コアコンピタンス
他社が真似のできない独自の売り物をもつ企業は強い。その特徴を作ることは高度の戦略的判断によるが、企業として生き残るには不可欠なことである。
コアコンピタンスとは、「顧客に対して他社には真似のできない、自社ならではの価値を提供する中核的能力」と定義されている。このコアコンピタンスの認識とそのマネジメントがしっかり行なわれている限り、企業が生き残りのために、上流から下流まですべてのビジネスプロセスを一社で完結させる必要はない。サプライチェーンでは、全産業を貫くチェーンの物の流れのリードタイムを短かく、かつスムーズな流れにすることが課題である。上流から下流までの流れの中で、サプライチェーンマネジメントで自社の強みを生かし、キャッシュフローが最大になるようなオペレーションの組合せ、つまり自社のコアコンピタンスとしてビジネスモデルを作ることは、高度の戦略的判断になる。
サプライチェーン上のオペレーションでコアコンピタンスを認識した企業は、コアコンピタンスにならないオペレーションをアウトソーシングすることで、さらにスループットを増やしキャッシュフローを上げることができる。
たとえば、トヨタ自動車のサプライチェーンを意識したコアコンピタンス経営には、以下のような特徴がある。それは、系列を巻き込んだ製造戦略を経営のインフラとし、トヨタ式生産システムの導入がコアコンピタンスである。販売のトヨタといわれるが、それはジャストインタイムを生み出した生産のインフラがあるからこそ、「販売して、しかる後に生産する」ことが可能となる。トヨタの開発設計のリードタイムが世界で最も短かいといわれるのは、開発設計のビジネスプロセスにコアコンピタンスがあるのではなく、試作品の製造において最も時間のかかる金型製作のリードタイムが世界一短かいサプライヤをもっているから、それが可能になるという説がある。
サプライチェーン上でのコアコンピタンスを認識する上で、ある分野で最高のビジネスプロセスがあれば、それ以外をアウトソーシングすることでオープンな経営ネットワークの構築ができる。ただし、業界によってコアコンピタンスが決定されるので、そのミスマッチは致命的となる。たとえば、「販売のトヨタ」という評価でコアコンピタンスをみる競合相手は、適切な戦略を見誤ることになる。
デルコンピューター社のコアコンピタンスは、直販により顧客とのダイレクトな関係を築き、受注・生産・出荷のリードタイムを最短にするバーチャルコーポレーションのサプライチェーンマネジメントである。フェデックス社は3PL(サードパーティロジスティックス)として、物流を追跡するシステムとデータベースをリアルタイムで更新する技術をコアコンピタンスとしてサプライチェーンを支援している。