【ランプ製造工場のMPS 3】最適化AIが必要な理由

2026.07.24A1:生産計画・スケジューリング , S07:Auto MPS: 基準日程生産計画を最適化したい , S08:金型や治具を使う工程で納期遅れと段取りを最少化したい

「またロービームの仮組みが止まってます」

月曜の朝、東海工場の笠原工場長のもとに、今岡さんが険しい顔で駆け込んできました。先週のOEM内示では輸出向けADB仕様が多かったはずなのに、実際に流れてきたのは国内向けロービームの特急オーダー。金型の段取りを組み直す時間もなく、成形ラインは午前中まるごと空転していました。

「内示なんて毎週変わるのが当たり前だろう。なんでいつも後手に回るんだ」

笠原工場長のこの一言に、今岡さんは黒いファイルを机に置きました。そこには、Excelで管理された400品番分の計画表がびっしりと並んでいます。しかし、そこに書かれていない情報こそが、この工場最大の弱点でした。

見えない主役——金型が工場を動かしている

「工場長、これを見てください」

上村さんが指し示したのは、射出成形機の稼働表でした。成形機は28台。しかし、その裏で動いている金型は1,200型にも及びます。品番数400に対して金型が3倍という構造は、機械そのものではなく金型の取り合いが実質的なボトルネックになっていることを意味していました。

さらに厄介なのは、レンズ・ハウジング・エクステンション・リフレクターという4部品が、それぞれ別のExcelシートで個別に管理されていることです。1品番でも欠品すれば組立ラインは止まります。けれど、4枚のExcelを見比べて欠品リスクを見抜くのは、今岡さんの経験と直感に頼るしかありませんでした。

「金型のガントが見えていない。だから毎回、火が出てから消火に走るんです」

上村さんの言葉に、笠原工場長は黙り込みました。

品番が四重に増える、という現実

國分さんが手元の資料を開きます。「車種×色×仕様×仕向地。この組み合わせで400品番になっているんですよね」

ロービーム・ハイビーム・ADBという仕様の違いに加え、国内向けと輸出向けで求められる仕向地別の仕様まで絡み合う。この四重構造こそが、品番の爆発的な増加を招いていました。

にもかかわらず、安全在庫はすべての品番で一律の固定数量。よく動く品番は欠品ギリギリ、動きの少ないSP品番は倉庫の奥で眠り続ける。在庫金額12億円のうち、SP品在庫だけで2億円。これは実質的なデッドストック予備軍だと、上村さんは以前から指摘していました。

「均等に配るから、結局どこも足りなくなる。当たり前ですよね」

今岡さんがつぶやいた一言が、現場の実感を物語っていました。

光源の世代交代という、もう一つの波

「金型と品番だけじゃないんです」

今岡さんが続けます。ハロゲン・LED・ADBという光源が社内に混在する今、フェーズアウトが進むハロゲン品番の在庫を持ちすぎれば、廃番のタイミングで一気に陳腐化損失が出ます。一方でADB対応ECUのようなフェーズイン品は調達リードタイムが4〜12週と長く、計画が一日遅れるだけで完成車メーカーの生産に影響が及びます。

「この工場は今、3つの波が同時に来ているんです。金型、品番の複雑さ、そして光源の世代交代」

國分さんがホワイトボードに書き出した3つの課題を見て、笠原工場長はようやく合点がいったようでした。

答えは「毎日、計画をつくり直す」こと

「じゃあ、どうすればいいんだ」

笠原工場長の問いに、國分さんが答えます。「MPSを軸にした日次再計画です。週次で立てた計画を、毎日データに合わせて更新し続ける。それだけで、内示のブレに対する追従が変わります」

具体的には、安全在庫を固定数量ではなく「在庫日数」で持つこと。翌週の需要から1日あたりの必要数を算出し、需要が動けば安全在庫も自動的に変動する。さらに、この日次再計画の中で金型の必要時期そのものを計画として出力する。詳細な割り付けまでは踏み込まず、まずは「いつ、どの金型が必要になるか」という土台を可視化することが先決だと、國分さんは説明しました。

「金型そのものをどう割り付けるかは、また次の段階の話です。今はまず、見えるようにすることが必要なんです」

上村さんも頷きます。「俺たちの経験と勘だけじゃ、400品番×1,200型の組み合わせは追いきれない。データで先が見える仕組みがあれば、俺たちはもっと本質的な判断に時間を使える」

今岡さんの表情にも、少し光が差したようでした。計画担当4名が週64時間かけている業務のうち、実に75%がデータ収集と転記。判断そのものに使えている時間は、わずか25%に過ぎません。この比率が変わるだけで、現場の景色は大きく変わるはずです。

工場長への問い

金型という「見えない主役」を可視化し、品番の複雑さに合わせて在庫を動かし、光源の世代交代を計画に組み込む——これらはすべて、日々の計画を止めずに回し続けることでしか実現できません。

あなたの工場では、計画は「週に一度立てて終わり」になっていませんか。それとも、変化する現実に毎日向き合える仕組みになっているでしょうか。

次回【ランプ製造工場のMPS 4】では、最適化AIの導入した事例を解説します。

タグ : MPS ボトルネック 光源移行 動的最適化 四重構造 在庫日数 安全在庫 日次再計画 金型制約 陳腐化損失
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高橋邦芳 + Asprovaコンサルティングチーム + 生成AI