効率化生産のための最適スケジューリング~外段取り編~

2024.04.03S9:効率化生産のための最適スケジューリング ~外段取り編~

 生産スケジューラAsprovaのオプション機能であるSolver。高難度の課題に対し、反復探索で解を見つけます。その最新作「S9」についてアスプローバ社のセミナーが開かれました。S9は、効率化生産のための最適スケジューリング~外段取り編~です。外段取りを取り巻く諸条件、つまり金型のメンテナス、作業者の負荷などを考慮に入れながら、納期遅れのない計画を立てます。セミナーでは、どのように課題を解決していくか、逐一説明されています。その内容をご紹介します。

可動率を上げたいが、現実は厳しい

 説明するのはコンサルタントの奥井智さんです。

 段取りとは、金型や工具の交換のことで、多品種生産には欠かせない工程の一部です。効率よく生産するためには、なるべく短くすませたいところです。奥井さんは「効率化のため、ラインを停止して行う内段取りを、停止せずに行う外段取りに切り替える努力が、どの生産現場でも進められています。内段取りから外段取りに変えると、製造設備の可動(べきどう)率が上がります」と説明します。

 可動率は、設備を利用しようとしていた時間のうち、実際に利用可能であった時間です。故障で下がることもありますが、段取りの計画がまずいと、やはり下がってしまいます。可動率向上のために、いろいろ策を練るのですが「思ったほどには上がらない」という経験を、実務者は感じるようです。奥井さんは次のような例を挙げました。「外段取り中に、別の品目を生産するとします。しかし段取りができる前に、別の品目の生産が終わってしまうと、結局段取り待ちの時間ができてしまいます」。それが納期遅れにつながるというわけです。(図参照)

 また金型のメンテナンスも問題になります。交換を先延ばしにすると、不具合が生じるかもしれません。たとえば500個作ったらメンテナンスする金型の場合、仮に600作らなくてはならない場合、途中でメンテナンスの時間が必要になります。これも納期遅れにつながります。

 こうしたことを考慮しながら、いい案配で計画することが必要です。

Solverの威力、人間の発想を超える

 次いで、エンジニアの林意恩(リン・イアン)さんが登場し、外段取りに関する生産計画立案のデモを行います。データセットは2つ用意されています。まず1つめは、4品目の生産で、それぞれ同量に需要がある場合です。納期順に普通に割り付けていくと、可動率47% 納期遅れ83件になります。これを、隙間を埋める形で修正していくと、可動率100%で納期遅れもなくなりました。「このデータセットならAsprovaの標準機能でも処理可能です」とイアンさんは話します。

 2つめのデータセットは、4品目のそれぞれの需要量がばらばらで、4つの金型のメンテナンスに必要な時間も異なります。これを納期順に割り付けていくと、可動率77%、遅れ37件になりました。これはロジックで修正していくのが難しいので、手修正を加えます。すると、可動率88% 遅れ10件となりました。「時間をかけて修正しましたが、このあたりが人間の限界です」とイアンさん。

 これをSolverを用いて計画すると、わずか2秒で、可動率100%、遅れゼロの計画ができました(図参照)。この間Solverは100万回の試行をしています。イアンさんは「Solverが導き出した結果を見ると、メンテナンスに手間のかかる品目より、たくさん作る品目を先にやることになっています。また隙間時間を埋めるために、わざわざ同じ品目を分割して割り付けています。これらは人間が思いつかない計画です」と述べます。

作業者の負荷も考慮して

 再び奥井さんが登場し、今度は作業者の負荷について考察を加えます。複数の金型があって、それらのメンテナンスが重なると、作業者が複数の作業をしなくてはならなくなり、メンテナンスの時間が長くなることが予想されます。待ち時間をなるべく少なくしようと思ったら、人員配置を工夫することも一案です。Solverでは、特定の時間に作業者を増やした場合の計画も立案できます。

 実例として自動車部品メーカーが紹介されました。この工場では、すでにSolverの1つであるS3(納期遅れと段取りを最小化)を使っています。今回はS9を利用し、プレス工程に対して計画を立てることになりました。ここでは50個の金型を使い、3か月で1000件の作業をこなしています。段取りには1時間から4時間が必要です。かなり複雑な工程なのですが、これまでのPoC(試行的導入)によると、Solverを用いることで、立案時間が20時間から5時間に短縮できる見込みが立ちました。

 Solverは続々と開発されています。今後も現場の要望に応じて、新たな機能を持つSolverを開発していくそうです。アスプローバ社のナレッジセンターにS9のSolverについての資料があり、詳しく知ることができます。


(了)


技術革新や予測不能な外的要因に迅速に対応できるよう製造業務においては、より一層生産プロセス全体の改善と生産効率向上が求められています。 データやデジタル技術を活用し、生産リードタイム短縮や在庫・コスト削減などを実現する製造現場におけるDX推進の一つとして、生産スケジューラの導入がカギとなります。 次のページでは、生産スケジューラ導入によって具体的にどのような業務改善が実現したのか導入企業の事例もご紹介しています。ぜひご参考にしてください。 img_banner_aps