【ランプ製造工場のMPS 6】最適化AI導入ステップと成功のポイント
2026.07.27A1:生産計画・スケジューリング , S07:Auto MPS: 基準日程生産計画を最適化したい , S08:金型や治具を使う工程で納期遅れと段取りを最少化したい年2億円の効果が見えたのに、なぜ足が止まるのか
前回、東海工場では最適化AI導入によるリターン値を試算し、在庫削減・緊急外注・現場残業・計画工数の4分類で年間約2億700万円という数字が見えてきました。数字は十分です。それでも笠原工場長の決裁印は、まだ書類の上で止まっていました。
「正直に言うと、まだ迷っている。うちには、上村さんがいる。金型制約も品番の四重構造も、光源移行期の読みも、全部あの人の頭の中で回っている。すぐにいなくなるわけじゃない。それに——月単位でやっと回している計画を、週次や日次のサイクルで本当に回せるのか? あんな属人化した特殊な業務が、AIにできるのか? 短期間で移行なんて、できるのか?」
考えてみれば、この問いを毎年繰り返しながら、何十年も結局何もしてこなかったのが今なのです。

達人本人が口を開いた——「わしがおるうちに、やってくれ」
会議室の空気を変えたのは、当の上村さんでした。
「工場長、逆です。わしがおるうちにやらんと、間に合わんのです。月次の計画でさえ、1,200面の金型と400品番を睨んで週64時間かかっとる。OEMの内示は毎週、数量も仕様も動く。わしでも追従が遅れて、欠品か過剰在庫のどっちかを毎月出しとるんです。日次のサイクルなんて、人間には物理的に無理です。だからこそ機械にやらせる。わしの頭の中にあるのは魔法やない。『この金型は月末に予防保全』『この仕向地は内示がブレる』——ぜんぶ判断基準です。基準なら、マスタとルールに写し取れます」
属人化業務の正体は「言語化されていない判断基準の集合」です。それを引き出せる人がいるうちにマスタ化すること——これが導入の成否を分ける第一のポイントです。
「半年で本当に移行できるんですか?」——6カ月の導入ステップ
今岡さんの現実的な不安に、國分さんが標準的な導入ステップを示しました。
| ステップ | 時期 | 内容 |
| STEP 1 | 1ヶ月目 | 金型マスタ・品番マスタ整備 |
| STEP 2 | 2〜3ヶ月目 | AutoMPS試行稼働(量産品番から先行) |
| STEP 3 | 3〜4ヶ月目 | 動的在庫基準の設定・チューニング |
| STEP 4 | 4〜6ヶ月目 | 蒸着バッチ計画ルールの組み込み |
| STEP 5 | 6ヶ月目以降 | SP品番・仕向地別ライフサイクル管理の展開 |
STEP 1は、上村さんの頭の中の棚卸しです。1,200面の金型と射出成形機28台の対応関係、金型共用品番、保全周期をマスタに落とし込みます。ここに達人がいることが、そのまま工場の資産になります。
STEP 2では、動きの読みやすい量産品番から試行稼働を始めます。重要なのは、既存のExcel計画と並走運用することです。AIの計画と上村さんの計画を毎週突き合わせ、差分の理由を検証する。現場のリスクはゼロのまま、AIの計画品質だけを鍛えていく期間です。
STEP 3が、このシリーズで繰り返し述べてきた核心です。品番毎の安全在庫を「在庫日数」——翌週需要の1日当たり需要数を1日分として算出する方式——で設定し、内示の変動に合わせて安全在庫値を自動で動かします。日次再計画によって、週次で動くOEM内示への追従遅延、つまり欠品と過剰在庫の同時発生を構造的に断ちます。
STEP 4で、東海工場のボトルネックである真空蒸着のバッチまとめルールを計画に組み込み、STEP 5で需要が細く読みにくいSP品番と仕向地別のライフサイクル管理へ広げます。難所を最後に回すのではなく、土台が固まった状態で難所に挑む順序です。
成功のポイントは3つ——達人を「教師」に、並走で守り、小さく始める
第一に、達人を置き換えるのではなく教師にすること。上村さんの役割は計画を作る人から、AIの計画を評価し基準を教え込む人に変わります。第二に、並走期間を必ず設けること。切り替えの崖を作らなければ、現場は安心して移行できます。第三に、量産品番から小さく始めて全品番へ広げること。初月から完璧を狙う導入ほど、頓挫します。
将来展望——MPSの土台の上に、APSで金型の詳細割り付けまで
AutoMPSで日次の基準日程生産計画が回り始めれば、その先にAPSによる詳細スケジューリングへの道筋が見えます。どの金型をどの成形機に何時から割り付けるか——現在は現場長の経験で組んでいる詳細割り付けまで自動化する構想です。ただしAPSは、正しいMPSという土台があって初めて機能します。順序を間違えないことも、成功のポイントの一つです。
「金型制約だから仕方ない、品番の四重構造だから仕方ない、光源移行期だから仕方ない」——そう言いながら、達人がいなくなる日に怯えてまた1年を過ごすのか。それとも、達人がいる今この半年で、計画の土台を作り始めるのか。あなたの工場の「上村さん」は、あと何年、隣にいてくれるでしょうか。
高橋邦芳 + Asprovaコンサルティングチーム + 生成AI
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