バッチ処理(ディスクリート): 熱処理/表面処理/検査…
2025.09.19A1:生産計画・スケジューリング
目次
バッチ処理(ディスクリート)とは
ある一定量を1バッチという単位で、同じ設備で同時に処理する生産方式です。個別に流れてくる製品を一旦貯めておき、まとめて処理するのが特徴です。例えば、オーブンのような熱処理炉に複数の異なる部品を一緒に入れて熱したり、大きな洗浄槽でまとめて洗浄したりする工程がこれにあたります。
■ディスクリートのバッチ処理とプロセスのバッチ処理
バッチ処理は以下の2つに分類できます。
- 1個2個と数えられる製品を生産するディスクリート生産のバッチ処理
- 液体物・粉体を生産するプロセス生産(バッチプロセス)のバッチ処理
ここでは、ディスクリートのバッチ処理について解説します。
バッチ処理の種類
■熱処理工程
- 説明: 金属部品などの材料特性を向上させるために、加熱と冷却を行う工程です。硬度を高める「焼入れ」や、内部の歪みを取り除く「焼なまし」などがあります。製品ごとに処理温度や処理時間が異なります。
- 使用する機械: 熱処理炉、焼鈍炉、真空炉など。
- 段取りが起こる条件: 次のバッチの処理温度が現在の炉の温度と大きく異なる場合に、昇温や降温のための時間が必要になります。例えば、800℃で処理した後に500℃の処理を行う場合、炉が冷めるのを待つ必要があります。
■表面処理工程(塗装・メッキ)
- 説明: 製品の表面に塗料や金属の膜を形成し、防錆、装飾、機能性付与などを行う工程です。
- 使用する機械: 塗装ブース、乾燥炉、電解メッキ槽、無電解メッキ槽など。
- 段取りが起こる条件: 色替えや、使用する薬品の変更時に段取り時間が発生します。特に塗装工程では、色を変える際にスプレーガンやタンクの洗浄が必要となり、時間がかかります。
■検査工程
- 説明: 製品の耐久試験や環境試験など、特定の環境下に製品を一定時間置く必要がある検査はバッチ処理で行われます。
- 使用する機械: 恒温恒湿槽、塩水噴霧試験機、耐久試験機など。
- 段取りが起こる条件: 試験条件(温度、湿度、時間など)が異なる場合に段取りが発生します。例えば、恒温恒湿槽で高温試験の後に低温試験を行う場合、槽内温度を安定させるための待ち時間が段取り時間となります。
■その他
上記以外にも、以下のような工程でバッチ処理が見られます。
- 洗浄工程: 大きな洗浄槽に複数の部品をまとめて投入し、洗浄・乾燥させます。
- 接着・乾燥工程: 接着剤を塗布した部品を乾燥炉にまとめて入れ、硬化させます。
- 梱包工程: 複数の異なる製品を、特定の出荷先ごとにまとめて箱詰めし、出荷準備をします。
スケジューリングの課題
以下のような様々な要件を考慮する必要があります。
- 充填率の最大化: 炉や槽には容量の上限があり、また製品ごとに温度や処理時間などの条件が異なります。これらの制約を踏まえ、充填率を最大化するように、バッチ処理する注文を効率的にグループ化する必要があります。
- 納期: 納期は絶対に守らなければなりません。充填率を高くするためにまとめ過ぎると納期遅れが発生しますので、納期厳守と充填率最大化のバランスを取る必要があります。
- 段取りの条件: 前後のバッチの組み合わせによって、段取り時間が発生したり、そもそも連続処理ができなかったりする制約(例: 高温処理の直後に低温処理はできない)を考慮します。
- 上記条件を同時に考慮した最適な生産スケジュールが必要です。
これらの制約条件をすべて考慮して最適なスケジュールを作成することは、巨大なパズル解きになり人手では非常に困難です。この課題を解決するため、近年では最適化AIを搭載した生産スケジューラが有効な手段として活用されています。
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