【生産管理の段取り改善ガイド】内段取り・外段取りをステップごとに解説

2021.02.05A0 生産管理
効率的な段取り改善

これまで、製造業では1つの製品を多く作る「大量生産」が主流でした。しかし近年では、年齢や性別、地域など顧客ニーズが多様化し、多彩な製品が市場に流通しています。また、季節ごとの需要や流行などに伴って製品のサイクルも早まっており、これらのニーズに応える手段として「多品種少量生産」に取り組む企業が増えています。

製品の仕様や品目が変わると生産ラインを変更する必要がありますが、その間は作業が止まるため、最終的な生産効率が下がってしまう課題があります。そこで重要となるのが、段取り改善です。段取りが適切だと細かなニーズごとに多品種を短納期で生産し、在庫リスクを抱えないようにコントロールできるほか、生産性向上につながります。

今回は、段取りとは何かの基礎知識や重視すべき理由を解説しながら、実際に段取りを改善するための手順をご紹介。生産ラインの業務効率を改善したい、生産管理を最適化したいという方にぜひ参考にしていただきたいページです。

【目次】
■段取りとは
・「段取り八分、仕事二分」
・QCDを意識する
■段取りの種類
・内段取り
・外段取り
■段取りの改善
1.段取り時間の現状を把握する
2.段取り作業を切り分ける
3.改善案を挙げる
4.内段取りの外段取り化
5.内段取りの時間短縮
6.生じている「ムダ」を減らす
■日常的に行える段取り改善
・必要な段取りのピックアップ
・優先順位付けとムダの排除
・マニュアル化する
・最適化された段取りに慣れる
・外段取り化する
■おわりに

段取りとは

段取りとは、物事を行う際の順序や手順をあらかじめ整理し、準備することを指します。

日常生活でもなじみのある言葉で、「物事をスムーズに進めたいなら、事前の段取りからしっかり取り組まなければならない」ということは、多くの人が共感できるのではないでしょうか。

段取りの良し悪しは、生産性に大きな影響を及ぼすのはもちろん、企業の信頼度向上や競争力強化にもつながりますので、製造業においても重要です。

している製品の作業が完了した時点から、次の製品に切り替え、製造が開始できるまでに要する時間(最初の完成品ができあがった時点までという解釈もある)」を指します。

段取り替えの一例としては、金型交換や設備洗浄などがあります。

「段取り八分、仕事二分」

大工や職人の世界では、古くから「段取り八分」という言葉が使われています。これは、段取りが完全に終われば仕事の8割は終わったも同然という意味や、物事が成功するかは段取りの段階で8割が決まるという意味です。実際の作業(仕事)に取り掛かる前に、具体的に仕事を進める手順を決めておけば、それだけ質とスピードが上がります。

製造業においても同じで、確実に時間内に目的を達成する、またはより多くの製品を生産するためには、実務に取りかかる前の段取りが不可欠です。

QCDを意識する

製造現場では、QCDが重視されています。QCDとは、「Quality(品質)・Cost(コスト)・Delivery(納期)」の頭文字を取った言葉で、この3要素を適切に維持・管理できるかが、生産性を高めながら経営を安定させるポイントとなります。品質や費用対効果の低下、納期遅れを招かないためにも、QCDを意識した段取り改善が不可欠です。

生産スケジューラを活用すれば、製造効率の良い段取りの順序を瞬時に導き出すことが可能です。

数千品目にわたる製品数を製造している企業様の導入事例もあり、改善計画に人手が足りない、生産計画の立案に時間がかかるようなケースでも、作業速度が大きく改善しています。

業務の効率化を大きく助ける「生産スケジューラ」の魅力について以下のページをご参照ください。

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段取りの種類

段取りの種類

製造業における段取りには「内段取り(うちだんどり)」と「外段取り(そとだんどり)」の2種類があります。

内段取り

内段取りとは、機械や作業を一旦止めないと作業できない段取りです。例えば、機械を停止しないと部品を交換できない、作業を一旦止めないと確認できない段取り作業を指します。機械や作業の中断は生産性に直結しやすいため、段取り改善では、内段取りから優先的に取り組みます。

