現場との対話を大切に~HiICS・村岡樹さんに聞く
2023.09.25X2:販売パートナーインタビューアスプローバ社の重要なパートナー、日立産業制御ソリューションズ(HiICS)の若手エンジニア、村岡樹(むらおか・たつき)さんに、生産スケジューラAsprovaの導入について、話を聞きました。円滑でスピーディーな導入には、現場との対話や協調が欠かせないということです。
一晩回しても終わらない
ー 貴社の特徴を教えてください
Asprovaのみではなく工場全体のソリューションを提供できる点でしょうか。他部署ではERPやMES(製造実行システム)、設備保全システムを展開しています。また長年にわたり多くの業種に対してAsprovaを導入しているため、多くのノウハウが蓄積されています。私は新卒入社5年目ですが、半導体、製薬、工具、造船、電池などの業種で導入にかかわりました。
ー 印象に残っている仕事は何でしょう
初めて参加したのが、半導体工場の案件でした。いわゆる「前工程」で、まさにチップを作るところです。工程数は100以上あり、中には繰り返しやバッチ処理が多数存在します。たとえば、電気的な特性を出すために、1時間から数時間、高温の炉に入れる工程です。こういった繰り返しとバッチ処理の工程を、どれだけ効率よく割付けるかが重要です。
そのために、製造開始可能時間帯を数時間おきに設定したり、仕掛品がたまるように待ち時間を設定したりしました。現場の方に何度もヒアリングをして検証した覚えがあります。
ところが、プロジェクト初期の段階では、Asprovaを一晩回しても処理が終わりません。計画を立てるのにこんなに時間がかかるのでは、困ります。その主な原因は、現場から集めてきたマスタ(基本となるデータ)が不備だったことです。
ー 対策はどのようにしましたか
マスタを整える一方で、計算を簡略にするような工夫をしました。たとえば1作業あたりの空き時間探索時間を短縮して、割り付け効率の向上を図りました。 そして段取りの設定をするのは、段取り時間が30分以上の工程だけに絞りました。さらに複雑だった作業者の設定を簡易化しました。
それからアスプローバ社の今岡さんに相談して、Asprovaの内部で処理が早くなる方法を教えてもらいました。たとえば計画ずみの作業のみを再割付けしていましたが、実績が入っている作業もまとめて再割付けするなどです。
これらによって最終的には2時間程度の処理時間になりました。ここまで半年くらいかかりました。この段階では100点満点で50~60点の計画です。これを出発点に、さらに改善を加え、磨き上げて行きました。
重要な情報は現場から
ー 対顧客で工夫している点は
Asprovaは、現場の情報やマスタがあってのシステムなので、現場の方とのコミュニケーションを最も大事にしています。経験上、Asprova導入は、生産管理やサプライチェーン、調達の部署の発案がきっかけになっていることが多いです。 製造現場としては「なぜ自分たちがやらないといけないのか」「現状のままでいいじゃないか」と考えがちになります。 しかし、要件の主なヒアリング対象は、製造現場の方です。モチベーションが低いと、十分に要件を引き出せなかったり、マスタ作成も思うように進まなかったりします。また、Asprovaをある程度理解してもらわないといけないのに、習熟度も低いままだったりします。
これらは時間が解決してくれる面もありますが、早く進めるカギは、現場の方との円滑なコミュニケーションなのです。重要な情報は現場から出てくることが多いので。
ー 具体例を挙げていただけますか
うまく進められたと感じる顧客の例としてA社があります。プロジェクト発足時からメンバー全員がAsprovaを前向きに検討していただき、早い段階で、Asprovaでできること/できないことへの理解を示してくれました。マスタの作成が予定より1カ月ほど早く進み、試作品の精度向上にもつながりました。導入後も計画パラメタ設定以外の操作は問題なく行えており、うまく使用していただいていると感じます。
一方でうまく進められなかったと感じたのはB社です。リモートのみで週1.5時間ほどの短い打合せということもありましたが、プロジェクトメンバーの「やらされ感」が否めませんでした。メンバーが頻繁に変わり、一からの説明が必要になることもありました。結果としてマスタ作成や要件の抽出が遅れてしまいました。もちろん私たちにも省みる点はありますが。
当然かもしれませんが 、Asprovaを理解していただく、Asprova専任の方を用意していただく、マスタ作成や検証のための時間を十分に確保していただく–ということの重要性を感じました。また、メリットの説明や計画の検証結果を、数値で明示することを心がけています。あたりまえのことでも、それを徹底して行っていくことが重要なのかなと、今は感じています。
ー これからやってみたいことはありますか
Asprovaだけでなく、生産管理全般に幅を広げてみたいですね。入社以来東京勤務ですが、どこでも通用し、求められる技術を身につけたいと思います。
(了)
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コラム編集部
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