生産計画とは?生産計画の定義や種類、計画の立て方をわかりやすく解説

2020.11.30A0 生産管理 , A1:生産計画・スケジューリング , S7:基準生産計画(MPS)を最適化したい
生産計画

製造業の業務サイクルは、取引先との契約内容に合わせて製品を製造し、出荷して売上にするのが基本です。

より売上をアップするためには、品質維持はもちろん効率的に業務サイクルを循環させる必要があり、それぞれの工程でいかに業務を最適化できるかが問われます。

製品の品質を維持しつつ業務工程を最適化するためには、入念な計画を立てておき、計画に基づいた業務管理やコントロールが必要なのです。

このとき、最適化のポイントとなるのが「生産計画」です。今回は、生産計画とは何かの基礎知識にふれながら、効率的な生産計画の立て方、知っておきたい注意点について詳しく解説しています。

【目次】
■生産計画とは何か?

■生産計画の種類
・押し出し方式
・引っ張り方式
■生産計画を立てるには
・生産計画(日程計画の分類)
・生産計画の効率的な立て方
■効率的な計画に必要な要素とは
・4Mの管理
・バッファの設定
・生産管理システムの導入
■ツールやシステムを活用し得られるメリット
・業務効率化
・生産性・在庫管理の精度向上
・人的ミスの削減
■生産計画を立てるうえでの注意点
■おわりに

生産計画とはなにか?

生産計画とは

生産計画は、広く言えば「生産に関するすべての計画」です。在庫計画や生産日程、出荷、生産能力などの計画も含まれているので、大きなくくりで言うと経営計画の一部となります。

日本工業規格(JIS)による生産計画の定義では、「生産量と生産時期に関する計画」とされています。

これは、どの製品をどれだけ生産するかを決めるために、販売計画や受注情報、製品の原価、生産能力、納期などを加味して計画する意が示されており、製造業における生産計画では、このように狭義の意味で用いられるケースが一般的です。

わかりやすく言うと、以下を決めることが生産計画と言えます。

  • どの製品を
  • どの時期に
  • どれだけの量
  • いつまでに生産するか
  • いつ出荷するか

生産計画では、製造から出荷に至るまでの日程を対象に計画を立て、それをもとに資金計画や人事計画を決めていきます。

これまでの生産情報や販売状況を分析して、これから生産する製品の原材料や調達すべき部品などを見極めます。そして、受注情報に基づいて生産日程や出荷スケジュールを決め、それに合わせた生産を実施します。

生産計画が適切であれば、材料不足による生産のストップを防いだり、過剰在庫などの無駄を削減することも可能です。

過去の実績をもとに計画を立てた場合、実際の生産や運用が予想通りに進むとは限りません。

市場の動向や納期の変更など、将来のことは誰にも予測できないからです。不測の事態や予期せぬトラブルが起きた際にも柔軟に対応し、生産を維持できるかまでも考慮したうえで生産計画を立てることが重要です。

製造の工程では、より具体的な実施計画を立案し製造現場での進捗や作業プロセスを計画・管理していくことが必要になります。

例えば、生産の順序を決める、作業ごとの人員配置を決めるなどがあたります。1日の稼働時間や生産能力、工程ごとの進捗を確認しながら、より的確な指示を出し、策定した生産計画どおりに進めるのが製造計画です。

近年では、製造業務のDX化によってさまざまな業務工程が自動化し、製造ライン全体の効率化が推進されています。

生産計画の種類

生産計画は、大きく分けて「押し出し方式」と「引っ張り方式」の2種類にわかれます。

押し出し方式(PUSH型)

押し出し方式とは、まず生産計画を立て、生産計画に基づいて「各工程」が生産して「後工程」に引き渡す方法です。

生産計画通りに業務が進行できる利点はありますが、予期せぬ変更やトラブルに弱いため、それを補うために余分な在庫を抱えやすくなるというリスクはあります。

引っ張り方式(PULL型)

引っ張り方式とは、商品量や納期の工程を生産工程の下流側から上流側、つまり、買い手側から生産側に向けて計画していく方法です。

顧客からの受注数や納期に合わせて生産計画を立てるため、過剰在庫を抱えにくいメリットがあります。

押し出し方式(PUSH型)と引っ張り方式(PULL型)について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

 

生産計画を立てるには

生産計画の立て方

生産計画を立てる際に用いられるのが、日程を基準にした計画策定です。ここでは、生産計画の日程分類ごとの計画方法と、より効率的に生産計画を立てるためのツールやシステムについてご紹介します。

