時間を、工程別に積み上げて求めます(この時間は段取り作業費・段取りコスト・設備稼働の回復価値の計算に使います)。
| 工程 | 工程 | 段取り時間 (時間/月・台) | 段取り削減率 | 計算式 | 月の削減時間 (時間) |
| 塗装 | 4台 | 60 | 30% | 4 × 60 × 30% | 72.0 |
| 溶接組立 | 6台 | 30 | 30% | 6 × 30 × 30% | 54.0 |
| 検査梱包 | 4台 | 30 | 30% | 4 × 60 × 30% | 36.0 |
| 合計 | 14台 | — | — | 72+54+36 | 162.0 |
切替が最も多く、月あたりの段取り時間が最も長い塗装工程の削減時間が最大(72.0時間/月)で、削減効果が最も大きい工程です。ここの段取りを詰めることが、ボトルネックの余力を広げ、全体のスループット改善に直結します。
4. 計画作成・管理業務の削減時間
次に、計画づくりと管理業務(納期回答・督促・進捗確認など)にかかる時間の削減を、担当者・時間ベースで求めます(この時間は計画作成人件費・間接人件費の計算に使います)。
| 項目 | 月の作業時間 | 削減率 | 計算式 | 月の削減時間 (時間) |
| 計画作成 | 2名 × 80時間/月・人 | 50% | 2 × 80 × 50% | 80 |
| 管理業務 | 2名 × 80時間/月・人 | 50% | 2 × 80 × 50% | 80 |
5. 設備稼働の回復価値 ―― 工程ごとに分けて計算
最後は設備稼働の回復価値です。これは支出が減る項目ではなく、段取りで止まっていた設備を動かせるようになる時間を、金額に置き換えたものです。段取りが減ると、その分だけ設備が製品を作れる時間(稼働できる時間)が戻ります。この戻ってきた時間を、設備を1時間動かす価値(工程の時間単価)で換算したのが、この項目です。
この項目は工程ごとに時間単価が違うので、工程別の段取り削減時間(3.で求めた値) × 工程単価 × 12 で個別に計算し、合計します。
| 工程 | 月の削減時間 (時間) | 工程単価 (円/時間) | 計算式 | 年間 (×12) |
| 塗装 | 72.0 | 4,000 | 72.0 × 4,000 × 12 | 345.6万円 |
| 溶接組立 | 54.0 | 3,400 | 54.0 × 3,400 × 12 | 220.3万円 |
| 検査梱包 | 36.0 | 3,800 | 36.0 × 3,800 × 12 | 164.2万円 |
| 回復価値 合計 | 162.0 | — | 345.6+220.3+164.2 | 730.1万円 |
この設備稼働の回復価値の合計 730.1万円を、次の年間リターンの表でそのまま使います。
6. 年間リターン ―― すべてを合計する
| コストダウン項目 | 計算式 | 年間 |
| 計画作成人件費 | 計画削減 80時間/月 × 計画人件費単価4,000 × 12 | 384.0万円 |
| 間接人件費 | 管理削減 80時間/月 × 管理人件費単価4,000 × 12 | 384.0万円 |
| 段取り作業費(残業相当) | 段取り削減 162時間/月 × 段取り作業単価3,600 × 12 | 699.8万円 |
| 段取りコスト(資材・電力) | 段取り削減 162時間/月 × 資材・電力単価1,300 × 12 | 252.7万円 |
| 在庫保有コスト | 平均在庫額200,000,000 × 在庫圧縮率20% × 保管コスト率15% | 600.0万円 |
| 設備稼働の回復価値 | 5.の工程別合計 | 730.1万円 |
| 合計 | すべての項目を合計 | 3,051万円 |
ここまでで、各コストダウン項目のもとになる削減時間がそろいました。3.4.で求めた削減時間に単価を掛け、12か月分にすると各項目の金額になります(在庫保有コストだけは在庫額ベースの別式、設備稼働の回復価値は5.で求めた値)。最後にすべてを足すと、1.で先に示した年間およそ3,051万円にたどり着きます。
7. 変動費と固定費
戻ってくるお金には、二つの種類があります。一つはすぐに減る費用(変動費)で、段取りの残業・資材電力・在庫の資金がこれにあたります。生産に応じて実際に出ていくお金なので、減った分がそのまま現金の節約になります。もう一つはすぐには現金にならない費用(固定費に近いもの)で、計画・間接の人件費と設備稼働の回復価値がこれにあたります。人の時間や設備の稼働は、浮いた分を別の生産や仕事に振り向けて初めて価値になります。とくに設備稼働の回復価値は、空いた設備で実際に増産して初めて現金になる金額です。つまり、合計額のすべてがそのまま現金で戻るわけではない点は、導入を判断するときに押さえておきましょう。
8. 設備およそ1台・作業者およそ1名分の余力が生まれる
段取り削減 162時間/月は、3つの工程を合わせた数字で、フルタイムの設備(月160時間)のおよそ1.0台分に相当する稼働時間の回復です。さらに計画・管理の削減 160時間/月が、作業者ちょうど1名分(月160時間)の工数として浮きます。合わせて設備およそ1台・作業者およそ1名分の余力が生まれる計算です。人員を削るためではなく、同じ人員・設備でもっと作れる余力に変えると捉えるのが本質です。とくにボトルネックである塗装の余力が増えれば、工場全体のスループットが上がります。
9. スループットが増大し、売上と利益が向上
この余力は、需要が急に増えたときにも効いてきます。ふつうは注文が増えると、残業を増やしたり、一部を外注に出したりして対応し、その分コストがふくらみます。しかし段取りと計画の無駄を減らして余力を作っておけば、残業や外注のコストを増やさずに、いまの人員と設備のまま増産できます。つまり、浮いた余力はそのまま売上と利益を伸ばす力になります。コストを減らすだけでなく、稼ぐ力を増やせる――これがスループットを上げる本当の値打ちです。
10. まとめ ―― 数字は、議論を動かす
年間およそ3,051万円という数字は、前提を自社の値に置き換えれば誰でも検算できます。導入するかどうかの前に、まず自社の数字で試算してみることが、社内の議論を前に進めます。
▶ あなたの工場の前提値を入れたら、この数字はいくらになるでしょうか。

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