複雑な食品工場の問題を解決~重岡将嘉さんに聞く

2023.05.31X2:販売パートナーインタビュー

 株式会社アイキューブデジタルのエンジニア重岡将嘉(しげおか・まさよし)さんに、食品製造業の事例を中心に、生産スケジューラAsprovaの導入について聞きました。ややこしい制約条件を、どのようにクリアしていったのでしょうか。

ー アイキューブデジタルについて教えてください

 産業用ロボットなどメカトロニクス製品を提供している安川電機のグループ企業で、北九州に本社があります。これまで電子機器や鉄鋼業の組立・加工系ほか幅広い業種のお客さまに、Asprovaを導入しています。弊社は製造実行システム(MES)を扱っており、スケジューラはその重要な構成要素です。最近は食品系への導入が続いていて、私の仕事もそちら方面が多くなっています。

消費期限や洗浄が制約に

ー 食品の製造には独特の難しさがあると聞きます

 ご紹介するのは液体食品系を製造する工場での事例です。お客さまからは、複雑に前提条件が絡み合う製品群の生産調整ができる仕組みや、短時間で最適な組み方を支援できるシステム構築が要求されました。そのため、多機能、高速割付ができるAsprovaが選ばれました。Asprova導入前は、エクセルで計画を作っていたそうです。

 液体食品系での製造の主な工程は、材料混合と充填です。このうちある工場ではボトルネックとなる工程が充填でしたので、最初に充填工程を計画して、その後、前工程である材料混合の計画を立てる多段階計画としました。

 充填の設備には、製品切り替え時の段取りやタンクからの配管など、多くの制約があります。製品にも、充填日が指定されているものや製造順番、消費期限などの制約があります。タンクの中の原材料を使い切るまで別のものは作れないとか、いろいろ条件があるのです。

 食品ですので、においの強いものを作った後は、入念にラインを洗浄しなくてはなりません。アレルゲンの混入がないようにするためにも洗浄が必要です。設備が配管でつながっているため、洗浄方法によっては洗浄していない別のラインも使えなくなる場合があります。

 さらにある工場では受注生産と見込み生産の両方があり、片方を優先すると、もう片方に納期遅れの問題が発生しがちです。見込み生産品の製造数量は、日単位ではなく一定の期間単位で管理することもあります。その場合に日ごとの製造数量が適切に設定できないという課題もありました。

手間をかけずに柔軟性を持たせる

ー どのような工夫で解決に結びつけたのでしょう

 設備や製品の制約が多いものを先に計画して、最後に余力のある設備や日に割付ける計画としました。段取りについては、副資源(人員の配置や、機械に付属する生産設備)の持ち方を工夫しました。結果としてマスタの設定は複雑になりましたが、マスタの設定内容を全製品共通の構成としました。新製品が追加になる場合も、既存の製品をコピーして、品目や製造能力を修正する程度でマスタの設定ができ、設定作業に手間のかからない仕組みになっています。

 また洗浄の時間は、洗浄していない別のラインでの生産ができなくなる場合があるのですが、そのラインでの洗浄は可能です。そこで複数ラインの洗浄を並行して行う計画を立てることで、設備全体の稼働効率を向上させる工夫もしました。

 受注生産と見込み生産の問題に関しては、受注生産品の割付け後に見込み生産品を割付ける計画としました。製造数量の課題については、受注生産品の割付け後に、設備の空き時間に応じた見込み生産品の製造数量を自動で計算する仕組みを作成しました。

 そして、全自動計画にせず、人の意思を入れて調整できるようにしたことが特徴であると思います。たとえば計画を週単位で管理している場合に、ある週に入らなかった作業を翌週以降に割付けるか、それとも残業や休日出勤で対応するか、必要性や緊急度によって対応は異なってきます。全自動での計画とすると、計画結果はシステムに依存してしまい、変更や追加等の対応への柔軟性が失われます。そのため、あえて80~90%をAsprovaで割付けを行い、残りは人の意思を入れて調整ができる半自動の仕組みをお客さまに納得していただいた上で構築しました。

 変更や追加などへの対応も柔軟になり、人の意思もくみ取りながら、最短かつ精度の高い計画が立案できる仕組みが構築できました。

ー 重岡さんご自身のことを教えてください。休日の過ごし方などは?

 Asprovaに携わる前には、主に医療機器の開発や品質保証の業務に携わっていました。Asprova歴は3年ほど。今は東京勤務です。平日は家事をほとんどしていないですので、休日は家庭サービスに努めます。テレビで「男子ごはん」という番組をやっています。それを見て、これはおいしそうだし、簡単に作れそうだというのを選んで、買い物に行って料理もします。ついつい料理でも効率を考えてしまうんですね(笑)。 


(了)


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技術革新や予測不能な外的要因に迅速に対応できるよう製造業務においては、より一層生産プロセス全体の改善と生産効率向上が求められています。 データやデジタル技術を活用し、生産リードタイム短縮や在庫・コスト削減などを実現する製造現場におけるDX推進の一つとして、生産スケジューラの導入がカギとなります。 次のページでは、生産スケジューラ導入によって具体的にどのような業務改善が実現したのか導入企業の事例もご紹介しています。ぜひご参考にしてください。 img_banner_aps