生産計画(日程計画の分類)

生産計画は、「大日程計画」、「中日程計画」、「小日程計画」の3つに分けて行います。これにより、生産計画の大きな流れを、より細かなアクションに落とし込めるようになります。

大日程計画

大日程計画とは、6ヶ月~1年間(または数年)の生産計画です。

過去の受注実績や納品量などをもとに、それまでの受注量や納品量を予測し、設備投資計画や人員計画などを立てていきます。1年後を見据え、既存製品の改良や新製品の開発を計画するのも、大日程計画の一部に含まれます。

中日程計画

1ヶ月~6ヶ月の生産計画が中日程計画です。受注した内容をもとに、生産量や生産ペースを計画していきます。

業務に追加や変化などがあれば、計画に細かな変更や調整を加えることも多く、毎週~毎月のペースで見直しを進めます。製造現場のシフトといった中期的な人員配置や月別の生産計画、必要となる原材料や部品の調達を計画するのが一般的です。

小日程計画

小日程計画は、1週間~1ヶ月間の短期スパンを対象にした生産計画です。毎日もしくは毎週のペースでどの作業をするかを決定し、いつまでに作業を完了するかなどを細かく決めていきます。三種類の中で最も複雑化している計画です。

効率的な製造指示を出す必要があるため、計画を立てる側には高度な知識や経験も求められます。

※大日程計画・中日程計画・小日程計画の立て方について、詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

生産計画の効率的な立て方

生産計画をより効率的に立てたいなら、便利なツールを活用するのがおすすめです。

ここでは、生産計画に活用できるツールについてまとめました。それぞれの特徴やできることを把握して、現状に合ったツールやがあるかをチェックしてみてください。

ツール1 PERT図

PERT図とは、業務の流れや業務にかかる時間をフローチャート図にして、プロジェクトや複雑な業務のスケジュールを管理する手法です。

大規模なプロジェクトや、全体のつながりを把握するのに向いています。

PERT図を活用すると、プロジェクトの中でどれが重要な工程かを確認でき、優先事項を把握しながらスケジュールが作成できます。また、各業務工程にかかる時間や日数がひと目でわかるため、進捗状況を管理しやすくなります。

ツール2 ガントチャート

ガントチャートは横軸に時系列、縦軸に作業計画を整理して棒状のチャートで表します。所要時間や進捗状況を棒の長さで確認できるので視覚的に分かりやすいのが特徴です。プロジェクトのスケジュール管理でよく使われるのがガントチャートです。

いつからいつまでに、誰がどの業務をやるのかを視覚化できるため、スケジュールを計画的に進めやすくなるでしょう。また、どの業務を誰がいつまでに完了すべきかをメンバー間で共有できるため、全体の進捗状況がわかりやすく、各自がスケジュールに沿った行動がしやすくなります。

生産スケジューラを活用すれば、これまでベテラン従業員の経験や勘を頼りに表計算ソフトで作成してきた生産計画を自動化できます。スケジュールの精度を高めたい、生産計画の業務負担を軽減してコア業務に集中したいという方はぜひ生産スケジューラの導入を検討してみてください。

こちらのページでは、「生産スケジューラ」について分かりやすく解説しています。少しでもご興味のある方は、まずはこちらをご確認ください。

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効率的な計画に必要な要素とは

生産計画の立案で重要なのは、これから生ずるかもしれないさまざまなリスクにどう対処するかです。製造現場では、はじめに決めた計画がすべてその通りに進むとは限りません。在庫や納期、人的要因、市場の動向や顧客ニーズの変化など、各方面で変更があった際の計画の見直しはプロジェクト全体の成果だけでなく会社の将来性にも影響を及ぼしかねません。

プロジェクトを管理しながら効率的に課題や改善点を見出していく方法には、図式やチャートなどのツールを用いる他に、システムの導入も効果的です。

4Mの管理

生産現場で適切な品質管理業務を行うには、「Man(人)」、「Machine(機械)」、「Method(方法)」、「Material(材料)」の4要素が重要とされており、4Mと呼ばれます。 これら4つがいつ(いつまでに)、どのくらい必要になるかを明確にし、計画的に準備できるかが大切です。

  • Man(人)… 必要な人員数や工数の把握など
  • Machine(機械)… 製造設備やライン、生産タイミング、稼働時間など
  • Method(方法)… 作業手順や順番、機械設備操作方法など
  • Material(材料)… 原材料や部品の種類・数量・規格など

