バッチプロセス: 配合/貯蔵/充填…

2025.09.19A1:生産計画・スケジューリング

目次

  1. バッチプロセスとは
  2. バッチプロセスの種類
  3. 生産スケジューリングの課題

バッチプロセスとは

製品を「バッチ」と呼ばれる一定量のかたまり単位で生産する方式のことです。シャンプー、液体洗剤、化学品、調味料、飲料といった液体製品の多くが、この方法で作られています。これらの製品は、同じ中身でもボトルのサイズや詰め替え用など包装形態が非常に多く、全部で数百品目にも及ぶことがあります。製造工程は、原料を混ぜ合わせる「配合」、出来上がった液体を一時的に保管する「貯蔵」、そして容器に詰める「充填」といったステップで進んでいきます。

 バッチプロセスの種類

■配合工程

レシピ(配合表)にもとづいて複数の原料を大きなタンクに投入し、混ぜ合わせて製品の中身(バルク液)を作る工程です。

  • 使用する機械: 配合タンク、調合タンク、攪拌機(かくはんき)など
  • 段取りが起こる条件: 違う種類の製品(品目)に切り替えるとき。特に、成分が全く異なる製品を作る前には、タンク内を洗浄する必要があります。

■貯蔵工程

配合工程で作られたバルク液は、すぐに容器に詰められるわけではなく、一時的に貯蔵タンクに保管されます。このタンクがあることで、配合充填の工程を分離し、それぞれのペースで作業を進めることができます。

  • 使用する機械: 貯蔵タンク、レベルセンサー(液面の高さを測るセンサー)など
  • 段取りが起こる条件: ある製品を保管していたタンクを、別の製品のために使用する場合。製品の成分が混ざる「コンタミネーション」を防ぐために、タンク内を完全に洗浄する必要があります。

■充填工程

貯蔵タンクから運ばれてきたバルク液を、ボトルやパウチなどの商品パッケージに詰めていく工程です。

  • 使用する機械: 充填機、キャッパー(蓋を閉める機械)、ラベラー(ラベルを貼る機械)など
  • 段取りが起こる条件: ①詰める中身(品目)が変わるとき ②容器の形やサイズが変わるとき。例えば、ボトルから詰め替えパウチに切り替える際には、機械の洗浄や調整が必要となります。

■その他

  • 加熱・冷却工程: 製品の品質を安定させるために、特定の温度まで加熱したり、冷却します。
  • ろ過・分離工程: 製品に含まれる不純物を取り除き、純度を高めます。

生産スケジューリングの課題

バッチプロセスのスケジューリングは、以下のような多くの制約を同時に考慮する必要があり複雑です。

  • 納期: 顧客からの納期を厳守します。
  • タンク繰り: どの配合タンクで何を作り、どの貯蔵タンクに保管するかを決めます。
  • タンクの上限・下限の制約: 配合タンクや貯蔵タンクの容量には上限下限があります。
  • 品目切替と洗浄: 違う製品を作るたびに洗浄(段取り)が発生します。段取り時間を少なくする必要があります。
  • 連続して生産できない品目: 製品の組み合わせによっては、コンタミネーション(成分の混入)や、最悪の場合、化学反応による爆発の危険性があるため、連続して生産できない品目の組み合わせが存在します。
  • 連続して生産する品目: 逆に、似たような製品(例:同じ香りのシリーズ)は、洗浄を簡略化できるため、なるべく連続して生産したいという要求があります。
  • 貯蔵タンクへの継ぎ足し: 貯蔵タンクは同じ品目であれば継ぎ足すことができます。ただし、タンクの上限、下限の制約を守り、かつ後工程の充填機がエア噛み(空気を吸い込むこと)しないよう絶妙なタイミングと量で継ぎ足す必要があります。
  • タンクを空にする: 品目を切り替えたり、タンクのメンテナンスをしたりする前には、貯蔵タンクを空にする必要があります。
  • 配管の制約: 一つの貯蔵タンクから複数の充填機へ製品を移送する場合、配管の構造によっては同時に移送できる充填機の数が限られることがあります。
  • バッチサイズの最適化: 上記課題をすべて満たすように各バッチサイズの最適化が必要です。

上記の条件をすべて考慮して最適なスケジュールを作成する必要があります。巨大なパズル解きで人間が解くのは困難です。近年では最適化AIを用いた生産スケジューラが有効な手段として活用が進んでいます。


[生産計画・スケジューリングの教科書の目次]

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タグ : コンタミネーション バッチプロセス 充填 品目切替 段取り 納期 貯蔵 貯蔵タンク 配合
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高橋邦芳 + Asprovaコンサルティングチーム + 生成AI