【オフィス家具・パーテーションのAI生産スケジューリング 2】課題 ~ 段取り・在庫・納期遅延、利益を静かに削る4つの課題

2026.07.28A1:生産計画・スケジューリング , S08:金型や治具を使う工程で納期遅れと段取りを最少化したい

全5回の2回目です。前回は工場の全体像を押さえました。今回は、そこで触れた価値を生まない時間が、具体的にどんな課題として現れるかを掘り下げます。ここで挙げる課題は、第4回の金額試算とそのまま対応します。

想定する工場

対象は、第1回で見た中規模のパーテーション工場です。生産計画の対象は、ボトルネックの塗装を中心とする3工程でした。数量の読める定番品と物件ごとの特注品が同じラインに混ざる混流生産で、品番数が多いのが特徴です。とくに特注品は建物の工期に直結するため納期を動かせず、1日の遅れが建設現場全体の工程に響きます。

この工場では、納期を守ろうとするほど残業と在庫がふくらむ悪循環が起きています。まずは現場がとる備えを見て、それがどう悪循環につながるかをたどります。

納期を守るための二つの備え

先に見たとおり、特注品の納期は動かせません。定番品なら多少前後させても吸収できますが、特注品はそうはいかず、現場は遅らせまいと必死になります。

そこで現場は、遅れに備えて二つの余裕を持ちます。一つは、定番品の安全在庫です。万一に備えて多めに在庫を持ちます。もう一つは、特注品の余裕日数です。特注品は物件専用で在庫にできないので、代わりに納期までの余裕日数を多めにとり、前倒しで着手します。どちらも念のための備えですが、この上乗せが積み重なると、必要以上の在庫を抱える原因になります(詳しくは課題3)。

特急対応がまねく悪循環

備えをしても間に合わないと、現場はもう一つの手に頼ります。特急対応です。納期が迫ったオーダを見つけては、順番を飛ばして先に流します。

ここに落とし穴があります。あるオーダを特急対応で先に進めると、後回しにされたオーダの方が遅れます。その遅れがまた新たな特急対応を呼び、現場は次々と順番を組み替え続けることになります。特急対応がさらに特急対応を呼ぶ――これが悪循環の正体です。

しかも順番を変えるたびに、塗装の色替えや治具の段取り替えが発生します。特急対応が増えるほど段取り時間はふくらみ、設備が止まって、実際に使える生産能力が下がっていきます。遅れを防ぐはずの特急対応が、かえって工場全体を遅らせるのです。

4つの課題 ―― 現場が解決したいこと

この悪循環を断つために、現場が解決したい課題は4つあります。段取り・ロットサイズ・在庫・変動対応で、いずれも互いに影響し合っています。順に見ていきます。

課題1. 段取り時間を削減したい

パーテーションの品番は、建物ごとの寸法・仕様・色の組み合わせで爆発的に増えます。品番が多いほど切替が頻繁に起こり、そのたびに金型・治具・塗装色を替える段取りが発生します。とくにボトルネックの塗装では色替えのたびにライン洗浄が必要になり、切替が多いほど段取り時間がふくらんで、設備が止まっている時間そのものが損失になります。ここにパーテーション特有の落とし穴があります。納期順にそのまま流すと、明るい色と濃い色が行ったり来たりして並び、手間のかかる濃い色から明るい色への切り替えが何度も起きてしまうのです。納期を守ろうとするほど洗浄の重い色替えが増える――この板ばさみが、次の課題2につながります。

課題2. 生産ロットサイズを最適化したい

段取りを減らそうと大きなまとまり(大ロット)で作ると、後回しにした品番で納期遅延件数が増えます。逆に納期に合わせて小さく分けて作ると、切替えが増えて段取り時間がふくらみます。品番が多いほどこの板ばさみは深刻になり、人手の計画で最適な答えを出すのは困難です。

課題3. 在庫を削減したい

さきほどの二つの備え(定番品の安全在庫と特注品の前倒し着手)は、いわば早めに・多めにという念のための上乗せです。これが積み重なると、必要以上の在庫を抱え込みます。そこへ工程ごとの速さの違いや早すぎる先行生産が加わると、ボトルネックの塗装の前後にも作りかけの品(仕掛品)がたまります。こうした余分な在庫は、保管場所・管理の手間・お金を圧迫し、在庫額に応じたコストとして毎月出ていきます。

課題4. オーダ変更・設備故障などに迅速に対応したい

顧客が求める数量や仕様は、工期の変更に合わせてたびたび変わります。ところが手作業の計画では、変更のたびに一から組み直すのに時間がかかり、変化に追いつけません。対応が遅れれば納期遅れが起こりやすくなり、慌てて特急対応をすることになります。この対応の遅れが、冒頭で見た悪循環を生みます。だからこそ、変化が起きるたびに計画を素早く組み直すこと(リスケジュール)が欠かせません。この迅速なリスケジュールをいかに実現するかが、悪循環を断つ最大の課題になります。

効率化で減らしたいもの

ここまでの4課題を、次回(第4回)で金額を試算するコストダウン項目に対応づけると、次のように整理できます。この対応を見れば、どの課題がどのコストダウン項目として金額に表れるかが分かります。

減らしたい対象現状で起きていること第4回でのコストダウン項目
計画作成の手間勘に頼る計画の作成・作り直し計画作成人件費
管理業務(督促など)納期回答・進捗確認・特急対応の指示間接人件費
段取り時間多品種の品番切替のたびに設備が停止段取り作業費
資材・電力切替のたびに余計に消費段取りコスト
過剰在庫速度差と先行生産による仕掛滞留在庫保有コスト
設備停止段取り由来で稼働できない時間設備稼働の回復価値

まとめ

次回は、これらの課題を別々に潰すのではなく同時に解くという、発想の転換をご紹介します。

あなたの工場の悪循環は、どの課題から始まっているでしょうか。

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