【ランプ製造工場のMPS 4】他社事例:最適化AIの導入

2026.07.25A1:生産計画・スケジューリング , S07:Auto MPS: 基準日程生産計画を最適化したい , S08:金型や治具を使う工程で納期遅れと段取りを最少化したい

セミナー会場で聞いた、「在庫は持っているのに欠品する」という逆説

「在庫合計は8億円、売上比で約10%。それなのに、毎シーズン必ずどこかの仕向地で欠品を起こしていました」

笠原工場長は、國分さんから案内を受けた生産管理の勉強会に参加していました。壇上で話しているのは、B社北陸工場の生産計画担当・田中さん。二輪車用ヘッドランプを生産する、同業の工場です。

年間売上高約80億円、従業員約210名、量産280品番にSP120品番を加えた計400品番、年間生産約180万台。東海工場(四輪ヘッドランプ、売上約200億円)よりひと回り小さい規模ですが、話が進むにつれ、笠原工場長のメモを取る手は止まらなくなりました。

うちとは違う難しさ――輸出比率85%と、仕向地別需要の季節性のズレ

B社北陸工場の最大の特徴は、輸出比率85%という構成です。アジア(東南アジア・インド)向けが50%、欧州向けが20%、国内はわずか15%。しかも仕向地ごとに需要のピークがまったく異なります。

インド向けは雨季前の3〜5月に需要が急増する。欧州向けはツーリングシーズン前の2〜4月に集中する。東南アジア向けは年末商戦。同じ品番グループでも、仕向地別に需要の山がズレるのです。この季節性のズレこそが、在庫アンバランスの主因でした。

さらに厄介なのは、仕向地ごとにハーネス・レンズ・ブラケット・配光の法規基準(ECE・FMVSS等)が異なるため、余っている仕向地の在庫を、欠品している仕向地に転用できないことです。欧州向けを見越して在庫を積めば、その間にアジア向けが急増しても振り替えられない。「在庫は多いのに欠品する」逆説は、こうして毎シーズン繰り返されていました。

ボトルネックの構造も東海工場とは異なります。東海工場が蒸着バッチ律速なのに対し、B社北陸工場の第1ボトルネックは最終組立ライン。仕向地別の切替段取りが頻発し、組立4ラインの能力を食い潰していたのです(真空蒸着チャンバー4基のバッチ律速は第2要因)。

一律「3週間分」の安全在庫が、逆説を生んでいた

導入前の計画立案は、担当者3名がそれぞれ仕向地別に別のExcelで管理する属人体制。連携はメールと口頭、計画サイクルは週次で、立案工数は3名×週18時間=週54時間に達していました。

そしてExcelのMPSでは、安全在庫を全仕向地一律「3週間分」で設定していました。季節変動を計画に織り込む仕組みがないため、需要の山では足りず、谷では余る。計画精度は約65%(東海工場の72%より低い水準)、緊急対応は月平均18件、うち約6割が仕向地別需要の読み違い起因という状態でした。

最適化AIが実現した「仕向地別・季節連動型の動的在庫基準」

B社北陸工場が最適化AIの導入で切り替えたのは、この安全在庫の考え方そのものでした。日単位バケットのMPS上で、仕向地別に需要の季節パターンを織り込み、動的在庫基準を自動設定する方式です。

仕向地導入前の在庫基準導入後の在庫基準
アジア向け一律3週間分雨季前8週前から安全在庫日数を段階的に引き上げ
欧州向け一律3週間分ツーリングシーズン前10週から段階的に引き上げ
国内・その他一律3週間分需要実績に基づく動的設定(変動小のため標準水準を維持)

需要の山に向けて計画的に在庫を積み上げ、山を越えたら基準を自動的に引き下げる。人手のExcelでは仕向地×品番の組み合わせが多すぎて不可能だった運用が、最適化AIによる日次の自動再計画で回るようになったのです。

数字で語られた導入効果

田中さんがスライドに映した効果指標に、会場がざわつきました。

指標導入前導入後削減効果
在庫金額8億円5億円▲3億円
緊急外注回数年間約80回年間約30回▲50回/年
現場残業時間年間約15,000時間年間約8,300時間▲約6,700時間/年
計画立案工数週54時間週24時間年間で1名相当の削減

在庫を3億円減らしながら、欠品起因の緊急外注は年間80回から30回へ。「在庫を減らすと欠品が増える」という常識が逆転した点が、この事例の核心です。投資回収期間は約3〜4ヶ月だったといいます。

「課題は違う。でも、解決の核心は同じだ」

帰りの新幹線で、笠原工場長は対比表を書いてみました。

対比軸東海工場(四輪)B社北陸工場(二輪)
課題の核心計画精度の低さ+緊急外注の多さ在庫は多いのに欠品する逆説
アンバランスの原因蒸着前仕掛滞留+光源世代混在仕向地別需要の季節性のズレ
ボトルネック蒸着バッチ律速組立ラインの仕向地別段取り
解決の核心動的在庫基準+日次再計画動的在庫基準+季節連動

翌朝、報告を聞いた今岡さんは「一律の安全在庫を疑う、という発想は同じですね」と身を乗り出し、上村さんは「蒸着の山も、季節の山も、山の形が読めれば先回りできるってことか」とうなずきました。課題の顔つきは違っても、MPSの在庫基準を固定値から動的な仕組みに変えるという解決の核心は共通していたのです。

さて、皆さんの工場の安全在庫は、いま「一律◯週間分」のままになっていないでしょうか。その基準は、需要の山と谷を本当に映していますか。

次回【ランプ製造工場のMPS 5】では、最適化AIのROIはどう試算するかを解説します。

タグ : 二輪ヘッドランプ 仕向地重要 動的在庫基準 在庫アンバランス 基準日程生産計画(MPS) 季節性 日単位バケット 最適化AI 欠品の逆説 計画工数削減
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高橋邦芳 + Asprovaコンサルティングチーム + 生成AI