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富士シート株式会社 様

富士シート株式会社 様

富士シート株式会社 ITシステムに不慣れでも「使いこなせるシステム」を導入
後工程に安定供給するためのミスのない生産スケジューリング業務を実現。
自動車用シートおよび内装部品の開発、生産を手がける富士シート株式会社(以下、富士シート)では、プレス工程の生産計画に大きな悩みを抱えていました。プレス工程は最初の工程なので、後工程を止めないように欠品を出すわけには行きません。しかし、品質を確保するためには定期的に金型のメンテナンスが必要です。メンテナンス中は部品の生産が止まるので、プレス機と金型をどう組み合わせるかが生産計画を立案する際の最も難しいところです。これまでは、製造現場に精通したベテラン社員が生産計画を立案していましたが、脱属人化と効率化を目指して、生産スケジューラ「Asprova APS」(以下、Asprova)を導入されました。富士シートのプレス工程の課題とAsprova導入の経緯と効果について富士シート株式会社 滋賀第1工場 プレス課 課長 南健一氏、プレス課 プレス係 係長 川村伸祐氏、プレス課 プレス係 班長 高橋大地氏の3名と、導入をサポートされたパナソニックFSエンジニアリング株式会社(以下、パナソニック) 迫田真士氏に詳しく伺いました。
富士シート株式会社
■富士シート株式会社 滋賀第1工場
■住所:滋賀県近江八幡市南津田町1950
■設立:1959年12月
■資本金:1億8千万円
■従業員数:786人(連結)(2020年8月現在)
■事業内容:自動車用シートおよび内装部品の開発生産

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富士シート株式会社滋賀第1工場では、原材料から完成品まで自動車用シートを一貫製造し、ダイハツ工業株式会社製軽自動車の主要車種用シートを製造しています。

もくじ

 

 

■自動車用シートの製造工程

 

-- 自動車用シートの製造工程について教えてください。

他の工場とは違って、滋賀第1工場では材料仕入れから完成品までを一貫生産しています。製造するシートの種類も多く、合計16車種のシートを製造しています。

シートを製造する最初の工程がプレス工程です。材料となる薄い鋼板を400トン~1,000トンのプレス機で成形して部品を作ります。次に部品を溶接してフレームを作ります。最後にフレームにクッションやカバーを取り付けて、完成です。プレス工程が最初の工程なので、後工程の溶接工程や組立工程がスムーズに動くように欠品を出さないことが重要です。

生産計画は、毎月の発注数から立案しています。月末に翌月の発注数がお客様から伝えられるので、納品数を決め、生産量を決め、必要な設備、金型、材料を決めて、生産計画を立案します。生産計画に従い、材料を仕入れ、製造設備を準備し、稼働時間を設定します。

このような工程により、弊社ではダイハツ軽自動車のシート、トヨタ車の一部、介護車両のシートを製造しています。

富士シート株式会社
自動車用シートの製造工程

 

■生産計画はパズル

 

-- 生産計画を立てる際の課題について教えてください。
受注生産の場合は季節要因などにより需要の変動があり、生産量が大きく変動するということをよく聞きますが、弊社の場合、月末に翌月の発注数がお客様から伝えられるので、予定数と生産量が大きくずれることはありません。課題があったのは、必要な品目を必要な数量だけ生産するために生産設備をどう管理するかということでした。

プレス機を例に挙げると、滋賀第1工場には400~1,000トンのプレス 設備が6台あります。生産する品目の数は160種類以上あり、プレス金型の種類も140を超えます。金型をプレス機にセットしてプレスしますが、ここでポイントとなるのが金型のコンディションです。鉄でできた金型で4㎜厚の鉄板を打ち抜くわけですから、徐々に摩耗します。品質を確保するためにそれぞれの金型にはプレスできる上限回数が設けてあり、上限回数に達したら金型をメンテナンスしなければなりません。メンテナンス中は別の金型をプレス機にセットして、別の部品を生産します。メンテナンスの終わった金型は、プレス機に戻して生産を再開します。そのときに再開前の部品の生産が終わっていれば問題ありませんが、途中だった場合は別のプレス機で生産を続けなければなりません。
このようにプレス工程の生産計画は、在庫量と残り生産量、金型のコンディション、プレス機の稼働状態を見極めて、最適な組み合わせを作るということです。通常の状態でも複雑なパズルを解くような難しい作業なのですが、金型の欠損、設備の故障、部品の不良、欠品の発生などのイレギュラー事項が発生した場合には、生産計画を組み直さなければならないので、一度解いたパズルをバラバラにしてもう一回解き直すような作業になります。
富士シート株式会社
「生産計画立案は、在庫、生産量、金型、プレス機を組み合わせるパズル」
これまでは、製造工程を熟知している専門家が生産計画を立案してきましたが、弊害が目立つようになりました。まず、生産計画を立案できる人が限られているため、他の人が肩代わりすることができません。いわゆる属人化です。また、これまでは手計算で生産計画を立案してきたので、計画変更には膨大な手間がかかり、どうしてもミスが発生していました。

生産計画のミスで欠品が出てしまい、後工程が止まるというトラブルが何度か発生しました。また、不良品が見つかったり、機材が不調になったりすると、残業や休日返上で必死に生産して遅れを取り戻していました。

これが弊社でAsprovaを導入するきっかけとなりました。

 

■懐疑的な社内を説得

 

