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三菱重工業株式会社 様

三菱重工業株式会社 様

スケジューリング作業の自動化を 目的としてAsprovaを導入、
受注オプションの追加導入で 生産計画の平準化にも大きな効果!



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三菱重工業株式会社 名古屋誘導推進システム製作所様は、1920年に三菱内燃機製造株式会社 名古屋工場として発足した。終戦までに零戦などを製作し、戦後には航空機事業を再開、航空エンジンの修理作業にも着手した。その後、様々な航空・宇宙エンジンの開発やロケットの打ち上げに携わり、現在では生産高の半数以上を、地対空誘導弾システム「ペトリオット」などミサイル関連製品が占めている。

同製作所では2003年、人手によるスケジューリング作業の効率化を目的としてAsprovaを導入し、2007年には生産計画の平準化を目指して受注オプションを追加した。Asprova導入の背景、導入効果、今後の展望などについて、名古屋誘導推進システム製作所 工作部 生産技術課 主任の吉野一広氏にお話を伺った。

三菱重工業株式会社  三菱重工業株式会社
 ■本社所在地: 東京都港区港南2-16-5横浜市西区みなとみらい3-3-1
 ■設立: 1950年1月11日
 ■資本金: 2656億円(2008年3月31日現在)
 ■年間売上高: [連結]3兆2030億円(2007年4月1日〜2008年3月31日)
  [名古屋誘導推進システム製作所 生産高]1609億円(2006年4月1日〜2007年3月31日)
 ■従業員数: 1810人(2007年4月1日現在)
 ■事業内容: エネルギー、航空、宇宙開発などに関連する製品の開発・生産・販売
  [名古屋誘導推進システム製作所]飛昇体、航空・宇宙エンジン、制御機器等の
                          開発・生産・修理など

■スケジューリング作業の自動化と精度向上を目指して、Asprovaを導入

今回Asprova導入対象として紹介するのは、民間航空機に使われる航空エンジンを構成する部品の1つで、エンジン内で燃焼ガスの力を動力に変換する「ディスク」と呼ばれる装置の製造ラインだ。同製作所がディスクを含む各種部品を製造してエンジンメーカーに納め、エンジンメーカーがエンジンの形に組み立てて、航空会社に出荷する、という流れになる。

同製作所では2003年以前から、人手で行なっているスケジューリング作業の効率化を考えていた。それというのも、当時は人手で引いたスケジュールで作業を行なうと遅延が出るという問題が付きまとっており、頻繁にスケジュールを作り直さなければならないという事態が発生していたためだ。修正版ができた頃にはまた状況が変わってしまっており、正確な完成見通しも立たない。そこで同製作所は、作業自体の負荷軽減とスケジュールの精度向上を目的として、Asprovaを導入した。Asprova選定の理由について、工作部 生産技術課 主任の吉野一広氏は、次のように語る。
「まずユーザー側で設定できるパラメータが非常に豊富だということです。どこの現場もそうかもしれませんが、やはり自分たちのもの作りには特殊な事情があると考えています。Asprovaの柔軟性は、それに応えてくれるものでした」。  また他のスケジューラーも検討したが、組み立て系の製造ラインをサポートしているものがほとんどで、「うちのようなプロセス系が主体のラインもカバーしている製品としては、やはりAsprovaだろうという判断」(吉野氏)だったとのことだ。

Asprovaの導入対象をディスクの製造ラインに絞った理由としては、ある程度設備の固定ができるということ、またラインを限定してアイテム数を減らすことで、変動要素も抑えられると判断したことが挙げられる。ちなみにディスク製造の流れは、素材の削り→溝彫り→穴あけ→丸み付け→穴の研磨→検査といった形で、細かいものを含め約15工程ある。
■受注オプションのリリースを契機に、生産計画の平準化にもAsprovaを活用

導入後のAsprovaの利用状況は、とりあえず動かしてみて、進捗状況を入力するといったレベルで、実際にラインを動かすための計画立案は、結局人に頼っていたという。その理由として吉野氏は、データの整備にかかる手間を挙げる。

「当時の基幹システムではホストコンピュータを使っていたのですが、ホストからデータを自動でAsprovaに取り込み、マスターデータを作るという作業がかなり困難でした。バッチ処理でデータを落として人手で対応するということをやっていたのですが、どうしても限界がある。またマスターのメンテナンスはAsprova側で行なうので担当者は操作を覚える必要があり、さらにその人しか作業できないという状況になります。日々の業務が優先されてメンテナンスが滞る傾向があり、うまく利用が進んでいませんでした」。

こうした事態を打開したのが、2006年から同社が進めていたダウンサイジングによる基幹システムのリプレイスだ。これによって再度Asprovaに脚光が当たったという。それというのも、サーバー間の連携でマスターデータや進捗データを容易にAsprovaに取り込むことが可能となるからだ。さらにこのダウンサイジングのタイミングで、アスプローバが受注情報と工場内の製造計画を紐付け、連動させる『受注オプション』をリリースした。これもAsprovaの活用に改めて拍車がかかった理由の1つだ。

