瞬時に難問を解く-Solverによる組立ラインの平準化生産の投入順序最適化

2022.05.27S1:組立ラインの投入順序を最適化したい
アスプローバ社では、生産スケジューリングの困った事を解決するソリューションセミナーを開催しています。そのうち「平準化生産における投入順序を最適化するスケジューリング [S1]」について感想を記してみます。

多品種生産の現場には欠かせない生産の平準化。ラインに大きな負荷をかけずに実現するには、投入順序が肝心です。生産スケジューラー・アスプローバのオプション機能である「Solver」(ソルバー)は、わずか数十秒で膨大な計算をして、最適な順序から離れた度合い=ペナルティ=の小さい順に示すことができます。

組立ラインの難問とは

セミナーの見どころは、実例に基づいた「アニメ」です。舞台は、EVの車体組み立てを請け負う未来製作所。幸い、製品の売れ行きは順調ですが、発注元の高橋さんは、厳しい注文をつけてきます。顧客の要望は多様化しており、未来製作所では、さまざまな仕様の車を、1つのラインで作らなくてはなりません。

生産管理を担当する古関さんは、悲鳴を上げる生産ラインの人たちと、「無理なら別の会社に発注しましょうか」と言う高橋さんの板挟みになり、追い込まれています。

工場が抱える問題は3つあります。1つめは部品供給が途絶える可能性(ドライブレコーダーの供給が追い付かない)、2つめは作業が間に合わない(サンルーフの取り付けは手間がかかる)、そして3つめは完成品の置き場がない(スポーツタイプの置き場は別なのです)。3つの問題を解決するのが生産の平準化です。

最適な投入順序を算出する「Solver」とは

ここでコンサルタントの笠原さんが現れ、「3日で解決します」と言います。武器は生産スケジューラーであるAsprovaのオプション機能「Solver」(ソルバー)。古関さんたちが毎日2時間かけて考え出していた投入順序を、わずか数十秒で選び出してくれるそうです。

そしてキーワード「ペナルティ」が登場します。プログラマーの小島さんの説明はこうです。「まず特定の生産順で、最適な状態から離れている度合いを算出します。それがペナルティです。ペナルティが小さい投入順序を探っていくのです。Solverは、10万通り、あるいは100万通りの投入順序についてペナルティを算出し、一番よかったものから示すことができます」

これを聞いて思い出すのは、将棋のソフトです。局面の優劣を数値化し、この手を指すよりあの手を指した方が次の局面で優勢になる、と判断します。学習の積み重ねとアルゴリズムの改善で、とうとう人間が誰もかなわない強さを実現しました。

Solverも、人智を超えた可能性を持っているようです。EV車体を例にとると、アニメではわかりやすくするため、仕様3つ、50台の生産計画でしたが、実際は33仕様、1000台を上回る計画でした。それを瞬時に作ってしまうのですから、ソフトウエアとコンピューターの力に驚かされます。

最適な投入順序を算出する「Solver」の導入の進め方

とはいえ「数十秒で複数仕様の平準化ができる? そんな絵に描いたようにうまくはいかないよ。たまたまうまくいっただけではないか」という疑問も浮かびます。現場が抱えている制約条件は、それぞれ異なっています。そうした懐疑はもっともであり、アスプローバ社は、顧客本位の導入法をとっています。Solverは顧客の要望を反映させるため、アスプローバ社と顧客とが共同で開発します。打ち合わせ、試作、検証を短い期間で繰り返し(アジャイル開発といいます)、その後に製品の提供となります。笠原さんによると、アジャイル開発はアスプローバ社は無償で行うので、仲介する販売パートナーのコンサルタント料だけを支払ってもらうということです。顧客は高いリスクをとらなくてもすむわけです。

開発がうまくいけば、生産ラインの整流化にとどまらず、工場全体の最適化をもたらします。生産管理の悩みの解決に、一度この世界を体験してみるのもいいかもしれません。

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技術革新や予測不能な外的要因に迅速に対応できるよう製造業務においては、より一層生産プロセス全体の改善と生産効率向上が求められています。 データやデジタル技術を活用し、生産リードタイム短縮や在庫・コスト削減などを実現する製造現場におけるDX推進の一つとして、生産スケジューラの導入がカギとなります。 次のページでは、生産スケジューラ導入によって具体的にどのような業務改善が実現したのか導入企業の事例もご紹介しています。ぜひご参考にしてください。 img_banner_aps
タグ : 組立工程