納期とは?製造業なら知っておきたい納期管理の重要性や具体的な方法を解説
2024.09.09A1:生産計画・スケジューリング納期遅れによる顧客との関係悪化やブランドイメージの低下、コスト増加といった問題に悩む製造現場の方は多いでしょう。納期を守るには、生産計画の最適化が欠かせません。しかし、人手だけでは経験の浅い人材に任せにくく、属人化のリスクもあります。本記事では、納期とはどのようなことを指すのか、納期管理の重要性や具体的な方法について詳しく解説します。
【目次】
■納期とは
■納期を守るメリット
■納期を守らないデメリット
■納期管理の方法
■リードタイムとは?
■リードタイムと納期は何が違う?
■納期が間に合わない場合の対処方法
■納期管理におすすめの方法
■生産スケジューラを活用して納期を守った業務をしよう
納期とは
納期とは「納入期限」の略で、製品を納める期限や返済の期限など、商品やサービスを納めるまでの期限を指します。顧客から要求される「要求納期」と自分たちから提案する「約束納期」の2種類があり、企業の生産体制が効率的に運営しているかを測る指標としても使用されています。納期が決定する要因は以下のとおりです。
- 商品の製造にかかる時間
- 商品の数
- 製造に使う材料の種類
- 発注からの経過時間 など
顧客との信頼性の確保や生産性効率の向上、競争力の維持において、明確な納期設定と遵守は重要です。
納期を守るメリット
納期を守るメリットは以下の3つです。
- 顧客からの信頼を維持できる
- プロジェクトの遅延を防止できる
- 余剰なコストを抑制する
納期を守ることで顧客との信頼関係を強化し、プロジェクトを円滑に進められるだけでなく、コスト面でも無駄を省けます。
顧客からの信頼を維持できる
納期遅れが常態化すると、顧客は企業の信頼性や対応力に疑問を抱き始めるでしょう。その結果、今後の仕事を依頼しにくくなったり、他社への発注を検討したりする可能性が高まります。一方納期を守ることで、顧客から「この企業は約束を守り、仕事を任せても問題がない」という信頼を獲得することが可能です。信頼関係が強固になれば、長期的な取引につながり、安定した収益が見込めるようになります。また、納期厳守は競合他社との差別化にもつながります。同業他社と比べて納期を確実に守れる企業は、顧客から高く評価され、優先的に仕事を依頼されるようになるでしょう。結果として、競争力の向上にもつながるのです。
プロジェクトの遅延を防止できる
納期管理は、顧客に成果物を納品するだけでなく、業者から製品や部品の納入期限も管理する必要があります。もし業者からの納品が遅れれば、プロジェクト全体のスケジュールに影響を及ぼし、顧客への納期に間に合わなくなるリスクがあります。適切に納期管理を行うことで、プロジェクトの進捗状況を常に把握し、計画通りに進められるよう調整することが可能です。これにより、万一の遅延にも早期に対処でき、全体的な業務効率の向上にもつながるでしょう。納期管理を徹底することは、プロジェクトを成功に導くための重要な鍵となるのです。
余剰なコストを抑制する
納期が遅れてしまうと、残業や休日出勤が必要になり、人件費が増加します。さらに、納期に間に合わせるために追加の人員を投入する必要が出てくる場合もあるでしょう。これらの余分なコストが長期間発生し続けると、プロジェクトの収支が圧迫され、最悪の場合は赤字に陥ってしまう可能性があります。納期を守ることは、こうした無駄なコストを抑制し、プロジェクトの採算性を維持するためにも重要です。また、コストを抑えることで、競争力のある価格設定が可能になり、顧客からの受注機会も増えていくでしょう。
納期を守らないデメリット
納期を守らないデメリットは、以下の3つです。
- 顧客との関係が悪化する
- ブランドイメージの低下
- コストが増加する
納期を守らないことで、顧客からの信頼を失うだけでなく、企業のブランドイメージにも悪影響を及ぼします。さらに、納期遅延に伴う追加コストが発生し、収益性が低下するリスクがあるのです。
顧客との関係が悪化する
納期を守らないと、顧客は期待通りに製品やサービスを受け取れません。これにより、顧客は企業に対する信頼を失い、契約解除を検討する可能性があります。さらに、顧客は納期遵守を前提に自社のスケジュールや計画を立てているため、納期遅延は顧客の業務にも大きな影響を及ぼすでしょう。納期遅延が頻発すると、顧客との長期的な関係性が損なわれ、将来的な取引の機会を失ってしまうかもしれません。顧客との信頼関係を維持し、安定的な取引を続けるためには、納期厳守が不可欠なのです。
