生産管理者必見!納期遅れと段取り回数を最適化する新たなスケジューリング手法~吉川英二

2022.08.31S3:納期遅れと段取りを同時に最小化したい , X1:アスプローバ社員インタビュー

アスプローバ社 コンサルタントに聞く③ 吉川英二

 アスプローバ社のコンサルタント吉川英二(よしかわ・えいじ)さんに、Asprovaのオプション機能「Solver」で、納期を守りながら、製造設備の交換(段取り)を最小限にする生産計画について聞きました。日本の生産現場では9割方、この問題を抱えているそうです。新開発された「納期遅れと段取りを同時に最小化するスケジューリング~S3」は、解決に向けて大きな助けになるといいます。

両立の難しさとは

- 生産効率と納期を守ることの両立は、なぜ難しいのでしょうか?

 お客さまからの注文に対し、納期通りに製品を納入するのは当然だと思われています。しかし製造する部門から見ると、同じものや同じ仕様のものをまとめて作る方が、生産効率はよくなります。違う品目や仕様の品目を作るには製造設備を取り替えたり、設定を変えたりする必要があるからです。

 この作業を「段取り」と言っています。段取り回数や時間が増えると、実際に製造する時間が少なくなるので生産性が低下します。

 自動車産業やハイテク産業の組立工程では、在庫圧縮や作業負荷の平準化のためには、段取り回数を増やしたいのです。それで段取り時間を数分以下に短縮しようとしていますが、回数が多いと、どうしても実際の製造時間が減少するため、生産能力不足による納期遅れが発生することがあります。

 一方、素材産業や設備産業では、段取りに数時間から数日かかることがあり、段取り回数を最小限にしようと、まとめ生産をしています。ところがまとめすぎると、リードタイムが延び、生産周期も長くなるため、受注量の変化などの環境変化に柔軟に対応できなくなり、納期遅れが発生します。

 こうした事情から、納期遅れを防止するには、段取りを最適なタイミングで実施する必要があるのです。

ー 従来はどのような方法でタイミングを決めていたのですか。

 段取りの最適化と納期遵守の一般的な計画手法は、納期優先になります。納期の早いオーダを直近に配置して、それより納期が遅いものを次に配置しています。このとき、品目や仕様を考慮せずに割り付けるので、段取り回数が増加します。それで段取り時間が増えるので、生産効率が低下し、納期遅れが発生してしまいます。

 一方、同一品目や同一仕様を優先して割り付ける方法もあります。同一品目や同一仕様を、同一ラインに連続して配置します。これにより、段取りの回数は減少しますが、同一品目や同一仕様ごとの製造時間が長くなり、納期を考慮していないので、納期遅れが複数発生することになります。

 どちらの方法でも問題が生じるので、従来の計画では、納期の余裕日を見ながら品目まるめを行うように設定しています。しかし、そのルール化やパラメータの設定が難しくなります。

あらゆる生産現場で使える

ー そこでSolverが登場するのですね。

 セミナーS3で紹介しているSolverオプションでは、簡単な操作で、納期遅れと段取り回数を最小限にした計画を立案できます。

 加工ラインごとの作業順序をコンピューターが反復改善して、納期遅れ回数や段取り回数の値を最小にする作業順序を短時間に探索します。10秒で100万通りの順序を計算することができます。

 セミナーでは住設機器メーカーの例をとりあげています。バスタブのプレス工程は、週1回1時間かけて、人手で生産順を決めています。それがSolverにより、1分の計画時間で、人が割り付けた結果と違わないものができあがりました。また自動車部品メーカーでは隔週1回、人手で5時間かけて生産計画の修正を行っていました。それがSolverにより、10分程度で「一見してよいとわかる結果が出た」との評価を受けました。 

 S3はあらゆる業種に適用できます。食品や医薬品の製造でも素材系でも使えます。多品種少量生産が求められている現在、9割方の生産現場にあてはまると思います。

ー 吉川さん自身の経歴を教えてください。

 社会人としての振り出しは、製鉄会社の電気設備保全で、11年やりました。そこからシステムインテグレータになり、生産管理に関係するソフトウエアの世界に足を踏み入れました。その後、SAPジャパンで、ソリューションアーキテクトとして、製造業全般の計画系・実行系ソフトウエアの提案と導入を行ってきました。アスプローバに入社したのは11年前。生産計画に特化したコンサルタントをやっています。

 その間、インド担当として、現地の企業に足を運び、スケジューラの導入と技術支援をしてきました。海外の企業はトップダウン型の意思決定をします。日本は生産現場のそれぞれの立場の人が強い発言力を持っているように感じます。細かいことによく気づきます。半面、全体の最適化を考える人が少ないですね。現状を肯定し、それに合わせたDX化(デジタルトランスフォーメーション)を模索するのが、典型的な日本企業です。私たちも、何とか現場に合わせた生産計画が実現できるように努めています。

 ただ最近は、そんなやり方を変えることも必要なのでは、と思い始めています。つまり現状の方を変更するということもあり、なのです。デジタル技術は進歩し、自信を持っておすすめできるソフトウエアがあります。Solverもその一つです。

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技術革新や予測不能な外的要因に迅速に対応できるよう製造業務においては、より一層生産プロセス全体の改善と生産効率向上が求められています。 データやデジタル技術を活用し、生産リードタイム短縮や在庫・コスト削減などを実現する製造現場におけるDX推進の一つとして、生産スケジューラの導入がカギとなります。 次のページでは、生産スケジューラ導入によって具体的にどのような業務改善が実現したのか導入企業の事例もご紹介しています。ぜひご参考にしてください。 img_banner_aps
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