現場改善~MES×生産スケジューラのデータを活用して強い工場へ
2025.06.18A0 生産管理製造現場で発生する課題を的確に把握し、具体的な改善策を講じるプロセスが現場改善です。生産ラインでは、作業者の動線ロスや設備停止、手待ち時間など、目に見えないムダが発生しやすく、これらを放置すると納期遅れや品質低下、コスト増加につながります。MES(製造実行システム)と生産スケジューラから得られる計画・実績の差異など、各種データを活用し、現場で起きている事象を可視化することが現場改善の基本です。

データ収集と分析の手順
- データ取得 : MESでは稼働率や稼働時間、不良品数などがリアルタイムに記録されます。生産スケジューラには、計画進捗状況やリードタイム、遅延発生率などが蓄積されています。
- データ加工と可視化 : 取得したデータを集計し、ガントチャートやヒストグラムで視覚化。特に、リードタイムのばらつきや工程ごとの稼働率低下箇所を重点的に見ます。
- 問題点の抽出 : 作業間バッファの過剰、段取り替え時間の長さ、設備停止頻度など、現状の主要課題を洗い出します。この段階でのデータ分析が、以降の改善策立案の根拠となります。
現場改善の施策
- 自動化導入:クイックチェンジ機構で段取り時間を数十秒に短縮し、ライン停止によるロスを大幅に削減します。
- レイアウト最適化:工具・部品置き場を作業台付近に再配置して動線を短縮し、作業者の無駄移動を約30%減少させます。
- 標準作業の徹底:作業手順書とチェックリストを最新化し、5S活動を強化することでミスや立ち戻り作業を大幅に抑制します。
スキルミックスの活用:熟練作業者が設備調整やトラブル対応を担当し、若手が標準作業を担うことでチーム全体の生産能力を底上げします。 - 設備稼働の平準化:生産スケジューラのデータで需要変動に応じたシフトを組み、ピーク時のボトルネック発生を防ぎます。
工程内検査強化:各工程に自動検査装置や目視チェックポイントを設け、不良品をリアルタイムで捕捉・対処します。 - データ連携による原因究明:MES上で品質データと稼働データを統合し、相関分析により不良発生の要因工程を迅速に特定します。
これらの施策は、現場の声と数値データをもとに仮説検証を行い、PDCAサイクルで継続的に改善を繰り返すことが重要です。
効果の測定とフィードバック
改善策を実施した後は、必ず効果測定を行いましょう。主な指標は以下です。
- 稼働率向上率
- 段取り時間削減率
- 不良率低減率
- リードタイム短縮
これらの指標をMESや生産スケジューラのデータから定期的に算出し、可視化して現場にフィードバックすることで、改善活動のモチベーションと質を高められます。
継続的改善の定着化
- 改善履歴の蓄積 : 改善テーマ、実施内容、効果を記録し、ナレッジデータベースとして活用
- 月次/週次レビュー : 定期的な改善会議を開催し、現場改善の進捗や次期改善テーマを共有
- 現場教育と啓蒙 : 改善事例を社内報や朝礼で発信し、成功事例を横展開
- 経営層への報告 : 生産計画精度や業務効率改善効果を経営指標として取り上げ、トップダウンで支援体制を強化
継続的に改善を繰り返すことで、組織全体に継続的改善の文化が根付き、変化に強い生産体制を構築できます。
まとめ
現場改善は、MESや生産スケジューラから得られるデータを活用し、工程やリソース配分を最適化することで、効率化、品質向上、コスト削減を実現するプロセスです。改善策の立案から実行、効果測定、フィードバックまでをPDCAサイクルで回し、継続的に取り組むことで、生産計画の精度向上と業務効率の向上に直結します。生産管理担当者は、本稿で示した手順とポイントを参考に、現場改善活動を積極的に推進してください。
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コラム編集部

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