ブランドイメージの低下
納期を守らない企業は、信頼性や品質に対する姿勢が疑われ、業界内で悪い評判が広がる恐れがあります。特に、納期遅延が常習化している場合、顧客だけでなく、取引先や業界関係者からも信用を失います。悪い評判が広まれば、新規顧客の獲得が困難になり、既存顧客の離反も招きかねません。また、優秀な人材の確保にも影響が出るでしょう。ブランドイメージの低下は、市場での競争力を弱め、長期的な企業成長を阻害する要因となります。一度損なわれたブランドイメージを回復するには、多大な時間と努力が必要です。納期を守ることは、企業の信頼性を高め、ブランドイメージを保護するための重要な取り組みなのです。
コストが増加する
納期遅延が発生すると、その遅れを取り戻すために、生産ラインの調整や輸送手段の変更など、迅速な対応が求められます。これらの対応には、追加の人件費や設備投資が必要となり、コストが増加します。また、納期遅延に伴う顧客からのクレーム対応にも、時間と労力を割かなければなりません。さらに最悪の場合は、顧客からの損害賠償請求や、製品の再生産が必要になることもあるでしょう。これらの追加コストは、企業の収益性に直結します。特に、納期遅延が頻発する企業は、常に追加コストに悩まされ、事業の継続性にも影響が出かねません。納期を守ることは、無駄なコストを削減し、企業の財務健全性を維持するために不可欠なのです。
納期管理の方法
納期管理を適切に行うためには、以下の方法を実践することが有効です。
- 在庫や締切に余裕を持った生産計画の策定
- リードタイムを把握し、短縮化する
- 生産状況の見える化
- 生産管理システムの活用
これらの方法を組み合わせることで、納期遅れのリスクを最小限に抑えつつ、効率的な生産体制を構築できます。
在庫や締切に余裕を持った生産計画の策定
在庫やスケジュールに余裕を持つことで、納期遅れを防げます。また、在庫があれば即座に製造可能で、スケジュールに余裕があればトラブル時も対処できます。生産計画を立てる際は、在庫量や製造工程の所要時間を正確に把握し、予期せぬ事態に備えて適度な余裕を持たせることが重要です。
リードタイムを把握し、短縮化する
各工程の所要日数を確認し、改善の余地を探すことで、業務改善や納期の短縮化が可能になります。たとえば、以下のような効率化が実現すれば負担のかからない納期管理ができます。
- システム導入で事務処理の自動化
- 紙媒体での作業を電子化 など
リードタイムを短縮することで顧客のニーズに、より迅速に対応できるようになり、競争力の向上にもつながります。
生産状況の見える化
納期に関係するトラブルの多くは、社内の生産体制をしっかり把握できていないことが原因といえます。「いま何がどのように動いているか」を把握し、きちんと管理することが納期管理のポイントです。具体的なアクションとして、オペレーションの見直しや業務フローの確認を行います。たとえば、製造業で用いられる5Sや4Mを意識することが有効です。5Sとは、整理・整頓・清掃・清潔・躾を指す言葉で、職場環境の改善と維持を目的とした活動です。4Mとは、人材(Man)、設備(Machine)、材料(Material)、方法(Method)を指し、生産性向上のための重要な要素として管理されます。生産状況を可視化することで、問題点の早期発見と迅速な対応が可能になり、納期遅れのリスクを軽減できます。
生産管理システムの活用
生産管理システムとは、生産計画・原材料の仕入れや製造・在庫数などを製造業務の管理を効率的に行えるシステムのことです。生産管理システムを活用することで、膨大な工程が伴う製造業の仕事をデータ化して定量的な尺度から把握できます。製造工程で負荷がかかっているところの確認と対策を講じることができるため、適切な納期管理に生産管理システムの導入はおすすめです。生産管理システムは、リアルタイムでの在庫管理、生産進捗状況の把握、リードタイムの分析など、納期管理に必要な情報を集約し、可視化できます。これにより、生産計画の最適化や、問題発生時の迅速な対応が可能になります。
リードタイムとは?
