【自動車ドアモジュール工場のMPS 2】課題——計画は毎週「作り直し」ですか?

2026.07.29A1:生産計画・スケジューリング , S07:Auto MPS: 基準日程生産計画を最適化したい , S08:金型や治具を使う工程で納期遅れと段取りを最少化したい

月曜日の朝、生産管理室には独特の緊張感が漂います。先週の内示が変わった——そのメールが届いた瞬間から、計画担当者たちの「作り直し」が始まるからです。愛知県の東海工場では、その光景が今週も繰り返されていました。

月曜の朝、また計画が崩れた

笠原工場長 「今岡さん、今週の計画は? 先週末に完成車メーカーから内示が変わって来たって聞いたけど」

今岡さん「はい、金曜の夕方にB社から数量変更が来ました。それだけならまだしも、C社の仕様変更も重なって……Excelをまた最初から組み直してます。月曜中には無理かもしれません」

上村さん 「それ、毎週のことやないか。俺が計画を担当してた20年前からそうや。内示は変わるもん——それが自動車部品屋の宿命やと思っとったけど、最近は品番が増えすぎてて、昔のやり方じゃ限界やな」

東海工場では現在、計画担当者8名が毎週月曜日に翌週分の計画を立案します。その工数は実に200時間/週——8名が週25時間ずつを計画作業に費やしても、到達できる計画精度は約70%という現実があります。

指標現状値備考
計画立案工数200 h/週8名 × 週25時間
計画精度約70%目標には届かない
緊急対応件数週10件計画崩壊の証拠
在庫金額約80億円売上の約20%を在庫が占める

なぜ計画は「週次」のまま止まっているのか

ドアモジュールの需要は、車種・グレード・仕向地・年式・オプションの組み合わせによってSKU数が爆発的に増加しています。東海工場では量産品番約400、サービスパーツ含めると約1,000品番——それを週次の計画サイクルで回そうとしていることが、そもそもの歪みです。

完成車メーカーからのOEM内示は毎週変動します。数量が変われば、その週に何を優先して生産するかの優先順位が根底から変わる。しかし週次計画では、その変動に追従できるのは「次の月曜日」だけです。欠品する前に手を打てない、過剰に作りすぎてから気づく——そのサイクルが繰り返されています。

MPS課題① :OEM内示の週次変動への追従遅延

内示は毎週動くのに、計画の見直しは「週次」のまま。追従遅延が欠品過剰在庫を同時に引き起こす。日次で需給バランスを再計算し、品番ごとの安全在庫を「在庫日数」で動的に管理できる仕組みが求められている。

ドアモジュール特有の罠——副産物と左右セット需要

國分さん 「工場長、今月D社からサービスパーツの急ぎ発注が来ました。廃番車種のウィンドウレギュレーターなんですが、金型まだ残ってますよね?」

笠原工場長 「金型はある。でも、あの金型は左右一体取りだから、右だけ作れない。左も同時に出てくる。左の在庫どこに置くんだ……今岡さん、確認できる?」

この会話に、ドアモジュール生産の核心的な難しさが凝縮されています。副産物同時生産の問題です。

プレス加工では左右一体取り金型を使うため、ショット単位で複数品番が強制的に同時産出されます。右ドア用の部品を作れば、自動的に左ドア用も生産される。需要はセット単位で発生しますが、生産タイミングや在庫バランスが品番ごとに微妙にずれていくのです。

射出成形も同様です。多数個取り金型では、一度の成形サイクルで複数品番が同時に産出されます。15台の射出成形機が抱える品番数は全工程中最多——段取り時間も1〜3時間と長く、計画外の割り込みが全体の流れを乱す大きな要因になっています。

MPS課題② :副産物同時生産と在庫アンバランス

左右一体取り・多数個取り金型により、需要のない品番が計画外に産出され続ける。サブアッシー工程(金属・樹脂・電子の3ルート合流点)では、最も遅いルートが全体を律速するため、どれか一つが崩れると全ラインが止まるリスクがある。

量産計画とサービスパーツ需要の「共存不能」

今岡さん 「今週、量産の計画を立てたら、またサービスパーツの緊急対応が4件入りました。プレスの計画を変えると、連鎖的にメッキラインのスケジュールも動かさないといけなくて……正直、どこから手をつければいいか分からなくなっています」

上村さん 「SP品番は約600品番あるんやろ。廃番車種も含めて。あれ全部の在庫を、今の8人でExcelで管理するのは無理やと俺は思う。昔は品番が今の半分やったから何とかなってたんや」

東海工場のサービスパーツ(SP品番)は約600品番——量産品番の1.5倍の数です。廃番車種の部品も含まれるため、需要の発生タイミングも頻度も読めません。しかし完成車メーカーへの供給義務がある以上、無視することも許されない。

量産計画の精度を上げようとしても、サービスパーツの緊急割り込みで計画は常に乱されます。ボトルネック工程であるプレス加工(段取り30〜60分、設備単価3〜8億円)に割り込みが入るたびに、連鎖的にメッキライン、そして下流の全工程が影響を受ける構造になっています。

MPS課題③ :量産需要とSP需要の混在による計画崩壊

予測可能な量産需要と不定期なサービスパーツ需要を、同じ計画サイクルで扱う設計に無理がある。超多品種化(1,000品番)の中で、生産ロットサイズの最適化と負荷平準化を両立させる計画基盤が存在しないことが根本問題だ。

「計画している」のに計画できていない現実

東海工場の計画担当8名は、週200時間を費やして計画を立てています。しかしその精度は70%——言い換えれば、10件に3件は計画通りに動かないということです。週10件の緊急対応が発生し続け、在庫回転率は年5回転に留まる。

問題の根は一つではありません。「OEM内示の週次変動」「副産物同時生産によるアンバランス」「SP需要の割り込み」——三つの構造的課題が絡み合い、どれか一つを解決しても残りが計画を崩し続ける。

現在の計画方法——Excel+Access+属人的判断——は、品番数が500以下だった時代のために設計されたものです。1,000品番・400万set/年という規模では、人手による計画立案がボトルネックになるのは構造的必然と言えます。

あなたの工場では、月曜日に立てた計画が、木曜日には何件崩れていますか? 計画担当者は「計画を立てる時間」と「崩れた計画を直す時間」の、どちらに多くを費やしているでしょうか。

タグ : MPS(中日程計画) OEM内示変動 サービスパーツ割り込み セット需要連動 ボトルネック工程 副産物同時生産 安全在庫 計画精度 負荷平準化 超多品種化
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高橋邦芳 + Asprovaコンサルティングチーム + 生成AI