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海外スケジューラ事情-7

インドネシアにおける日系製造業のIT事情(7):
それぞれの立場で見るインドネシアのITシステム事情

インドネシアに工場を持つ、日系製造業のIT事情とは? 中国に3年、タイに3年駐在した経験のある筆者が、それらの国と比較したインドネシア特有のIT導入の実態について現地からレポート。第7回では、大手企業と中小企業におけるITシステム環境の違いや、日系製造業とローカル企業におけるITシステム導入に関する意識の差などを取り上げる。
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インドネシアは、日系製造業だけを見てみると大まかに、1980年代に進出してきた歴史ある電気電子製造業の工場と、
2000年代に進出してきた比較的新しい自動車関係の工場とに分けられる。

もちろん、この国の豊富な資源を利用したプロセス産業の工場も多いが、筆者が所属するアスプローバ(当社)製品が
あまり得意としない分野のため、訪問する機会が少ない。

そこで、組み立て加工の工場についてお話させていただくと、それぞれの工場には違ったバックグラウンドがあるだけに、IT環境も実にさまざまだ。インドネシアで30年以上も仕事をしながら、いまだに、システムは「Excel」の域を脱し得ない工場もあれば、比較的新しい工場では日本と共通のIT環境もみられる。大手企業のほとんどはERP採用という形をとっているが、中堅か中小になると日本の自社開発のシステムを利用している工場も多い。
また、現地のITスタッフのスキルや日本本国のシステム投資に対する理解度の違いから、システム化が進んでいる工場もあれば、そうでもない工場もある。
 

 

大手企業と中小企業、対照的なITシステム環境
対照的な事例として、いずれも当社製品の10年来の利用顧客だが、一方は大手企業であり、高価なERPシステムを
利用している。当然IT部門の陣容も充実しており、システム運用には支障がない企業だ。ただ、長い歴史の中で
アドオンシステムの開発の大部分をインドネシアローカルのIT企業に委託しており、ERP自体のバージョンアップは
ままならないといった現状だ。IT部門のスキルが高いが故に、ローカルのオペレーターの要望を広く取り入れて
しまった結果ともいえる。

他方は中小企業ではあるが、自社開発の生産管理システムを利用しており、比較的システム改変には容易に取り組める
ようだが、税制や購買上の取引および財務会計に関する手続き変更など、法制改正の多いインドネシアでは、自力のみでは
対応できていない部分もある。

好対照な2社だが、どちらが良い悪いという問題ではないように感じる。要はIT利用による目的をどこにおいているのか?
実際運用を担う現地メンバーのスキルトランスファーがどれだけ進んでいるかがキーポイントだ。

結局、ITシステムはあくまで主業務支援のツールにすぎないのであるから、過度な期待は危険、割り切って利用することが
重要だ。例えば、生産管理システムと会計システムの関係、諸元の情報は生産管理システムから生まれるが、自動的に
会計システムと接続してしまえば、混乱が生じやすい。生産実績や理論在庫といった情報の精度が望めないからだ。
 
ではどうするか? 実際の顧客では、両システムを直接接続せず、間に人手によるチェック作業を絡ませている工場が多い。
一見不合理に思えるが、原因も分からないままに、毎月間違った財務情報を策定し、その原因探索と修正に多大な工数と
時間を費やすよりはマシといった考えだ。

生産スケジューラソフトウェアも同様で、100%の生産計画は策定不可能である上に、製造現場がその通りにモノづくりを
するとは考えられない。では、高価な生産スケジューラソフトウェアを購入する顧客のメリットは何かといえば、標準化と
時間短縮、運用に乗せられたときの工場の見える化やリードタイムの短縮、在庫削減などへの間接的貢献ともいえる。

 

さまざまな企業、工場を訪問して……
先日、上流系の業務コンサルを行う会社を訪ねた。彼らの仕事のアウトプットからするとさらに見えない対費用効果の中で、
インドネシアの顧客からお金が取れるのか? と不安を抱いていた。確かに現実ではあるが、システムを顧客に導入する
当社のパートナーであるIT会社の立場からすれば、業務設計、運用設計、継続体制などの前さばきがされていると
システム導入の成功率も高まるのでありがたいのではないか。今後どこまでその重要性をインドネシア企業に
浸透させてくれるのかに期待したい。
 
インドネシアに進出する日系製造業の日本人マネジャーの中には、日本本社から“インドネシア工場に適した
IoT(Internet of Things)の導入”を求められて困っている企業も多い。インドネシア工場に適したIoTは何なのか?
についても十分に現地事情に沿った議論が必要だ。