リードタイムとは、注文や依頼を受けてから製品やサービスが完成し、顧客に納品されるまでの時間や期間のことです。製造業や流通業界で用いられることが多い言葉で、以下の4種類に分けられます。
- 開発リードタイム:製品の企画・設計から試作品完成までの期間を指す
- 調達リードタイム:原材料や部品の発注から入荷までの期間を指す
- 生産(製造)リードタイム:製造開始から製品完成・出荷までの期間を指す
- 配送リードタイム:製品の出荷から顧客への納品までの期間を指す
これらのリードタイムを短縮することで、顧客への迅速な納品が可能になり、顧客満足度の向上や競争力の強化につながります。
リードタイムと納期は何が違う?
リードタイムと納期は似ていますが、違いがあります。リードタイムは、製品の発注から納品にかかるまでの期間や時間を差し、「何日間」というように、日数を用いて表すものです。リードタイムは、製品の生産や調達に関わる社内のプロセスに焦点を当てています。一方納期は、注文された商品の納品期限を差し「何月何日」と具体的な日にちです。納期は、顧客との約束である納品日に重点を置いています。つまり、リードタイムは社内プロセスの効率性を測る指標であり、納期は顧客への約束を果たすための重要な期日なのです。リードタイムの短縮は、納期を早めることにつながります。また、リードタイムの把握は、適切な納期設定にも役立ちます。リードタイムと納期の両方を理解し、管理することが、効果的な生産管理と顧客満足度の向上に不可欠です。
納期が間に合わない場合の対処方法
納期が間に合わない場合の対処方法は、以下の4つです。
- 残業でカバーする
- リソースの割り当てを見直す
- 作業人員を追加する
- そもそも納期に遅れないために
納期が間に合わない場合の対処方法を理解しておくことで、万一の状況に備えられます。また、これらの対処方法を適切に組み合わせることで、納期遅延のリスクを最小限に抑えられるでしょう。
残業でカバーする
残業時間を活用することで、全体の遅れを取り戻せます。これにより新しい作業員を補充するよりもコストは抑えられます。しかし、長期間になると作業員の負担も大きくなるため、序盤の遅延カバー対策としては不向きです。工程序盤に遅延が発覚した場合は、追加で作業員を補充することがおすすめです。残業を指示する場合は、法定労働時間の把握や作業員の体調管理もしっかり行うことが大切です。
リソースの割り当てを見直す
後工程に影響を与える重要な工程は、業務内容を熟知している人員を割り当てます。作業の遅れが発生したら、後工程の人員をヘルプに出したり、別工程に回したりして手空きを発生させない環境づくりをしましょう。これにより、全体的な作業効率を維持し、遅延の拡大を防げます。
作業人員を追加する
人員を増やすことで、プロジェクトの作業効率を上げられます。ただし、単純に新しい人員を追加するのではなく、追加コストに見合った効果が見込めるか事前に確認することが重要です。たとえば、1人当たり20日で完了する作業を5人で行う場合、4日以内で完遂するなら人員追加の判断は適切ですが、5日以上かかるようなら判断を見直す必要があります。また、人員を追加するに至った原因を特定し、改善策を立てて次に活かすことが重要です。
<h3>そもそも納期に遅れないために納期に遅れないためには、生産スケジューラ AsprovaのSolverオプションの活用が有効です。Solverオプションでは、段取り時間の短縮を実現するスケジューリングが可能です。この機能を使うことで、各工程の段取りを効率的に行い、無駄な時間を削減できます。これにより、作業の前倒しや調整が自動で行われ、スケジュール全体の精度が向上します。従来、人手での調整が必要だった作業も、Solverを使えば高速かつ詳細に実行可能です。結果として、納期遅延のリスクを大幅に減らすことができるのです。
納期管理におすすめの方法
納期管理におすすめの方法は、以下の6つです。