外段取り

外段取りとは、ラインや機械設備を稼働させたまま、または作業者が作業を続けたまま行える段取りです。例えば、型や刃具、治具など道具の準備や資材の運搬、後片付けなどが挙げられます。

内段取りは生産性に直結しますが、外段取りは生産性に直接的に影響を与えることはありません。そのため、段取り改善では内段取りの「外段取り化」ができるかを考え、移管するのも対策の一つとなります。

段取りの改善

段取りの基礎や重要性を理解できたところで、さっそく段取り改善に取り組んでいきましょう。

ここでは、段取り改善をステップごとに詳しく解説します。

1.段取り時間の現状を把握する

まずは、段取りに使っている時間の現状を把握しましょう。作業者の就業時間のうち、段取り作業に占めている時間を割り出します。

次に、各工程で実際にかかっている段取り時間の調査を行います。段取り時間を把握すると、特に時間がかかっている作業を発見できるようになり、なぜ時間がかかっているかの原因究明や課題抽出がしやすくなります。

2.段取り作業を切り分ける

では、具体的に段取り改善ステップをみていきましょう。

段取り改善では生産性に直結する内段取りのほうを優先的に行います。

まずは、段取り作業の全体をリストアップし、機械設備や作業を止めて行う「内段取り」と作業を止めずに行える「外段取り」に分けていきます。段取りの切り分けは、器具を探している時間といった、「ムダな時間」の発見にもつながります。ムダになっている作業も3つめの区分けとして記録しておきます。

3.改善案を挙げる

内段取りの改善案(例)

  • 作業者1人で行っていた段取りを複数名に変更する
  • 属人化を減らし、誰にでもできる段取りに標準化する
  • 作業を簡易化する
  • 内段取りの教育や訓練を標準化する
  • 外段取り化できないか検討する

外段取りの改善案(例)

  • 金型や治具、材料などを機械の近くに準備しておく
  • 作業手順を見直して時間短縮を図る

「ムダ」の改善案(例)

  • 2S(整理・整頓)の徹底
  • 作業場の導線を見直す
  • 作業姿勢や環境を改善してムダを減らせないか

4.内段取りの外段取り化

内段取りは、機械設備もしくは作業者の稼働を止めないと実施できないため、停止している間は付加価値が生まれません。機械や作業者が稼働している状態で段取りを行う、つまり、これまで内段取りで行っていた作業を外段取り化できれば、生産性を落とさずに段取りを進めることができます。

内段取りの外段取り化は簡単ではありませんが、新しいテクノロジーや手法を使えば不可能ではありません。

外段取り化の改善案がコストをかけずに行えるか、ある程度のコストを要するかを見定めて、まずはお金をかけずにできることから始めていきましょう。

5.内段取りの時間短縮

内段取りの改善案で挙げた「作業者1人で行っていた段取りを複数名に変更する」、「属人化を減らし、誰にでもできる段取りに標準化する」などは、内段取りの時間短縮を可能にする手段です。また、内段取りの教育や訓練の標準化も、作業効率アップや属人化の防止につながります。

「この社員でないと内段取りができない」、「内段取りが複雑でわかりにくい」といった課題を抱えている場合は、標準化や平易化を実施し、脱属人化を図ることで効率化や安定稼働につながります。

「段取りのノウハウが特定の社員に集約し、属人化している」

「生産工程が複雑で前後工程のつながりがわかりにくい」 など担当者のお悩みを解決できるのが生産スケジューラです。段取り改善に課題を抱える現場での生産性向上を実現しており、多数の導入実績と蓄積されたノウハウがシステムに反映されています。生産スケジューラについて詳しく知りたい方はこちら。

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6.生じている「ムダ」を減らす

次に、段取りで生じているムダを徹底的に減らしていきましょう。例えば、「器具を探すのに時間がかかっている」といったムダな時間は、2S(整理・整頓)の徹底によって改善できます。置き場所をルール化する、保管場所を整理する、ラベリングして見つけやすくするなどの方法があります。

