プロジェクト生産: 船舶/プラント/橋梁/大型建築物/産業用機械/特注設備…
2025.09.19A1:生産計画・スケジューリング
目次
プロジェクト生産とは
顧客からの注文に基づき、一つひとつ個別に製品を生産する形態のことです。多くの場合、製品は非常に大きく、複雑で、生産期間も数ヶ月から数年に及びます。受注後に設計が始まり、資材を調達し、生産・組立、据付工事までを一貫して行います。船舶やプラント、特注の産業用機械などがこの生産形態にあたります。
プロジェクト生産の製品例
以下にその代表的な製品例を挙げます。
- 船舶・造船: タンカーやコンテナ船、豪華客船など、同じ設計の船を複数作る場合もありますが、基本的には一隻ずつが巨大なプロジェクトとなります。数多くの部品と専門的な工程を組み合わせて建造されます。
- プラント: 発電所や化学プラント、製鉄所といった大規模な産業施設です。設計から建設、試運転まで、非常に長い期間と多くの専門企業が関わる巨大プロジェクトです。
- 橋梁: 地域の交通を支える橋もプロジェクト生産の代表例です。地形や地盤、交通量などの条件に合わせて個別に設計・建設されます。
- 大型建築物: 超高層ビルや大規模な商業施設、競技場などが該当します。一つとして同じものがないオーダーメイドの建築物であり、多くの専門工事を計画通りに進める必要があります。
- 産業用機械: 工場の生産ラインで使われる特殊な機械や、顧客の特定の要求に合わせて作られる一品物の設備です。顧客の要望を反映したオーダーメイドの製品となります。
スケジューリングの課題
プロジェクト生産のスケジューリングは、納期遵守が必須である一方、特有の要件や多くの課題も抱えています。
- 複雑な作業手順と依存関係の管理: プロジェクトは、設計、調達、加工、組立、検査、輸送、据付といった多数の工程で構成されます。これらの工程(タスク)には「この作業が終わらないと次の作業に進めない」といった前後関係(依存関係)があり、この複雑なネットワークを正確に把握し、計画に織り込む必要があります。この管理手法として、CPMやクリティカルパスという考え方が用いられます。
- リソースの最適配分: 専門的なスキルを持つ技術者や、クレーンのような大型重機など、プロジェクトで利用できるリソース(人、設備、場所)には限りがあります。どの作業に、いつ、どのリソースを割り当てるかが、プロジェクトの効率を大きく左右します。複数の作業で同時に同じリソースが必要になる「リソースの競合」を解決し、リソースが遊んでいる時間をなくすことが重要です。
- 不確実性への対応: プロジェクト生産には、天候による屋外作業の中断、資材の納期遅れ、予期せぬ設計変更やトラブルなど、計画段階では予測しきれない不確実な要素が常に伴います。こうした事態が発生した際に、計画全体への影響を最小限に抑え、迅速に計画を修正(リスケジュール)できる柔軟性が求められます。
- 進捗状況の可視化と共有: プロジェクトには多くの部門や協力会社が関わります。そのため、プロジェクト全体の進捗状況や、各タスクの状況を誰もがリアルタイムで正確に把握できる仕組みが不可欠です。進捗が遅れている箇所を早期に発見し、対策を講じるためには、計画と実績の差異を可視化することが重要です。
プロジェクト管理と生産スケジューラ
プロジェクト生産のように、大規模で複雑な計画を管理する際には、専用の「プロジェクト管理システム」が使われるのが一般的です。これは、プロジェクト全体のWBS(Work Breakdown Structure:作業分解構成図)の作成、各タスクの担当者や期間の設定、予算管理、コミュニケーションの円滑化など、プロジェクト全体を俯瞰して管理する機能を提供します。CPMを用いてクリティカルパスを特定し、進捗を管理する機能も備えています。
一方で、プロジェクト生産の中では、数多くの「部品」や「ユニット」が製作されます。例えば、プラントを建設するプロジェクトの中には、配管やタンク、制御盤といった構成要素を製作する工程が含まれます。こうした個別の製造工程における日々の詳細スケジューリングについては、プロジェクト管理システムだけでは能力不足な場合があります。
そこで有用となるのが、「生産スケジューラ」です。生産スケジューラは、製造現場の設備や作業員といったリソースの能力や制約、作業の段取り時間などを考慮して、分単位、秒単位の非常に詳細な作業計画を自動で作成することを得意としています。
つまり、プロジェクト管理システムで全体の骨格となる計画を管理しつつ、その中で行われる個別の部品製造の工程では生産スケジューラを活用する、という使い分けが有効です。両者を連携させることで、大規模プロジェクトの納期遵守と、製造現場の生産性向上の両立を図ることができます。
🔍さらに深掘りしましょう>>>プロジェクトの部品生産に関しては、ディスクリート生産を参考にしてください。
[生産計画・スケジューリングの教科書の目次]
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