【電線のAI生産スケジューリング 5】失敗しない導入 ~ 押出1工程から始める小さな一歩

2026.09.28A1:生産計画・スケジューリング , S08:金型や治具を使う工程で納期遅れと段取りを最少化したい

前回、年間の効果を金額にしました。最後は、その金額を実際の成果に変えるための導入手順です。

よくある不安

生産スケジューラの話をすると、決まって次の4つの不安が出ます。

よく聞く不安説明
うちは特殊だから合わない品番ごとの決まりごとや自社独自のルールが多いため、外から持ち込んだ仕組みでは扱いきれないと感じます
ベテランの判断が無視される段取りの順番は長年の経験に支えられてきました。計算に置き換えると、その経験が使われなくなると心配になります
データが揃っていない段取り時間や担当人数の記録がなく、全品番分を集め終えるまで始められないと考えてしまいます
計画どおりに現場が動かないこれまでも計画を立てては崩れてきたので、新しい仕組みでも同じことになると感じます

不安を小さくする三つの考え方

4つの不安はどれも、「必要なものを全部そろえてから、一気に変える」という進め方を前提にしています。そうしなくても始められる、というのが次の三つです。

  • 1工程から始める ―― 対象を絶縁押出1工程に絞れば、必要なデータはその工程の段取り時間と担当人数だけです。1か月あれば集まります
  • ベテランの勘を制約条件にする ―― 制約条件とは、ラインの能力やダイスの本数など、計画で必ず守る決まりごとです。「この色の後にこの品番は作らない」という自社独自の判断も、同じ形で書き出せば計算に組み込めます
  • 変えられるからこわくない ―― 制約条件も削減率も、動かしながら直せます。計画が崩れても数分で作り直せるので、最初から完璧な計画を用意する必要はありません

スモールスタート ―― ボトルネックの絶縁押出工程に絞る

最初の対象は、第1回で特定したボトルネック、絶縁押出工程1つに絞ります。段取り時間が最も長く、複数名で担当し、時間単価も高いため、同じ手間で効果がいちばん大きく出ます。

明日からの第一歩 ToDo

やること具体的な内容第4回の式との対応
1測る絶縁押出の段取り時間 (時間/月・台) と担当人数、計画作成時間・管理時間・平均在庫額を1か月記録する前提表がそのまま埋まる
2絞る対象を絶縁押出工程の10ラインだけに絞る工程別削減時間と削減人時の対象範囲が決まる
3試算する削減率を控えめに置き、6つのコストダウン項目を計算する合計 = ① + ② + ③ + ④ + ⑤ + ⑥
4小さく試す1工程で2-3か月動かし、段取り時間と納期遅延件数を前後で比べる仮置きの削減率が実測値に変わる
5広げる効果が出た形を前後の工程へ順に広げる対象台数が増え、金額も積み上がる

1の「測る」を1か月続ければ、第4回の前提表を自社の実測値に置き換えられます。とくに担当人数は記録がないことが多いので、忘れずに数えておきます。

まとめ ―― 順番を変えれば、未来が変わる

設備を買い増さず、人を増やさず、作る順番を変えるだけで、段取り時間と納期遅延件数は動きます。第4回の内訳を見ると、絶縁押出1工程だけでも設備費⑥が1,368万円ありました。1工程から測って、1工程から試す。それが最も確実な進め方です。

あなたの工場で最初に選ぶ1工程は、どこになりそうですか。

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