3PL/三井物産/菱食/日通/フェデックス
商社の生き残りをかけてサプライチェーンマネジメントを武器にした企業。従来の卸の機能からメーカーの管理部門の機能を担う、新しいコンセプトを実施している。
ロジスティックスは兵站という戦争用語だが、資材調達から生産・流通・販売まで含めたビジネスロジスティックスは、サプライチェーンと同義語と考えていい。3PL(サードパーティロジステックス)社は、サプライチェーンを横切る企業間の中で、コアコンピタンスとして「物の流れのスピード」を上げることを専門とする企業と定義できる。
米国のウォールマート社、デルコンピューター社などでもサプライチェーンの視点からみるとメーカー、流通業、小売業などの業界の壁がなくなっている。たとえば、ウォールマート社は、小売業として従来当然なビジネスプロセスであった需要予測、仕入・在庫管理を仕入先にアウトソーシングし、自身のプライベートブランドの製品企画を行なう。また、デルコンピューター社はインターネットや電話によるテレマーケティングで受注し、フェデックス社に全世界の流通をアウトソーシングしている。
一方で、航空会社が輸送会社としてメーカーの流通部門のアウトソーシングを引き受けている。EDI(電子的データ交換)やインターネットによる受発注・請求データの交換は、従来のメーカー、小売、商社(卸)という概念を打ち壊した。それによって、自分のビジネスが生き残れる場を求めて相互進入しつつあるのが、現在の産業構造変革期の姿である。
3PLは、商社(卸)のサプライチェーンマネジメントを武器とした生き残りのコンセプトである。メーカーの立場でパソコンの配送を受託しているフェデックス社、東南アジアにおける日系電子機器メーカーの調達業務のアウトソーシングを引き受けている三井物産などは、従来の卸の機能からメーカーにとっての在庫管理、発注管理、物流機能、そして情報システム部門の役割を担っている。当然、これらのアウトソーシングを行なう3PLの方法は、顧客であるメーカーの需要データ、生産計画などの情報を共有していなければビジネスは成り立たない。
菱食は加工食品メーカーなどの卸として販売代理のビジネスから、コンビニエンスストアの仕入購買代行にシフトしたサプライチェーン再構築のビジネスモデルで成長した。ケース単位で納入されるメーカーの製品をパーツとし、コンビニエンスストアの日々の棚別の製品補充を小口多頻度配送というキット化納品というモデルを作った。その意味で菱食のビジネスモデルはデルモデルである。
また、日通は「物」を運ぶ物流から「製品開発・生産・販売の商流を支援する」物流という、3PL社のコンセプトで事業転換を図っている。
3PL社は、いわばこれからの産業の中で一つのインフラとして今後、洗練されてくるであろう。ハードメーカーが異なっていても、ソフトが一つのプラットホームの上に乗るように、3PLの形態が進化した企業は複数の異なる企業(メーカー)がインフラとして利用できるプラットホームになると思われる。
したがって、従来の概念のメーカー、商社、運送業者で分類することはできない。