バッファの設定

バッファとは、ビジネスにおける余裕のことを言います。製造設備に不具合が起きたり市場動向やニーズに変動が起きたり、または人員が急に欠如したりと、生産計画には予測できない事態が起こるものです。

これらに備えて在庫や納期に余裕を持たせる、不足分を補えるだけの施設や人的リソースを確保しておくなど、バッファを設定しておくようにしましょう。

生産管理システムの導入

生産管理システムとは、さまざまな業務工程を一元的に管理して、生産管理全体の効率化を図るためのシステムです。一般的に生産計画や調達計画、在庫管理、工程管理や原価管理などが可能です。中には機能追加ができる拡張性の高いものもあり自社に合ったシステムを構築することも可能です。

生産に関わるあらゆる情報を一括で管理することができるので、在庫削減や業務効率向上、生産性向上にもつながります。

また属人化するリスクを防ぐことができ、多くの課題を解決するソリューションとして利用されています。

ツールやシステムを活用し得られるメリット

生産計画において必要なのは、ボトルネックとなる資源を最大活用して、必要な時に必要な数を供給することです。

生産計画を最適化できれば、製造リードタイムの削減をはじめ、リスクへの柔軟な対応やスピーディで的確な対応ができるようになり、競争力の強化にもつながります。

次に、ツールやシステムを使用して生産計画を最適化した結果、得られるメリットについて解説します。

業務効率化

非効率な工程や、改善が必要な工程が可視化され明確になるため、そこに改善策を打ち出せます。生産フローやプロセスから改善点を見出せるのはもちろん、部署を横断してツールを利用すれば、他部署や会社全体で連携がとりやすく余剰工数の削減にもつながります。

生産性・在庫管理の精度向上

過去の生産実績やデータを正確に分析し反映できるため、適切な生産計画が立てられるようになり、生産性の向上につながります。

在庫状態や生産状況も可視化できるため、生産過剰や生産不足などの頻度も低減できるでしょう。

余剰在庫などを抱えるリスクも回避できるので、在庫量や在庫金額の削減にもつながります。

さらに、最適な在庫管理によって材料を調達するタイミングもわかり、部材の欠品も防止できるため、納期短縮も目指せます。

人的ミスの削減

スケジュール立案が手作業の現場では、人的ミスや遅延が生じるだけでなく急な注文への対応も困難です。また、スケジュール立案者が各自で異なる工程管理や在庫管理をしていた場合、経験の差によって業務の属人化が進んでしまうことも考えられます。

生産管理システムを導入すれば、複数人で作業を行っても、入力したデータがリアルタイムで集約・更新されるため、全員が工程や在庫状況などを正確に把握できるようになります。

生産計画を立てる上での注意点

生産計画を細分化し、チャートやツール、システムなどを導入して最適化した方が良い理由は、現場では常にさまざまな課題が生じるためです。

例えば、限られた人員と納期で多くの製品を作らなくてはならないケースでは、生産体制に負荷がかかります。滞りなく生産を進めるための見直しや調整が必要です。

また、クライアントから急に納期の変更を依頼されたり、品質に問題が起きたりするかもしれません。ある程度バッファを持たせておくことで、余裕のある対応ができるようになるでしょう。

生産計画では、販売計画をはじめとし、在庫や購買管理、人員計画など、各工程の計画を鑑み、それぞれをうまく調整しながら進めていけるかが重要です。過去のデータとも照らし合わせながらそれぞれの工程の課題を見つけ、問題が起きた際にも柔軟に対応できるよう対策を立てましょう。

生産スケジューラを活用すれば、これまでベテラン従業員の経験や勘を頼りに表計算ソフトで作成してきた生産計画を自動化できます。スケジュールの精度を高めたい、生産計画の業務負担を軽減してコア業務に集中したいという方はぜひ生産スケジューラの導入を検討してみてください。

こちらのページでは、「生産スケジューラ」について分かりやすく解説しています。少しでもご興味のある方は、まずはこちらをご確認ください。

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おわりに

生産計画を立てるうえで大切なのは、生産現場で起こりえる課題をいち早く発見し、迅速に対処できるよう体制を整えておけるかどうかです。計画をこまめに見直しながら調整や改善を重ねていくことで、生産計画をより効率よく立案できるようになります。 チャートやフロー図、生産管理システムなど、さまざまなツールを活用して、最適な方法を見つけてみてください。

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タグ : 生産計画 生産計画立て方