段取りでよく使う器具はキット化して、いつでもすぐに使える状態にしておくのも効果的です。移動や運搬に無駄な時間がかかっている場合は、配置場所や導線を見直してみましょう。

段取り改善をしていると、内段取りからも外段取りからも廃止できる作業を発見できる場合があります。装置や自動化の進歩によって、段取り替え時にそのままの状態で問題なく稼働できるケースが存在するのです。「やめる」ことを見つけるだけでも、大幅なムダ時間の削減につながります。

日常的に行える段取り改善

日常的に行っている細かな作業や仕事の進め方を見直すだけでも、現場全体の段取り改善につながる場合があります。

全社で段取り改善に取り組むのはもちろんベストではありますが、製造現場が大規模ですぐに実施するのが難しい場合は、各工程チームや社員1人ひとりなど、小規模な範囲でできることから始めてはいかがでしょうか。

ここでは、日常的に行える段取り改善についてご紹介します。

必要な段取りのピックアップ

段取りを個々のやり方に任せていると、作業者によって能力に差が出やすくなりますし、抜け漏れやミスが起こりやすくなります。必要な段取りをピックアップして標準化し、段取りの品質に差が出ないようにしましょう。

優先順位付けとムダの排除

作業順序が特に決まっておらず、段取りの進行を個々に任せていると、作業者によって時間にばらつきが出やすくなってしまいます。

初めにやること、必ず行うことなど、作業内容に優先順位をつけて標準化しましょう。また、作業や移動、待ち時間などのムダの排除も重要です。これらのムダが生じていないかを個々やチーム単位でチェックして、ムダをなくすにはどうすれば良いか、仕事の方法を見直します。

マニュアル化する

段取りをマニュアル化しておくと、誰もが作業のムダを省きながら優先順位ややるべきことを把握し、生産性を意識して作業を進めることができます。新しい人員が配置された際には、教える手間が省けるのもメリットです。

また、段取り改善前と実施後の結果を比較してブラッシュアップにつなげる、他チームへの共有で全体の効率化を図れるなどさまざまな場面で役立ちます。

最適化された段取りに慣れる

最適化した段取りが共有された際、事前に新しいやり方に慣れるトレーニングをしておけば、本番の稼働時間ですぐに取り掛かることができます。段取り改善でより良い案を導くだけでなく、チーム全員がいち早く取り組めるようすぐに共有することも大切です。

外段取り化する

内段取りの外段取り化は、大がかりな設備や機械を導入しなくても、個々で意識的に取り組めば行えるケースも存在します。

例えば、スケジュールの立案や事前のスケジュール確認です。時間意識が高まり、時間内に完了すべき項目がわかるので作業効率や生産性アップにつながります。1日の作業の流れを事前に把握しておくだけでも効果があるので、空き時間や準備時間に確認する習慣をつけましょう。

生産スケジューラなら細かな工程を可視化できるため、個々やチーム単位での時間に対する改善意識が高まります。

日程計画の立案も容易で扱いやすく、ベテランの従業員の経験や勘を頼りに作成してきたスケジュールも自動で作成できるため属人化を防ぎます。 生産スケジューラについてさらに詳しく知りたいという方はこちらのページを参照ください。

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おわりに

製造業における段取りは、生産性に大きな影響を及ぼすのはもちろん、企業の信頼性や競争力にもつながる重要な作業項目です。段取り改善に常に意識的に取り組み、少しずつ積み重ねていくことがより生産性の高い現場を生み出します。

特に、内段取りは生産性に直結するため、課題を感じていたら早急に改善に取り組みましょう。大規模な設備導入によって改善されるケースもありますが、コストをかけなくても実施できることがあるはずです。まずは、段取り作業で発生する「ムダ」を見つけて、どうすればなくせるかを考えることから始めてみてください。

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タグ : 段取り時間