フローショップ生産: ライン組立/ライン加工

2025.09.19A1:生産計画・スケジューリング

目次

  1. フローショップ生産とは
  2. フローショップ生産の種類
  3. ライン加工
  4. ライン加工(オプション無し)
  5. ライン組立(オプション有り)

フローショップ生産とは

フローショップ生産とは、製品が完成するまでの一連の工程が、あらかじめ決められた順序で流れるように進んでいく生産形態のことです。この方式では、在庫を最小限に抑えつつ、効率的に生産を進めることが目指されます。しかし、納期の遵守や生産ラインの効率最適化など、生産計画における課題も少なくありません。

フローショップ生産の種類

2.1. ライン加工、ライン組立(オプション無し)、ライン組立(オプション有り)

ディスクリート製造におけるフローショップ生産は、大きく「ライン加工」と「ライン組立」に分けられます。さらに「ライン組立」は、製品の仕様が単一の「オプション無し」と、顧客の注文に応じて仕様が変わる「オプション有り」に分類されます。特にオプション有りの場合、仕様(オプション)の出現頻度を平準化する必要があるため、生産スケジューリングが格段に難しくなります。

2.2. 類似点

どちらの生産形態も、製品や部品が工程から工程へと一方向に流れていく点が共通しています。生産ライン全体の流れを止めないように、各工程の作業時間を均一にすることが重要です。これにより、生産性向上とリードタイム短縮を目指します。

2.3. 相違点

ライン加工は、材料を削ったり、穴をあけたりといった加工が中心です。一方、ライン組立は、複数の部品を組み合わせて製品を完成させることが目的です。また、オプションの有無によって、求められる生産計画の柔軟性や複雑さが大きく異なります。

ライン加工

エンジンブロックやギアなど、金属塊などの材料を連続的に加工していく生産方式です。製品はコンベアなどで自動的に次工程へ送られ、各工程では専用の加工機械が特定の作業を行います。

3.1 製品例

  • エンジン部品(シリンダーヘッド、クランクシャフト)
  • トランスミッション部品(ギア、シャフト)
  • シャーシ部品(サスペンションアーム)
  • 金型

3.2 スケジューリングの課題

■ラインバランシング

各工程の作業時間が均等になるように調整することです。ある工程だけ時間がかかりすぎると、そこがボトルネックとなり、ライン全体の生産性が低下してしまいます。

■ロットサイズと投入順序の最適化(段取り時間と納期遅れの最小化)

異なる製品を同じラインで生産する場合、製品の切り替え時に「段取り替え」が発生します。この段取り時間は生産を止めるため、できるだけ短くしたい要素です。投入する製品の順序や、一度の生産する数であるロットサイズを適正化し、段取りの回数を減らし、納期遅れを防ぐ最適化が求められます。

ライン組立(オプション無し)

ライン組立(オプション無し)は、エアコンや洗濯機のように、仕様が標準化された製品を大量生産する方式です。作業者はベルトコンベアで流れてくる製品に対し、決められた部品を決められた手順で組み付けていきます。

4.1 製品例

  • 家電製品(冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ)
  • 電動工具
  • プリンター
  • 住宅設備(給湯器、便座)

4.2 スケジューリングの課題

■ラインバランシング

ライン加工と同様に、組立ラインでも各作業者の作業負荷を均等にすることが重要です。作業者一人ひとりの作業時間が異なると、在庫(仕掛品)の滞留や作業の待ち時間が発生し、非効率になります。

■ロットサイズと投入順序の最適化(段取り時間と納期遅れの最小化)

基本的な考え方はライン加工と同じです。製品モデルを切り替える際の段取り時間を最小限に抑えつつ、需要に応じた生産量を確保するための最適化が必要です。

■部品の安定供給

組立ラインでは多種多様な部品を使用します。生産計画に合わせて、必要な部品を必要なタイミングでライン脇に供給し続けることが不可欠です。部品の欠品は、ライン全体の停止に直結します。

ライン組立(オプション有り)

ライン組立(オプション有り)は、自動車のように、顧客がボディカラーやエンジン、内装などを自由に選択できる製品の生産方式です。1台1台仕様が異なる製品が同じラインを流れるため、極めて高度な生産管理が求められます。製品のバリエーションは100万通り以上に及ぶこともあります。

5.1 製品例

  • 自動車
  • トラック
  • 建設機械、農業機械

5.2 スケジューリングの課題

この生産方式では、投入順序の最適化が非常に重要かつ困難です。特に、自動車・建機・農機などでは、数重のオプション(仕様)が存在し、人間では最適化が困難なので、近年では最適化AIを用いた生産スケジューラが活用されています。

■投入順序の最適化

1台ごとに仕様が異なるため、どの順番で製品をラインに投入するかが生産性全体を左右します。後述するような様々な制約を同時に満たす「解」を見つけ出す必要があり、生産スケジューラによる最適化が活躍します。

■ライン停止(チョコ停)の防止

例えば、サンルーフの取り付けのような時間のかかる作業が連続すると、後続の作業者が手待ちになり、最悪の場合ラインが停止してしまいます。時間のかかるオプション(仕様)が集中しないように、投入順序を平準化する必要があります。

■作業者の負荷の平準化

作業者のスキルや負荷も考慮しなければなりません。特定のスキルが必要な作業や、体力的・精神的に負荷の高い作業が特定の作業者に偏らないよう、作業負荷を平準化する投入順序が求められます。

■部品消費の種類と量の平準化

使用する部品も1台ずつ異なります。例えば、特定の色や特定の部品が短時間に集中すると、ライン脇の部品置き場が不足したり、部品供給が間に合わなくなったりします。部品消費の種類と量を平準化することが、安定した生産につながります。

■製品毎の生産数の平準化

完成した製品を置くスペースには限りがあります。例えば、特定の車種や大型の製品ばかりが連続して完成すると、置き場がすぐに一杯になってしまいます。これも製品の出荷タイミングを考慮しながら、生産数を平準化していく必要があります。


[生産計画・スケジューリングの教科書の目次]

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タグ : フローショップ生産 ライン加工 ライン組立 ロットサイズ最適化 多品種少量生産 少品種大量生産 平準化 投入順序最適化 段取り替え 納期
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