【金属部品・アルミダイカストのAI生産スケジューリング 5】失敗しない導入 ~ ダイカストの段取り時間と捨てたショットを記録して1工程から始める

2026.10.08A1:生産計画・スケジューリング , S08:金型や治具を使う工程で納期遅れと段取りを最少化したい

全5回の最終回です。前回は年間Return値を6つのコストダウン項目に分けて計算し、結果を最も左右するのが段取り削減率であることを説明しました。今回は、その削減率を自社の実測に置き換えるための導入の進め方と、データの準備を扱います。

金属部品・アルミダイカストのAI生産スケジューリング 第5回 失敗しない導入 インフォグラフィック

1. よくある不安

よくある不安不安の原因
全工程を一度に変えるのは難しい5工程の計画の立て方を同時に替えると、現場の確認と手直しの量が一度に増えるため
現場が使ってくれないかもしれない計画担当者や班長の経験による判断が、計算結果に置き換えられると感じるため
データを揃えるのが大変品番ごとの金型や段取り時間、捨てたショットの数が、紙の記録や担当者の記憶にしか残っていないため

2. 不安を小さくする3つの視点

(1) 1工程からスモールスタート

対象を1工程に絞れば、集めるデータは、その工程の品番と設備のものだけです。計画を確認する人も、計画担当者とその工程の班長に限られます。1工程で導入前後の記録を比べて効果を確かめてから、次の工程に広げます。

(2) ベテランの勘は制約条件として文書化する

熱を伝えやすい合金の前には必ず保持炉の溶湯を入れ替える、予熱炉が空くまで2台目の一式交換を待たせる、などの決まりは、班長の経験の中にあります。このように、経験から身についていても言葉になっていない知識を暗黙知と呼びます。これを文書にして、ほかの人や生産スケジューラが使える形にした知識が形式知です。

これらの決まりを文書にし、制約条件として生産スケジューラに入れれば、暗黙知が形式知になり、ベテランの判断が計画に残ります。どう書けば計算に入れられるか迷う条件は、ベンダー(開発元)に相談してください。

(3) リスケジュールで、何度でも作り直せる

最初の計画が現場で守っている決まりに合わなくても、制約条件を直してリスケジュールすれば、人が一から作り直すより短い時間で別の計画ができます。試してから直せるため、条件を最初から完全にそろえてから始める必要はありません。

3. 最初に選ぶ工程は、ダイカスト

最初の1工程は、第1回で説明したボトルネックのダイカストにします。比べる数字は、月間段取り時間の1つだけです。

導入前と導入後の1か月ずつ、段取りを1回ごとに記録します。項目は、日時、ダイカストマシンの番号、前後の品番、部分交換か一式交換か、金型交換の時間、暖機の時間、合金の切替で溶湯を入れ替えた時間、予熱炉を待った時間、暖機の間に捨てたショットの数です。導入後の月間段取り時間が導入前からどれだけ減ったかの割合が、自社の段取り削減率です。捨てたショットの数は段取り時間とは別に数え、溶かし直すコストとして、第4回の段取りコストの見直しに使います。

最適化AIに入れるデータは、次の5つです。段取り時間と捨てるショットの数は導入前の記録から求め、ほかの4つは品番、金型、設備の台帳と、在庫とオーダの記録から集めます。

  • 品番ごとの形状、取付座の仕様、合金と、使う金型の組み合わせ
  • 部分交換、一式交換、合金の切替ごとの段取り時間と、捨てるショットの数
  • 見込生産品の安全在庫と現在の在庫
  • 受注生産品のオーダごとの納期と個数
  • 予熱炉が何基あるかと、1型を温める時間

次にどの工程へ広げるかは、導入後の記録を見て決めます。ダイカストの段取り時間が減っても、まとめて鋳造したケースが機械加工の前で何時間も待っていれば、製造リードタイムは短くなりません。ダイカストの完了時刻と機械加工の着手時刻も記録しておき、この待ち時間が長ければ、次は後工程の機械加工です。2つの工程をまとめて計画すれば、機械加工の着手時刻をダイカストの完了時刻に合わせて決め、鋳物の待ち時間を減らせます。

まとめ ― 順番を変えれば、未来が変わる

全工程を一度に替えなくても、ボトルネックのダイカストの1工程から始め、導入前後の段取り時間と捨てたショットの数を同じ項目で記録すれば、効果を自社の数字で確かめられます。記録が残れば、第4回の段取り削減率30%を実測値に置き換えられます。設備を増やす前に、生産順序を変えることでスループットを増やせるかどうかが、1工程で分かります。あなたの工場で、ダイカストの1工程の段取りを1か月記録するとしたら、誰がどの項目を書くことになるでしょうか?

解説動画

この回の内容を、動画でも説明しています。

第1回から読む

全5回の最終回です。第1回から通して読むと、工場の全体像から導入の進め方までを順にたどれます。

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