製造業ではなぜDXが必要なのか?概要から推進例まで解説

2024.03.29A0 生産管理
製造業ではなぜDXが必要なのか

生産コストの高騰や業務の属人化など、製造業が抱える深刻な課題を解決するためには、DXの推進が必要となります。本記事では、DXの概要や重要性を踏まえたうえ、DX推進で実現できることを解決し、生産スケジューラの導入でどのような効果があったか実際の事例を紹介します。

【目次】
■DX(デジタルトランスフォーメーション)の概要
■製造業におけるDXの重要性
■製造業のDX推進で実現できること
■事例からみる製造業のDX推進例
■まとめ

DX(デジタルトランスフォーメーション)の概要

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用してビジネスモデルや企業文化、市場の顧客体験を根本的に変革することです。この変革は、企業が競争優位を獲得し、迅速に変化する市場ニーズに対応して、効率性の向上を進めることを目的としています。例として、各種業務システムやIoTシステムなどを導入して業務を効率化し、ビジネスモデルや企業そのものの価値を改革することが挙げられます。

DXが進めば、デジタル技術を活用して新しいビジネスモデルやサービスを開発し、新たな収益源を創出することも可能です。そのためには、第一歩としてデジタル技術やデータを用いて生産性を向上させることが必要です。DX化を進めるツールの例として挙げられるのが、以下の4つです。

  • 生産管理システム:生産管理におけるあらゆる業務をサポートするシステム
  • 販売管理システム:受注から納品までお金の流れを管理するシステム
  • 在庫管理システム:在庫数量や入出荷情報を管理するシステム
  • 生産スケジューラ:生産管理における詳細な生産計画を立案するツール

生産管理システムは製造業における基本的な業務を一括管理できるため、導入すると製造業務全般を効率化できます。
受注から納品に至るまでにおけるお金の流れはすべて販売管理システムで行えるので、データを効率よく集めて状況にあわせた経営分析が行えます。在庫管理システムは在庫数量や入出荷を行えるため、入力ミスや労働者の負担を軽減することが可能です。

生産スケジューラとは、生産管理における詳細な生産計画を立案できるツールです。生産スケジューラを導入すると、人の手で行うと膨大な時間がかかる生産計画の作成を自動化できます。また、各種データを”見える化”して業務のブラックボックス化を解消・予防するといったことも可能です。

製造業におけるDXの重要性

予測不能、不確実性の強い現代社会では、ダイナミックケイパビリティの向上が求められます。世界情勢に影響されやすい製造業でも、それは例外ではありません。製造業においてダイナミックケイパビリティを高めるために必要なのは、DX化です。ダイナミックケイパビリティの他にDX化が求められる背景として、次の4つが挙げられます。

  • 生産コストの高騰への対応
  • 人材不足の解消
  • リモートワーク環境の整備
  • 現場の属人化の解消

ダイナミックケイパビリティの重要性

ダイナミックケイパビリティとは、変化する状況や環境に適応できるように企業を変革する力のことを言います。 現代社会は、状況や環境が急速に変わります。その変化に適応して競争力を保つためには、ダイナミックケイパビリティを高めることが重要です。DX化を進めることは、ダイナミックケイパビリティの向上につながります。DX化は、組織における限りある資源を効率的に活用できるように組織を変革することだからです。

生産コストの高騰への対応

昨今、原材料、燃料、人材採用など、生産に関わるあらゆる面において生産コストが高騰しています。

この課題を解決するDX化として、2つのアプローチが考えられます。
1つは、仕入原価を下げることです。仕入原価には原材料の費用だけではなく、労務費なども含まれています。製品品質に影響が少なくなるよう、原材料以外の費用を減らすことを試みることが一般的です。特に属人化している業務が多くあり、自動化や機械化ができていないと労務費も上昇しがちです。この場合は、DX化によって属人化している業務を標準化することが求められます。もう1つは、生産コストの高騰を受け入れた上で高価格でも製品が売れるように、DXとデジタルマーケティングを駆使して新規顧客を開拓することです。

人材不足の解消

特に中小企業においては、深刻な人材不足の問題を抱えています。労働力人口は日本全体で減少しているため、これは避けられない問題と言ってもいいでしょう。製造業では、技術の伝承が適切に行われず、経験もスキルも未熟な若手がそのまま業務を引き継ぐことになる可能性が懸念されます。こうした事態を防ぐために、DX化が急がれます。業務内容の見直しを図り、機械でも対応できる作業は自動化し、少ない人員でも業務が回せるようにすることが必要です。また、製造業における技術をデジタル化して共有することも求められています。

リモートワーク環境の整備

働き方の多様性が進む中、リモートワーク環境の整備は製造業でも求められています。しかし、製造業は現場での作業が多いため、リモートワークの導入が難しい業界です。

生産管理システムや生産スケジューラを導入して、業務内容を見える化した上で無駄を省ければ、現場を最小限の人員で回すことが可能になります。また、IoTを活用した遠隔業務支援システムを導入すれば、遠隔で現場の管理が可能です。このように、DX化を進めることで、製造業においてもリモートワーク環境の整備を進められると言えるでしょう。

現場の属人化の解消

製造業では、求められるスキルやノウハウが高度であるため、特定の従業員のみしか対応できない業務が増えるという現場の属人化が問題となっています。

属人化している業務は、担当している従業員しか業務内容を理解していないため、その従業員が不在のときに業務が進まないリスクが高まります。 DX化によって、属人化している業務をシステム化することができます。業務内容を洗い出す過程で、本当に必要な業務だけをピックアップすることが重要です。そして人の手を極力排し、できるものはすべて機械化しながら業務を一から構築し直します。こうして再構築された業務は、特定の従業員に依存したものではなくなります。