- 生産計画の作成
- 進捗管理
- 在庫管理
- 工程管理
- 品質管理
- コミュニケーションと協力
これらの方法を適切に組み合わせることで、納期遅延のリスクを最小限に抑えつつ、効率的な生産体制を構築できます。
生産計画の作成
生産計画には、長期的な計画である「マスタースケジュール」と、日々の詳細な計画である「詳細スケジュール」があります。マスタースケジュールでは、需要予測、資材調達計画、設備のキャパシティ計画などを考慮し、全体の生産目標を設定します。詳細スケジュールでは、実際の作業順序やタイムラインと各工程のスケジュールを設定し、生産の詳細な実行計画を立てるのです。
進捗管理
生産現場の進捗をリアルタイムで監視し、計画通りに進んでいるかを確認することが重要です。MES(製造実行システム)などのツールを使用すると、リアルタイムでの進捗管理が効果的に行えます。また、定期的に進捗状況を報告し、計画からの逸脱がないかを確認します。異常が発生した場合は、即座に対応策を講じることが求められます。
在庫管理
在庫を最適なレベルに維持し、過剰在庫や欠品を防ぐことが重要です。JIT(ジャストインタイム)方式を導入することで、必要な時に必要な量だけを調達できます。また、予測不能な需要変動に対応するために、安全在庫を設定し、納期遅延のリスクを軽減します。
工程管理
生産ラインのボトルネックを特定し、そこにリソースを集中させることで全体の生産効率を向上させ、納期を守りやすくなります。また、各作業の標準手順を確立し、効率的かつ一貫した品質での生産を実現することも重要です。
品質管理
統計工程管理(SPC)を用いて、生産プロセスの安定性と品質を維持します。高品質な製品を生産することで、再作業や返品を防ぎ、納期を確実に守れます。
コミュニケーションと協力
生産、購買、物流など各部門が密に連携し、情報をチームで共有することで、納期遵守のための迅速な対応が可能になります。また、サプライヤーと緊密に連携し、必要な資材をタイムリーに供給してもらうことも重要です。これらの方法を適切に組み合わせ、継続的に改善していくことが、効果的な納期管理につながります。さらに、生産スケジューラや在庫管理システムなどのツールを活用することで、より高度な納期管理が実現できるでしょう。
生産スケジューラを活用して納期を守った業務をしよう
納期遅れを防ぐには、生産計画の最適化だけでなく、納期管理の「見える化」も必要です。効率の良い生産計画を作成するには、常に現状を把握できる状態をつくり、人員や設備などの資源を適切に活用するといった対策が重要になります。しかし、これらを人の手で行うとなると、経験が浅い人材には任せにくく、豊富な知識を持つ人材の勘に頼りきりになってしまうでしょう。そこで、生産スケジューラを使って生産計画を自動化することをおすすめします。生産スケジューラを活用することで、属人化を防ぎつつ、現場の機動力を上げる生産スケジューリングが可能になります。生産スケジューラは、納期と同時に考慮が必要な課題にも対応可能です。たとえば、製品を早く作りすぎると、過剰在庫や製品の置き場がなくなるなど、収益を圧迫する要因となります。納期の順守は、生産効率の向上と相反することになりがちです。また、業種によって納期に対する考え方は異なり、数量が決まっていない場合や納期の頻繁な変更、製品需要の変動、原材料供給の季節変動なども考慮しなければなりません。生産スケジューラは、これらの複雑な要因を考慮し、最適な生産計画を立案することで、納期遵守と効率的な生産を実現するのです。納期管理に課題を感じているなら、ぜひ生産スケジューラの活用を検討してみてください。生産スケジューラ導入によって具体的にどのような業務改善が実現したのかは、こちらのページをご確認ください。
コラム編集部
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