【オフィス家具・パーテーションのAI生産スケジューリング 1】基礎知識 ~ 塗装の色替え洗浄が、工場全体の生産量を左右する

2026.07.28A1:生産計画・スケジューリング , S08:金型や治具を使う工程で納期遅れと段取りを最少化したい

「良い製品を、速く、安く」――どの工場もそう願います。ですが現場では、納期遅れをなくそうとすると段取り替えが増え、段取り替えを減らそうとすると納期に間に合わない、という板ばさみが起こります。この納期遅れと段取り時間を同時に小さくすることが、工場全体の生産効率を大きく左右します。ところが、品番が数千に及ぶ現場でこの両方を人手で最適に解くのは、とても難しいのが実情です。

この難しい最適化を解ける可能性があるのが、AI生産スケジューラです。このシリーズでは、パーテーションの生産計画づくりをAI生産スケジューラで行う考え方を、全5回で紹介します。基礎知識から始め、課題・解決策・ROI試算・導入へと順に進みます。第1回の今回は、まずパーテーションと典型的な工場を知ることから始めます。

1. オフィス家具・パーテーション(間仕切りパネル)とは何か

オフィス空間をつくる鋼製の製品には、パーテーション(間仕切りパネル)と、スチールデスクやキャビネットなどのオフィス家具があります。どちらも鋼板を曲げ・溶接・塗装して作り、同じ工場・同じ工程で流れることが多い仲間です。このシリーズでは代表としてパーテーションを中心に見ていきます(以下、パーテーションと呼びます)。パーテーションは、オフィスや工場、店舗などの空間を仕切る板状の製品で、壁のように区切りながら移動やレイアウト変更ができる点が固定壁との違いです。主な構成部品は、パネル本体(鋼板やアルミ板などの表面材と芯材)、フレーム(パネルを支える枠材)、ジョイント(パネル同士をつなぐ部品)、ドアや窓のユニットです。

設置する建物ごとに寸法・仕様・色が異なるため、多品種少量生産になりやすいのが特徴です。生産の中身は、あらかじめ数量が読める定番品と、物件ごとに図面から起こす特注品が入り混じる混流生産(いろいろな種類を同じラインに混ぜて流す生産)です。とくに特注品は建物の工期に直結するため、納期厳守が絶対条件になります。

2. 典型的な工場 (工程と設備)

ここでは、年間生産額およそ20億円の中規模のパーテーション工場を想定します。代表的な工程と設備は次の一覧のとおりで、前半は板金加工の工程、後半は塗装と組立・検査の工程に分かれます。このうち、このコラムで生産計画(スケジューリング)の対象とするのは、ボトルネックの塗装を中心に、溶接組立・検査梱包を加えた3工程です。

工程機械台数機械単価時間単価作業者段取り条件段取り時間(1回)
板金プレスNCタレットパンチ・ベンダ6台1,500-4,000万円3,600円/時間2-4名/ライン金型・板厚切替15-40分
溶接組立溶接ロボット・治具6台800-2,500万円3,400円/時間4-8名治具・図面切替20-60分
塗装粉体塗装ライン4台3,000-8,000万円4,000円/時間3-6名色替え(洗浄含む)120-240分
検査梱包検査台・梱包機4台500-2,000万円3,800円/時間3-6名製品種・梱包仕様切替10-30分

※ 業界一般の情報に基づく架空の代表モデルです。台数・単価・段取り時間などの数値は業界一般値による仮置きです。

3. 現場・生産管理のポイント

なぜ塗装工程がボトルネックになるのか ―― 色替え洗浄の正体

複数の工程のなかで最も処理能力が低く、生産全体の速さ(スループット=単位時間あたりの生産量)を決めてしまう工程をボトルネックと呼びます。パーテーションでは塗装工程がボトルネックになりやすい工程です。全ての製品が必ず塗装ラインを通るうえ、色を切り替えるたびにライン全体の洗浄・清掃が必要になり、1回の段取りに長い時間(本モデルでは最大240分)がかかるためです。この段取りで止まる時間が積み上がって、実際に使える生産能力が下がってしまいます。

この洗浄がなぜ長引くのかというと、色の組み合わせに理由があります。パーテーションの塗装では、白やアイボリーなどの明るい色と、濃いグレーやブラックなどの濃い色を1本のラインで塗り分けます。ここで大事なのは、洗浄の手間は切り替える向きによって大きく変わるという点です。濃い色から明るい色へ切り替えるときは、前の濃い色の粉がわずかでも残ると白地に色ムラや点として目立つため、ライン全体を徹底的に洗う必要があり、時間がかかります。逆に明るい色から濃い色へ切り替えるときは、多少の残りが濃い色に埋もれて目立たないため、洗浄は比較的軽く済みます。この濃い色から明るい色への切り替えが、段取り時間の大半を生みます。なお、この色替え段取りの悩みはパーテーションやオフィス家具に限りません。鋼製ドア・シャッター・配電盤の筐体など、多色を塗り分ける板金加工の工場に共通する課題です。

意外に思えるのは溶接組立です。人手中心で一見ボトルネックに見えますが、作業者を厚く配置できるため能力に余裕があり、ここは生産の速さを決める工程にはなりにくいのが実情です。ボトルネックは人手か自動かではなく、能力の余裕がどこで先に尽きるかで決まります。

生産管理の課題は

多品種少量生産では品番の切替えが頻繁に起こります。品番が変わるたびに、設備を止めて金型や治具を替えたり、塗装の色を替えたりする作業が必要で、この作業とそれにかかる時間を段取り(段取り時間)と呼びます。つまり、切替えが起こるほど段取り時間が積み上がります。この段取り時間をどう抑えるか、そして頻繁に変わる納期にどう追従するかが、生産管理の中心的な課題です。詳しくは次回、4つの課題として整理します。

4. まとめ

パーテーション工場では、設備の速さそのものより、段取りで止まる時間と計画を立て直す時間が利益を確実に減らしています。次回は、この見えにくい損失がどんな課題として現れるかを4つに整理します。

あなたの工場で、いちばん止まっている時間が長いのはどの工程でしょうか。

タグ : AI生産スケジューラ パーテーション製造工程 ボトルネック工程 多品種少量 板金加工 段取り時間削減 混流生産 溶接組立 生産スケジューリング 粉体塗装 色替え洗浄