セル生産

2025.09.19A1:生産計画・スケジューリング

目次

  1. セル生産とは
  2. レイアウトによる分類
  3. 作業する人数による分類
  4. 製品例
  5. スケジューリングの課題

セル生産とは

セル生産とは、製造業で用いられる生産形態の一つです。コンベアで製品を流すライン生産とは異なり、「セル」や「屋台」と呼ばれる小さなスペースで、一人の作業者、もしくは少人数のチームが組み立て工程の大部分、時には全工程を担当します。市場のニーズが多様化し、製品のライフサイクルが短くなる中で重要性が増している多品種少量生産に適した方式です。

レイアウトによる分類

セル(作業台)のレイアウト形状によって、いくつかの種類に分けられます。それぞれに特徴があり、製品や作業スペースに合わせて最適なものが選ばれます。

■U字レイアウト

U字レイアウトは、アルファベットの「U」の字のように作業台や設備を配置する形式です。作業者はその内側に立ち、体の向きを変えるだけでほとんどの作業に手が届きます。

  • メリット: 作業者の移動距離が最も短くなり、作業の効率化に繋がります。工具や部品へのアクセスも容易です。
  • デメリット: ある程度の設置スペースが必要になります。

■L字レイアウト

アルファベットの「L」の字に作業台を配置する形式です。U字とI字(後述)の中間的な特徴を持ちます。

  • メリット: U字ほどではありませんが、比較的短い動線で作業が可能です。部屋の角など、スペースに制約がある場所でも設置しやすい利点があります。
  • デメリット: U字に比べると、作業開始と終了の位置が離れるため、移動のロスが少し発生します。

■I字レイアウト

「I」の字、つまり直線状に作業台を配置する、最もシンプルな形式です。

  • メリット: 省スペースで設置が可能です。レイアウトの変更も容易に行えます。
  • デメリット: 作業者が一方向に移動しながら作業するため、移動距離が長くなりがちです。

作業する人数による分類

セル生産は、そこで作業する人数によっても分類されます。

  • 一人生産方式(一人屋台): 一人の作業者が、部品の受け取りから組み立て、検査、梱包まで全ての工程を担当する方式です。担当者は製品全体に関する幅広い知識とスキル(多能工)が求められますが、個人の裁量でペースを調整しやすく、品質への責任感も高まります。
  • 複数人生産方式: 一つのセルを、複数の作業者で分担して作業を進める方式です。一人が複数の工程を、もう一人が残りの工程を担当するなど、柔軟な人員配置が可能です。一人の作業者に全てのスキルが求められないため、新人教育などにも活用しやすい側面があります。

製品例

セル生産は、特に工程が複雑であったり、高い精度が求められたり、あるいは顧客ごとのカスタマイズが必要な製品の生産に向いています。

  • デジタルカメラ、ビデオカメラ
  • パソコン、サーバーなどの電子機器
  • 医療用精密機器
  • カーナビ、自動車の電装部品
  • エアコン、給湯器などの住宅設備機器
  • ゲーム機

スケジューリングの課題

柔軟性が高いセル生産ですが、その能力を最大限に引き出すためには、精度の高いスケジューリングが不可欠です。しかし、そこにはいくつかの課題が存在します。

  • 作業者のスキル管理: 誰がどの製品を、どれくらいの時間で作れるのか、という作業者のスキルを正確に把握し、最適な人員配置を行う必要があります。スキルを考慮せずに計画を立てると、生産性が大きく低下する原因になります。
  • 部品供給のタイミング: 多品種少量生産では、多種多様な部品を、必要なタイミングで、必要な数だけ各セルへ供給しなければなりません。供給が早すぎれば在庫が増え、作業スペースを圧迫します。遅れれば、作業が止まってしまい、生産計画全体に影響が出ます。
  • 工程負荷のばらつき: 製品の種類によって組み立ての難易度や作業時間が異なります。特定の製品の注文が集中すると、一部のセルだけに負荷が偏り、他のセルは手待ち状態になる、といった非効率が発生しやすくなります。
  • 急な計画変更への対応: 特急の注文や、急な仕様変更、部品の納期遅れなど、不確定要素への対応が求められます。計画をその都度、手作業で修正するのは非常に手間がかかり、最適な計画を見つけるのは困難です。これらの課題解決のために、AIなどを活用した生産スケジューラの導入が有効な手段となります。

[生産計画・スケジューリングの教科書の目次]

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タグ : U字レイアウト セル生産 作業者 効率化 在庫 多品種少量生産 生産スケジューラ 組み立て 製造業 部品
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