ユーザーに聞く 新たなAsprova

2024.11.29X0:ユーザーインタビュー

 11月に東京・八重洲で開かれた「Asprova ユーザー会2024」では、目玉企画として、ユーザーにアスプローバ社員がインタビューする事例紹介がありました。複数のSolver導入について自動車部品メーカーのアイコクアルファ(愛知県稲沢市)、そして「My Schedule」について射出成形機などを製造する芝浦機械(東京都千代田区)。それぞれで生産計画に携わる担当者が登壇しました。また新製品「Asprova AutoMPS」についての発表がありました。

Solverで計画が楽に

 Solverは、「最適化AI」の概念を生産スケジューラに持ち込み、これまでの限界を突破する切り札として、アスプローバ社が注力しています。「Solver導入の動機は」との問いに、アイコクアルファの大井実さんが答えました。

 「納期遅れがなく、しかもオーダーの変動に対応できる計画がほしかったのです。当社の計画担当者は平均50歳代で、高齢化が進んでいます。しかも定年がない会社なので、事業継続性の面からも、属人的なノウハウを引き継いでいく必要が増していました」。

 同社では多くの工程のうち、まず冷間鍛造工程にSolverを導入し、さらに切削工程やプレスの工程でも活用することにしました。「導入の結果は?」と尋ねられると、大井さんは「切削工程では、8時間かかっていた日程計画が1.5時間で出来るようになりました。プレスの工程では、金型のメンテナンスも考慮して段取りを少なくするSolverを導入しました。その結果、20時間かけていた計画が5時間でできるようになりました」と答えました。

 担当者の数も6人から5人に減り、残業時間は大きく減少し、余裕がありすぎて余暇の使い方に困るほどになったそうです。

 「導入について心がけたことは」との質問には「完璧でなくても、早く実装したいと考えてきました。自分は未知の分野を学びながら進んできましたが、これからの生産計画は長年かけてノウハウを身につけるのではなく、できるだけ簡単にできるようにしたいですね」とのお答え。「わからないことはアスプローバ社やパートナーが解決してくれるから、安心してください」と付け加えてくれました。

My Scheduleでみんなが理解

 続いては、今年リリースされた「My Schedule」です。計画担当、製造担当、経営層など生産に関連するそれぞれの立場の人が求める画面を手元で提供します。必要最小限の画面に絞ることができ、それぞれの知りたいことを示します。ユーザー・インタフェイス(UI)に工夫をこらした理解しやすいWeb画面です。

 芝浦機械の生産技術課 藤本亮輔課長、杉本省吾主幹は「導入の動機は」との問いに、「納期遅延を回避するのが課題となっており、Excelの置き換えを目的にしました」と答えました。同社の工場には、各事業部から発注された機械加工を一括して行っている「混流生産」のラインがあります。時に同じ加工機の取り合いになることも。また現場は生産量が評価につながるので、どうしてもやりやすいものをやりたがります。それを人がExcelを用いて調整するのは至難の技だったといいます。

 同社では、Asprovaに加えて新たにMy Scheduleを導入をするためのPoCをしている最中です。そこで班長向けのシンプルなガントチャートを新たに開発したところ、好評でした。「Asprovaは複雑であり、Excelマクロで生産指示書を出していました。My Scheduleによって、それを置き換えることを狙い、PoC(概念実証)を実施しました。今は6種類の画面を作っています。いろいろな人が情報にアクセスできるようになり、現場の課長とか、部分でなく全体を見たい人にも理解しやすいところがよかったですね」と話してくれました。

 これからの課題を尋ねられると「ブラウザの共有で、現場の古い体質から脱皮できるかもしれません。そんな大きい期待があります。ただし使いづらいソフトウェアだと元にもどってしまいます。UIをExcelと同等以上にしてもらいたいですね」と注文をいただきました。

平準化はお任せ、自動車部品専用 Auto MPS

 「Auto MPS」は、アスプローバ社が初めて開発した業種別パッケージです。もともとSolverの1つとして開発されました。基準生産計画を樹立し、生産の平準化が可能になります。そしてパッケージ化により、スピーディーな導入ができます。製品の概要について、アスプローバの担当者から説明がありました。

 基準生産計画(MPS)とは、需要と在庫から、その製品をいつまでにどれくらい生産するのかを決める生産計画です。「Auto MPS」を用いると、最適化AIによって、工場の能力を最大限発揮させることができます。中でも、品目単位の平準化にとどまらず、「ブリッジ生産」を考慮した計画を立てることができるのが特徴です。ブリッジ生産とは、複数のラインで同じ品目を製造すること。従来の生産管理システムでは、膨大な計算量などの問題から、対応が困難でした。「Auto MPS」はAIの力で、これに対応することができるのです。

 「Auto MPS」で、ラインの負荷を分散することにより、納期遵守、残業の減少、無理のない材料調達が実現できます。在庫を最適な方法で管理することにより、欠品なしの在庫削減ができ、それは企業会計上、資産と負債の圧縮になります。

 担当者が強調したのは、パッケージ化により、検討時間と導入時間が短くなり、運用も容易になることです。すでに導入した大手企業の場合、通常1か月ほどかかる要件のヒヤリングや入力ファイルの準備、テストの課程が、1日ですんでしまったそうです。「導入コストが安く抑えられます」とアピールしています。

 留意点として、「Auto MPS」は、基準生産計画にかかわるソフトウェアであり、詳細な生産スケジュールは、従来のAsprovaが担います。また料金については、使った分だけという「従量制」をとっているとのことです。


(了)


技術革新や予測不能な外的要因に迅速に対応できるよう製造業務においては、より一層生産プロセス全体の改善と生産効率向上が求められています。 データやデジタル技術を活用し、生産リードタイム短縮や在庫・コスト削減などを実現する製造現場におけるDX推進の一つとして、生産スケジューラの導入がカギとなります。 次のページでは、生産スケジューラ導入によって具体的にどのような業務改善が実現したのか導入企業の事例もご紹介しています。ぜひご参考にしてください。 img_banner_aps