製造業のDX推進で実現できること

製造業のDXを推進すると、AI(人工知能)やIoTなどのデジタル技術が導入され、業務の自動化や機械化が進みます。従来のように人の手で業務をすることが減るため、担当者のみが業務内容を把握しているという属人化も解消されることになるのです。ITの最新技術を駆使して、製造における業務の効率化が図られるようになると言えます。

製造業のDX推進で実現できることとして、以下の5つが挙げられます。

  • 生産性の向上
  • 必要なリソースの確保
  • 業務の標準化の実現
  • 業務のブラックボックス化の防止
  • 品質の向上

生産性の向上

DX化を進めるにあたってAIやIoTなどのデジタル技術を導入することで、さまざまな業務の一部あるいはすべてを自動化することが可能となります。事務に関する業務の自動化が進むと、ペーパーレス化にもつながり、結果的に効率性が上がることも期待できます。

これまで人の手でされていた作業の多くが自動化されることのメリットとして挙げられるのが、品質の安定と人員削減です。最小限の人員で高品質の製品を生産できるようになるため、生産性の向上が期待できます。

必要なリソースの確保

これまで人の手で行われていた業務が、DXの推進によってシステム管理のもと自動化されると、従来の業務にかかっていた人・時間・費用が浮きます。この浮いたリソースを使って、より創造性のある業務を行えるようになります。

これまでリソース不足で新規事業に乗り出せなかった企業にとっては、必要なリソースを確保することができるようになると言えるでしょう。

業務の標準化の実現

DX化を推進することによって、属人化していた業務の標準化が実現されます。DXにあたっては、必要なデータを収集して整理した上で分析し、その結果に基づいてシステムを導入して業務の効率化を進めていきます。これまで業務を担当している従業員の熟練した技術や経験に依存して進められていた業務が、システム上でデータ化されるため、標準化が実現します。担当の従業員が持つ技術をそのままAIに学習させ、人の代わりに機械が業務を行えるようにすることも可能です。

業務のブラックボックス化の防止

製造業において深刻な問題となっているのが、ITシステムと生産設備のレガシー化です。既存のシステムと生産設備が老朽化していることに加え、追加や書き換えを繰り返したことにより複雑化していることをレガシー化と言います。レガシーシステムを部門ごとに分散管理していると、ブラックボックス化が進みやすいです。システムに対応できる従業員がその部門の担当者に限られてしまうからです。担当者がシステムのノウハウを新しい担当者に対して十分に継承しないまま退職してしまうと、システムの内部を把握できなくなってしまいます。

しかし、DXを導入することで、あらゆる部門のデータが一元管理されるようになります。社内で同じデータを共有できるので、ブラックボックス化の防止につながると言えるでしょう。

品質の向上

システム化、機械化が進んでいない製造現場では、品質管理が不十分になりやすく、不良品が発生にも繋がります。

DXが進むことによって業務の効率化が実現できれば、リソースに余裕ができ、より顧客のニーズを満たす製品を開発することができるようになります。結果として、顧客満足度が上がるような品質の良い製品を生み出すことが可能となるのです。

また、生産設備にIoTを導入して常にデータを取れるようにすることで、設備の故障など、生産に支障をきたす前に不具合に気づけるようになります。こうした点も品質向上につながると言えるでしょう。

事例からみる製造業のDX推進例

製造業においてDX化を進めるにあたって、生産スケジューラというツールの導入は代表的な方法の一つです。生産スケジューラを導入することで、生産計画を迅速に生成でき、急な変更にも柔軟に対応できるようになります。
具体的に、生産スケジューラの導入事例を見ていきましょう。

エナジーウィズ株式会社の事例

エナジーウィズ株式会社では、複雑な生産計画に対応するために、一部手作業で計画立案しており、これが生産効率の低下と欠品リスクの増加につながっていました。これを解決するために、生産計画のDX化推進として「Asprova」「Solver」を導入し、生産計画の自動化と効率化が実現しました。手作業による誤差を減らし、生産プロセスの最適化を達成したことで、生産スケジューリングの精度が向上し、企業の競争力強化に寄与しています。
エナジーウィズ株式会社様

ニデックアドバンスドモータ株式会社の事例

ニデックアドバンスドモータ株式会社(元日本電産サーボ株式会社)では、納期変更の要望、機械トラブル、部品調達のムラなどが発生することによる生産計画の変更が多く、生産計画(製品)の固定率は40%程度にとどまっていました。また、調整するために、担当者は日々リカバリ作業に追われていました。しかし、生産スケジューラ「Asprova」を導入したことで、生産計画の固定率を90%まで高めることができ、急な変更が発生しても柔軟に対応することが可能になりました。
ニデックアドバンスモーター株式会社 様

ニデックエレシス株式会社の事例

ニデックエレシス株式会社では、所要データを手入力して生産計画に反映し、資材を発注するという流れに1週間かかっていました。しかし、「Asprova」を導入したことで、所要データから生産計画と共に資材発注計画が作成されるようになり、部品在庫を大きく削減することに成功しました。その他、生産計画立案時間の40%短縮にもつながっています。
ニデックエレシス株式会社 様

まとめ

予測が困難で不確実性の高い現代社会で生き残るためには、企業のダイナミックケイパビリティの向上が必要です。特に、製造業では従業員の熟練した技術や経験に頼る業務が多く、DX化による業務の透明化と標準化が求められています。製品を生産するにあたって要となる生産計画は、生産スケジューラを導入することで生産計画の精度と効率が大きく向上します。DX化推進の一環として、生産スケジューラの導入をご検討ください。

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