「私は生産計画を作る部門にいたこともあり、生産計画を平準化したいとも考えていました。エンジン本体は年間で作る台数が決まっており、新規製作分については受注生産の形で製造することができるのですが、修理やオーバーホールで使用する交換部品は、航空会社様の事情でオーダー数も大きく変動するので、どうしても見込み生産が必要です。そこで、その生産計画を立てる作業にもAsprovaを活用できないかと考えていました」(吉野氏)。

そのためには、受注情報をAsprova側に取り込んで、計画立案作業に連動させる必要がある。これが受注オプションのリリースによって可能となった。
「基幹システムのダウンサイジングのタイミングと受注オプションリリースのタイミングがうまく重なったことで、従来のAsprova運用時の課題を解決すると同時に、生産計画の平準化という新たな目的までを実現することができました」(吉野氏)。
■現場の使いやすさを考慮し、操作を容易にするユーザインタフェースも開発

基幹システムのリプレイスは2007年2月に完了、またディスクの製造ラインを対象としたAsprovaの調整は2007年6月末に終了した。その後、同製作所はAsprovaの操作性を高めるユーザインタフェースの開発に着手している。この背景について、吉野氏は次のように説明する。
「実際の運用に当たっては、Asprovaを直接見て作業をするのかという点が問題になりました。それというのも、Asprovaを操作するためには使い方を覚えなければならず、現場の人たちにはかなりの負荷になります。また特定の担当者しか操作できないという状況も万一の場合には好ましくありません。そこで誰でもスケジューリングができるようにしようということで、新たにユーザインタフェースを開発することにしました」。

Asprovaを直接操作することなく、条件だけを入力してボタンをクリックすればスケジュールが自動生成される、というレベルのほうが現場としては使いやすい。そのためのインタフェースを開発したということだ。このインタフェースの開発は2007年末に完了した。
■受注オプションの導入によって、生産計画の迅速化と計画精度の向上を実現

同製作所は2007年11月末から、受注オプションの導入も始め、約1ヵ月間で導入を完了、さらに2、3ヵ月をかけてチューニングを行ない、運用に乗せた。これによって、安全在庫を考慮しつつ、受注情報から生産計画を立案することが可能となった。
「例えば在庫数量を設定することによって、これまで担当者に直接聞かなければ分からなかった情報が明確になります。それをマネジメント担当の人間が見ることで、生産計画を調整するための議論もすることができます。また部品ごとに1個単位で、あるいは5個単位で流すというロット数を明確にルール化しておくことで、生産計画の精度も大幅に向上しました。ただし各担当者が必ずレビューを行ない、その時点で新たな変動要因が発生しているようであればそれを盛り込んでリスケジュールをかける、という調整は行なっています。やはり細かい現場の意向を、Asprovaのパラメータとして条件設定していくという作業を繰り返さなければ、イメージ通りの結果は出てきません。Asprovaを本当に活用していくためには避けて通ることのできない作業です」(吉野氏)。

同製作所では生産計画の見直しを3ヵ月単位で行なっていたが、受注オプションの導入によって、従来はトータルで約1週間程度かかっていた作業が、1〜2日でできるようになったという。
また異なる部品の製造工程で競合する設備がある場合には、各々の工程担当者間で調整を行なう必要があるが、これがうまくできていなかった。そのため、「計画を立てたのはいいが、実行するのは難しいというスケジュールも存在していた」(吉野氏)という。これらの課題も、設備計画までを考慮した生産計画を立てることが可能となったことで解決した。

現在では2週間に1回、Asprovaを利用して生産計画を立てているが、出てきた計画は1週間ごとに人手で調整をしているという。「理想的には毎日でもAsprovaを回して随時スケジュール調整を行ないたいのですが、うちでは紙に出したものを作業指示書として現場に渡すというやり方が定着しており、これをいきなり変えるわけにはいきません。今後は時間をかけて、日々の指示を電子的に行なうようにしたいと考えています。これが実現すれば、Asprovaの使用頻度もさらに上げることができると思います」(吉野氏)。
また将来的には、実績把握を自動的に行ない、それをAsprovaに反映する仕組みを構築することで「Asprovaの計画の精度をさらに高めていきたい」(吉野氏)とのことだ。
■その他の効果

短期計画に加えて、Asprovaの中長期計画オプションにより、3年超の計画立案および負荷調整を可能とし、数ヶ月先の納期遅れなどの早期の問題発見、対処を可能にしました。
Asprovaの中長期オプションは、短期計画の納期遵守に加えて、先の計画の納期調整・ライン設備保全などの要求にこたえます。
■お客様の声

当初はスケジューリング作業の自動化を目的としてAsprovaを導入したのですが、マスターデータのメンテナンスなどが運用に乗らず、思い通りの効果が出ていませんでした。しかし基幹システムのダウンサイジングとAsprovaの受注オプションの登場によって、Asprovaの利用に拍車がかかりました。今では生産計画の平準化にまで活用場面を拡げています。
三菱重工業株式会社  名古屋誘導推進システム製作所
 工作部 生産技術課
 主任
 吉野一広氏