金属成形加工:鍛造/鋳造/圧延/押出し/引抜き/曲げ/切削…
2025.09.19A1:生産計画・スケジューリング
目次
金属成形加工とは
金属材料に熱や力を加え、目的の形状や性質に変化させる技術の総称です。自動車部品、調理器具、建設資材など、様々な製品の製造に不可欠な基盤技術です。鍛造、鋳造、圧延、押出し、引抜き、曲げ、切削といった多種多様な加工法を組み合わせることで、複雑な形状や高い強度、機能を持つ製品が生み出されています。
金属成形加工の種類
金属成形加工には多くの種類があり、それぞれの手法で異なる特徴を持つ製品が作られます。以下に代表的な加工方法とその特徴をまとめました。
加工方法 |
生産方法 |
主な生産物 |
鍛造 |
金属をハンマーやプレス機で叩いて圧力を加え、目的の形状に成形します。加熱して行う熱間鍛造と、常温で行う冷間鍛造があります。 |
エンジン部品(クランクシャフト、コンロッド)、工具(レンチ、スパナ)、航空機の部品。 |
鋳造 |
金属を高温で溶かし、砂や金属で作った鋳型に流し込み、冷やし固めて製品を作ります。 |
自動車のエンジンブロック、マンホールの蓋、仏像や美術品。 |
圧延 |
回転する2つのローラーの間に金属を通し、圧力をかけて薄い板や棒状に引き延ばす加工です。 |
鉄鋼製品(H形鋼、レール)、アルミ箔、銅板など、板状・棒状の材料。 |
押出し |
材料に高い圧力をかけ、金型(ダイス)の穴から押し出して、一定の断面形状を持つ長い製品を作ります。 |
アルミサッシ、チューブ、配管、各種構造材。 |
引抜き |
金型(ダイス)を通した材料の先端を掴み、引き抜くことで、材料を細くしたり、寸法精度を高めたりする加工です。 |
電線、ワイヤー、精密なパイプや棒材。 |
曲げ |
板材や棒材を、プレスブレーキやベンダーといった機械を使い、V字やL字、U字などに曲げる加工です。 |
自動車のボディパネル、建材、機械のカバーやフレーム。 |
深絞り |
一枚の金属板を、パンチ(凸型)とダイス(凹型)を使い、継ぎ目のない容器状に成形する加工です。 |
飲料缶、鍋やフライパン、自動車の燃料タンク。 |
スピニング |
回転する金属板にへらと呼ばれる工具を押し当て、少しずつ変形させていく加工方法です。 |
パラボラアンテナ、照明器具のかさ、ロケットの先端部品など、回転対称の製品。 |
切削 |
ドリルやバイトといった切削工具を使い、金属材料を削ったり、穴を開けたりして、目的の形状に仕上げる加工です。 |
ねじ、歯車、金型、機械の精密部品。 |
熱処理 |
金属を特定の温度に加熱し、適切な速さで冷却することで、金属の内部組織を変化させ、硬さや粘り強さといった性質を調整する加工です。 |
刃物、ばね、ベアリングなど、特定の機械的性質(硬さ、耐摩耗性)が要求される部品。 |
研削 |
高速で回転する砥石を使い、材料の表面をわずかに削り取ることで、非常に滑らかで精度の高い面に仕上げる加工です。 |
ベアリングの玉、精密機械の軸、鏡面仕上げが必要な金型部品。 |
放電加工 |
電極と加工物の間で火花放電を発生させ、その熱で金属を溶かして除去する加工です。非常に硬い金属でも加工できます。 |
精密な金型、切削では加工が困難な複雑形状の部品。 |
穴あけ |
ドリルなどの工具を使って、材料に穴を開ける加工です。 |
あらゆる機械部品、建築部材、電子機器の基板。 |
レーザー加工 |
高いエネルギーを持つレーザー光をレンズで集光し、材料に照射して、切断、溶接、マーキング(刻印)などを行う加工です。 |
精密板金の切断、微細な溶接、製品のシリアル番号の刻印。 |
溶接 |
2つ以上の金属部品の接合部分を、熱や圧力を使って溶かし一体化させる加工です。 |
自動車のフレーム、船舶、橋梁、パイプラインなど、大きな構造物。 |
生産スケジューリングの課題
■納期厳守と急なオーダ変更への対応
納期は絶対に守らなければなりません。しかも、特急注文、仕様変更、材料遅延など不測の事態が頻繁に発生します。そのたびにリスケジュールする必要があります。一つの変更が他の多くの注文の計画に影響を及ぼすため、手作業での再調整は困難で、生産スケジューラが必要になります。
■段取り時間
段取り回数が増えると生産効率は低下します。段取り回数を減らすために、同じ製品をまとめ過ぎると、その他の製品で納期遅れが発生します。このため、段取り回数と納期遅れ回数を同時に最小化することが要求されます。
■熱処理(バッチ処理)
熱処理炉では、一度に複数の製品をまとめて処理(バッチ処理)します。充填率を最大化して熱処理をしたいのですが、まとめすぎると納期遅れが発生します。納期遅れせず、かつ、充填率を最大化する生産スケジュールが要求されます。
■多工程の有限能力スケジューリング
上記の制約を考慮しながら、機械や人員の能力を考慮して、複数工程のスケジューリングを行う必要があります。これは、巨大なパズル解きで人間が解くのは困難です。近年では最適化AIを用いた生産スケジューラが有効な手段として活用が進んでいます。
[生産計画・スケジューリングの教科書の目次]
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