ループコンベアの投入順序計画はなぜ難しいのか?

2022.05.19S5:ループコンベアの投入順序を最適化したい

塗装工程でよく使われるループコンベアとは

いまや日本の食文化を代表するといっても過言でない回転ずし。工場のベルトコンベアをヒントに1958年に開発されました。お店では、あのベルトにどんなネタを投入すればいいか、店長が常に考えています。家族連れに好まれるもの、若いサラリーマンが好きそうなもの、高い皿、安い皿…。店の売上を伸ばし、食材ロスを防ぐにはどうするか、知恵の絞りどころです。

回転ずしのようにループになっているコンベアは、全体としては少数派ですが、工場でも見かけます。代表的なのは、塗装工程などで使われる吊り下げ形のコンベアです。オーバーヘッドコンベアともいいます。加工する部品やボディを、フックで吊り下げて運びます。そこに塗料を吹き付け、数段階にわたる塗装をしていきます。

こうした塗装のコンベアで、スケールを大まかにイメージすると、コンベアにはフックが1000個ほどついている感じです。フックの下にはハンガーがあり、これは品目ごとに取り替えることになります。ハンガーに対象物が吊り下げられています。塗装そのものはたいてい10秒、20秒で終わるのですが、前工程の洗浄と、後工程の乾燥に時間がかかるので、全工程は2時間ほどになります。

ループコンベアのメリットと課題

ループコンベアの利点は、省スペースになることです。床をふさがないので、平面をフル活用でき、移動も楽になります。また少人数の作業者で対応ができ、省人化することができます。

一方で扱いにくさもあります。投入口が決まっているので、いったん投入するものを間違えると、普通は一周するまで取り出すことができません。途中での並び替えや追い越しはできません。コンベアを止めると、全体に影響します。効率よくものを流すことが難しく、入念な生産計画が求められます。

どうすればいいのか、基本的なところから考えてみましょう。ハンガーの取り付けは人手で行われます。作業者の負荷を軽減するためにも、交換回数は少ない方がいいでしょう。塗装の色を変えるには、段取りのために空きフックが必要です。これも最適な数があるはずです。

ループコンベアでは、ハンガーの数に限りがあり、制約条件となります。50個のハンガーで100個の塗装をしようと思ったら、長い工程を2周させなくてはならず、仕掛品(在庫)が増えてしまいます。この問題は、前工程と後工程を分割するなど、生産計画の工夫で軽減することができます。

スケジューラで効率のよいループコンベアのスケジュールを作成

ループコンベアに対して、従来はスケジューラーによる自動計画は難しいものでした。とくにハンガー交換の最小化が難しかったのです。ところが近年のコンピューター能力の進歩と、新たなロジックの考案により、不可能ではなくなっています。回転ずしでも、ハイテク店舗では、人間の店長に代わって、AIが、店内のカメラ画像や蓄積されたデータをもとに、投入順序を決める役目を果たしているそうです。これまであきらめていたループコンベアの効率化。新たな可能性を探ってみませんか。

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技術革新や予測不能な外的要因に迅速に対応できるよう製造業務においては、より一層生産プロセス全体の改善と生産効率向上が求められています。 データやデジタル技術を活用し、生産リードタイム短縮や在庫・コスト削減などを実現する製造現場におけるDX推進の一つとして、生産スケジューラの導入がカギとなります。 次のページでは、生産スケジューラ導入によって具体的にどのような業務改善が実現したのか導入企業の事例もご紹介しています。ぜひご参考にしてください。 img_banner_aps
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