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海外スケジューラ事情-5

インドネシアにおける日系製造業のIT事情(5):
IT導入プロジェクトの成功を左右する“3大要素”とは

インドネシアに工場を持つ、日系製造業のIT事情とは? 中国に3年、タイに3年駐在した経験のある筆者が、
それらの国と比較したインドネシア特有のIT導入の実態について現地からレポート。
第4回では、インドネシア現地(ローカル)のシステム会社の実態について取り上げる。
*本記事は、製造業のための製品・サービス情報サイト『Tech Factory』に連載中です。
連載中の本文はこちらよりご覧いただけます。

 

一口にIT事情といっても
IT事情といっても、そこにはネットワークやハードウェア環境などのインフラと、それらを利用して提供される
アプリケーションソフトウェアがある。筆者が所属するアスプローバ(当社)の場合、工場のみを顧客としているので、
金融や流通向けのアプリケーションシステムや情報系のシステムには詳しくないが、製造業の基幹システムについては
多くの知見を持っている。

 

成功している基幹システムと失敗している基幹システム

以前にも書かせていただいたが、当社製品の場合は、顧客の付加価値システムとなるために、顧客に基幹システムが導入されてからの検討となる。例えば、インドネシアの代表的な産業である自動車製造業では、OEMやティア1には既に基幹システムが導入されている。日本も含めてグローバルなシステムが選択されている例が多い。なぜなら、ノンカスタマイズで導入できるからだ。それらの企業は入力されるデータ精度に苦しんでいるが、時間がたてば落ち着いてくるとみている。
悲惨なのは、ティア2以下の企業だ。予算規模からか日本製のカスタマイズを売りにする製品を選択し、導入に失敗している。
  インドネシアにおける日系製造業のIT事情
要件定義ができないインドネシアのプロジェクトでは、カスタマイズ製品はリスクが高いといえる。その他、現地のシステム会社が開発したパッケージソフトウェアも散見されるが、導入後の製品保守や開発元の事業継続に問題がある。

 

アスプローバ製品はどうなのか?
もちろん、他社製品ばかりを非難する立場にはない。当社製品もノンカスタマイズ製品とはいえ、その機能の全ては
日本で開発されたものであるから、インドネシアの顧客には機能が多過ぎる。いわゆる「ガラパゴス製品」だ。
そこで、当社は「ライト版」というアジアの顧客に必要不可欠な機能のみを搭載した製品を開発した。
ライト版といっても、正式版と製品モジュールは同じで、顧客の生産スケジューラ利用技術の向上や要望の高度化に
合わせて、追加機能をオプションとして提供できる。欧米系のERPシステムのように、スモールスタート版といっても、
正式版とは製品が異なり、アップグレードする際に顧客が過去の情報資産を捨てなければならないような不利益はない。

 

ITプロジェクト成功のための3大要素

業務システムの導入には、

製品の選択
導入会社
顧客自身の体制

の3つが大きく絡む。筆者の経験からすれば、顧客のプロジェクト体制の好悪がプロジェクトの成功可否に大きく影響する。
製品はインドネシアでそれなりの実績があるものであれば問題ない(最低でもインドネシアでの導入実績が10社以上ある
と望ましい)。顧客は導入のための費用を支払うために、どうしても導入会社におんぶにだっこになりがちだ。
ここに落とし穴がある。当社製品もそうだが、あくまで導入会社と顧客の契約は委託契約だ。成功を最後まで保証
するものではない。主体は顧客、導入会社はサポーターにすぎない。この観点からすれば、導入製品やサポーターを
決める前に、既に検討製品をインドネシアで導入している企業を見学することをオススメする(もちろん導入に成功
している企業に限るが)。製品の使われようも見学できるし、導入時点での顧客の苦労やカットオーバー後の維持管理
体制についてディスカッションできるとよい。

 

日本本社によるコンプライアンスの功罪
日本本社からすれば、「海外工場に勝手にやらせて、日本では何をしているか分からない」。そのような状況を避ける
べきことは、企業のコンプライアンス上からしても理解できる。しかし、行き過ぎたコンプライアンスには反対だ。
先日もある大手企業のインドネシア工場を訪ねたが、話に出るのは、「あくまで日本本社の方針次第」という言葉だ。
現地におり、日本とは異なるインドネシア事情を知る人が、その事情を本社に上申しないで、システムの導入に成功
するのだろうか?答えは否である。こうしたインドネシア工場の典型的な状況は、日本本社から人が来て日本の工場で
導入成功したシステムを短期間で導入するというパターンだ。
しかし、短期間での導入は、その後のシステム本稼働には至らない。最悪の場合、もともとのExcel運用に戻ってしまうか、
その時の日本人駐在者が帰国した時点で、あやふやな結果となるのがオチだ。

 

では、どうすれば成功するのか?

良い製品を選択し(必ずノンカスタマイズ製品)、良いパートナーを選べた(製造業に詳しいSEのいる会社)として、顧客のプロジェクト体制はどうするか? 当社製品の場合、生産スケジュールの作成という限定された業務への適用となる。その点、生産管理システムなどの基幹システムの導入と比較すると関係者が少ない。よって、基幹システムの導入にかかるような工数、期間と比較すると当社製品の場合、短期間で導入できる。
しかし、生産スケジューラは生産スケジューラ導入なりの越えなければならない壁が2つある。1つは、これまで現在の生産スケジュールをExcelで作ってきた人間の抵抗である。もう1つは、製造現場の人間が生産スケジューラからの指示通りに実際のモノづくりをするかどうかの問題だ。
インドネシアにおける日系製造業のIT事情
生産スケジュールは、歴史のあるインドネシア工場ほど、インドネシアのスタッフのみで長く運用されてきており、日本人の駐在員(少なくとも3~5年で日本に帰ってしまう)には未知の世界であるケースが多い。もちろん、スケジュール結果は押さえていると思うが、それまでの仕組みを理解していないというのが現実だ。
生産スケジューラの導入に関していえば、必ず、インドネシア人を主体に顧客のプロジェクトも、導入会社のメンバーも構成することが不可欠だ。また、既存の生産計画者の代わりに若手で、新しくこの業務にかかわる人間を生産管理部、製造部のメンバーとしてプロジェクトに入れるとより良いだろう。“新しいぶどう酒は新しい革袋に入れるべき”ということだ。

次回は、インドネシアのIT業界でも、イノベーションのレトリックというか?
レガシーシステムの呪縛がない故に、新しいトレンドのシステムが入ってきている。
例えば、AI技術を利用したそれだが、そうしたシステムの現状をご報告したい。(次回に続く)

*本記事は、製造業のための製品・サービス情報サイト『Tech Factory』に連載中です。
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アスプローバ株式会社 副社長 藤井賢一郎
日本国内・アジア域で500社以上の製造業に生産スケジューラを導入するプロジェクトに関わる。
ここ10年は中国・タイ・インドネシアとアジア各国に駐在し、ビジネスを拡大。
生産管理・生産スケジューラに関わる複数著書がある。
アスプローバ副社長の藤井のアジア現地での経験、ノウハウがつまった1冊。
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