インドネシアのローカル企業の工場にも訪問させていただいた。インドネシアでも大変有名な文房具製品のメーカーだけに、
スタッフのスキルは高い。既に高価なERPの導入にも成功している。実はこの工場、前任者が当社製品を導入しようとしていて
なかなか進まなかった企業だ。トップ層は導入に積極的であったのにもかかわらず、担当者はあまり積極的ではなかった。
火災というアクシデントで当社システムも一時使用されなくなったが、新工場設立後の担当者は経営者も含めて、
生産スケジューラの導入には前向きだ。


ローカル企業ならではの特有の問題

ローカル企業には、ローカル企業特有の問題がある。企業の大小にかかわらず、新システムに関しては、興味度は高いのだが、
実際の導入となると費用面だけでなく、アプリケーションソフトウェア使用のスキル不足が否めない。通常、モバイル環境を
個人で利用しているのと、会社業務をITに乗せるのとでは違った意味での経験が求められる。幸い幾つかの企業では海外留学の
経験のあるスタッフがおり、アプリケーションソフトの導入がスムーズにいくケースもあるが、まだ、まれなケースといってよい。
国内の教育機関でのIT利用のスキルアップが待たれるのではないだろうか?

例えば、東南アジアの場合、インドネシアに先んじるタイでは、国が主導して、進出している外資系企業のスキルを、
国内企業に定着させる試みがなされている。製造技術だけでなく、ITも同様だ。幾つかの外資製品が、工業省のお墨付きを得て、
国内企業への浸透を目指しているし、教育機関での無償教育などのプログラムも増加してきている。当社製品もその方向を目指して、
現在タイ工業省と話を進めている。インドネシアでもアストラグループが経営する学校などと交渉を続けている。
現時点での工場スタッフへの教育も喫緊の話ではあるが、将来的には学生に理解していただくことの方が、有益でたやすいと考えている。

システム化が進まぬ工場地区から離れた製造業企業

 

話は変わるが、最近はジャカルタからかなり離れた別の島の製造業からお呼びが掛かることも多い。主力の工場地区から離れたところにあるが故に、システム会社からも見捨てられている工場も多い。つまり、システム化があまり進んでおらず、基礎的なシステムの提案から求められる。
対応の可否は、当社の代理店それぞれの会社体力によるといえば、そうだが、考えてみれば、国内移動の費用はそう高額でもなく、ジャカルタ近辺の工場区に行くにしても前述のように数時間かかる。飛行機などを使っても、トータルな訪問時間はあまり変わらない。

 

問題は長い間、ITシステムというものとは縁がなかった工場で、いかに導入体制を整えるのか、さらにいえば、システムカットオーバ後の維持体制をいかに確立するかの体制作りの方が重要で、システムパッケージ自体はノンカスタマイズで導入しもらう。将来的に、インターネット環境がより整備され、リモート環境でのメーカー保守などが実現すれば、ベストだと感じる。

 

まとめ
最後、冒頭に書かせていただいたように、当社ユーザーとしてはまだ少ないプロセス産業の工場だが、
日本の工場でご利用いただいている場合は、インドネシア側でもご検討いただけるケースがある。
これらの工場は総じて古い歴史を持つ工場が多いが、ほとんどの基幹システムは日本本国から移植された
スクラッチシステムで、ITシステムの歴史も古い。

私見ではあるが、ディスクリートの顧客と比べ、ITシステムの新規更新にはあまり積極的ではないように思える。
最近では、素材を利用した最終製品の新工場をその周りに造る企業も多くみられるが、こちらでは最初から
最新のシステムが検討されるケースが多い。石油化学素材を利用したプラスチック製品、ファブリックを利用した
コンシューマー製品の工場などでそのような話があった。当社製品としては、それら工場のERPの立ち上げ後の
検討となるので、来年(2019年)あたりがその時期と考えている。

インドネシアの工場も12月の期末を近くにして、来期のIT投資の話が出始めている。
来期の傾向はどうなるのか? 次回報告したい。

*本記事は、製造業のための製品・サービス情報サイト『Tech Factory』に連載中です。
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アスプローバ株式会社 副社長 藤井賢一郎
日本国内・アジア域で500社以上の製造業に生産スケジューラを導入するプロジェクトに関わる。
ここ10年は中国・タイ・インドネシアとアジア各国に駐在し、ビジネスを拡大。
生産管理・生産スケジューラに関わる複数著書がある。
アスプローバ副社長の藤井のアジア現地での経験、ノウハウがつまった1冊。
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