サプライチェーンバッファ

バッファは緩衝のことで、サプライチェーンには在庫バッファと能力バッファが必要である。バッファがないと、最適なスループットが得られなくなる。


 サプライチェーンをモデル化するものは、移動・加工・組立・販売・購買……などのオペレーションの主体であるリソース(経営資源)と、サプライチェーンを通過する物の在庫、すなわちインベントリーである。リソースは、その能力(キャパシティ)、つまり一つのオペレーションの速度(一定期間の処理量)で表現され、インベントリーはある時点におけるオペレーション間の滞留在庫で表現される。
 サプライチェーンバッファ(緩衝)は、オペレーション間での非同期による問題を少なく(やわらげる)するものである。サプライチェーン上で問題になるのは「能力があるのに物がない」「能力がないのに物がある」という材料不足や能力不足で物の流れが悪くなりスループットが落ちる現象である。バッファとしての在庫が多いと、上流での能力ダウンが下流の物不足を緩衝するが、リードタイムを長くする。つまり、「流れ生産」のような同期化オペレーションは、バッファなしでも材料不足や能力不足を起こすことがない、高度な生産システムといえる。
 サプライチェーンの在庫バッファは、オペレーションの能力間の変動を緩衝しているといえる。しかし、「流れ生産」のように、オペレーション間に在庫をもたず連続で加工をし、最短時間で物を作るためには、デマンドのスピードに対して稼働率が一〇〇%以上になるボトルネックを作らないことが必要である。そのためには、能力に余裕をもたせること、すなわち稼働率が一〇〇%未満、たとえば一〇~二〇%の低稼働でもときには容認する必要がある。
 TOC(制約理論)の基本概念によれば、全リソースを目一杯働かしてはいけない。それは、サプライチェーンにおいて能力のバッファをもつことに他ならないのである。サプライチェーンバッファには、在庫バッファと能力バッファが必要である。
 不況時のリストラは、この能力バッファを削るケースも多いので、その能力の回復のためのリードタイムを考慮することは極めて重要である。需要は、日々変動する。それなのに、平均値でリストラすることにより、需要のピークのときに人手が足りず商機を失って、スループットを下げるという場合もある。