回転寿司

回転寿司もサプライチェーンマネジメントの喩えにすることができる。いかに在庫を作らないで、スループットを大きくするか、またいかに新鮮な寿司をお客に出すか、サプライチェーンマネジメントそのものである。


 寿司職人がにぎるカウンター方式のにぎり寿司は、需要予測によってあらかじめ用意されたシャリとネタをバッファ(在庫)として持ち、実需(オーダー)によってネタとシャリをアセンブリする、ATO(アセンブルツーオーダー:受注組立)である。
 それが、回転寿司になると少し違うサプラチェーンマネジメントのモデルになる。まず、当日のシャリの仕込みや新鮮なネタは、曜日や天候による客数の予測から需要見込に基づいて調達される。回転テーブルに最初に載せる皿は、許容在庫能力一杯である。客が増え、皿の消費によって回転テーブルに空スペースができると、そこに消費されたネタを補充するというのが回転寿司の仕組みである。これは、プル方式(受注生産)の補充生産が行なわれたことになり、ECR(効率的消費者対応)やQR(クイックレスポンス)のツールであるCRP(連続的補充計画)のコンセプトそのものである。
 また、回転しているテーブルにある寿司(製品在庫)は客の所有物ではなく店の所有物であり、CRPによる補充・初期供給などの在庫管理はベンダー(仕入先)、すなわち寿司店によって行なわれるVMI(ベンダー管理在庫)である。寿司職人が寿司をにぎるスピードがどんなに速くても、回転テーブルに空スペースができない限り、それ以上には稼動率は上げられない。それは、カンバン枚数で処理スピードが制限されるカンバン方式そのものである。
 空スペースが来客数の消費スピード、すなわちデマンド(需要)のスピード以上の大きな在庫バッファとなっている場合は、売れ残り(損失)を発生させる可能性が高くなる。ドラムバッファロープ理論でいえば、ロープが長すぎて後続が追いつけない状態であり、在庫の多さが大きな損失を生むのと同じことである。
 回転寿司でお客にとって重要な新鮮な寿司は、何回転も在庫になっているものではなく、一回転未満で運ばれるものである。サプライチェーンのオペレーションが同期化している状況とは、この最も新鮮な寿司が食べられる状態になることである。