-- Asprovaをどのように導入されたかを教えてください。
富士シート株式会社
「システム化にアレルギーがある社内で説得を重ね、ようやく導入できました。」(南氏)
工場をご覧になるとわかると思うんですが、弊社は自動車用シート製造の老舗です。滋賀第1工場も32年の歴史があります。そのため、仕事でも古いやり方が残っていまして、いまだに手書きや手計算をしているところがあります。会社の中にも、システム化でスマートに仕事を進めるよりも人手をかけて手作業で取り組む方がいいんだという雰囲気があります。こういった中でプレス工程のシステム化までには、いくつか苦労がありました。
以前に別の部署でシステム化に失敗したことがあるので、システム化に対するアレルギーが社内にありました。数年前にもプレス工程のシステム化を提案したのですが、そのときは否決されています。やはり「システム化のコストに見合う効果が得られるのか?今までどおり人手でやればいいのではないか?」という疑問に堂々と答えられないと、承認してもらえません。今回、導入をサポートいただいたパナソニックさんと一緒にシステム化のメリットを資料にまとめ、何度も提案を重ねて、ようやく社長からOKをもらいました。

プレス工程のシステム化のメリットは、4つあると考えていました。
 1)生産計画立案の工数削減
 2)在庫量の削減
 3)生産計画立案の脱属人化
 4)生産計画を立案する現場管理者が本来の管理業務に専念

システム化が承認されてからも、すんなり導入できたわけではありませんでした。手作業に慣れているところに生産スケジューラを導入するとなれば、現場から反発を受けることが予想されます。そこで、あえてパソコンに不慣れな担当者をスカウトし、彼にAsprovaの使い方を覚えてもらうことでパソコンが得意ではなくても使えることを現場に浸透させようと思いました。
富士シート株式会社
「Excelも使えなかったのですが、パナソニックさんにOJTで教えてもらい、慣れることができました。」(高橋氏)
他部署からスカウトされた高橋班長は、着任したばかりの頃をこう振り返っています。
「Asprovaどころか、パソコンも不慣れだったので、最初は無理なんじゃないかと思いましたが、パナソニックさんが丁寧に教えてくださるので、徐々に操作にも慣れていき、自信が付きました。今では、以前のような手計算に戻れと言われても、とてもできないと感じます。今後はAsprovaマスターとして、使い方を広めて行きたいと思っています。」
富士シート株式会社
「条件設定には悩みましたが、現場密着型でサポートしてもらい、スムーズに導入できました。」(川村氏)
Asprova導入作業を担当した川村係長は、マスター準備で条件の設定に悩んだそうです。
「実際の生産の動き、プレス機ごとの特性、稼働率などの条件設定に一番苦労しました。例えば、金型交換作業はどういう条件を設定すればいいのか。また、本来ならば一度にプレスできる左右ペアの部品の必要数が左右で違う場合などイレギュラーな設定をどう実現するのか悩みました。それでも、困ったことがあると、パナソニックさんに相談して要望を聞いてもらい、プロトタイプをまた改善していくというやり方を繰り返して計画の精度を上げていきました。」
-- パナソニック 迫田真士氏のコメント
要件定義で欲張らず小さいところから始めたことが、導入が成功した理由ではないかと思います。富士シート様はマンパワー重視型で、システム導入には慣れていらっしゃいません。通常であれば、導入の際は[要件定義]-[構築]-[テスト]-[導入]というウォーターフォール型のプロセスで進めますが、今回は最初にすべての要件を定義するのが難しいので、小さく要件定義をして、プロトタイプを作り、ディスカッションして改善していく、アジャイル型のプロセスを採用しました。手間はかかりましたが、早い段階で業務が理解できたので、最終的な精度も上がりました。昨年12月に導入して3か月経過していますが、不満やトラブルは出ていません。もし、これがウォーターフォール型のプロセスで導入したとすれば、稼働後にさまざまなトラブルや変更要求が出て、修正が大変だったでしょう。

今回の導入はプレス工程1つだけなので、パイロット1か月、導入4か月と短い期間で導入できました。
-- Asprovaを選んだ決め手は、何でしたか?
他社製品も検討しましたが、パナソニックさんの製品説明が弊社の理想に一番近かったのが決め手となりました。また、ITの専門家でなく、誰でも使えるというのもポイントです。パナソニックさんとは溶接ロボットでお付き合いがありましたが、プレス工程のシステム化でも親身になってサポートしていただき、現場に密着して進めてもらったのが良かったと思います。

 

■手作業をAsprovaに置き換えてみると

 

-- Asprovaを導入した効果について教えてください。
当初考えていたシステム化の4つのメリットは、実現できたと思います。

1)生産計画立案の工数削減
1日当たり90分かかっていましたが、15分に削減できました。

2)在庫量の削減
在庫を35%削減できました。以前は後工程を止めないように多めの在庫を持っていましたが、今は生産計画の精度が上がったので余計な在庫を持たずに済むようになりました。導入直後に手計算の計画とAsprovaの計画を比較してみましたが、以前は生産にムダがあったことを実感できました。

3)生産計画立案の脱属人化
専門家でなくても、生産計画の立案、変更ができるようになりました。また、生産計画を共有化し、見える化することができたので、現場の目標が明確になり、目標に向かって作業するように変わりました。

4)生産計画を立案する現場管理者が本来の管理業務に専念
生産計画の立案や変更があるたびに現場管理者がかかりっきりになってしまうので、本来やるべき管理業務がおろそかになり、製造全体の効率低下につながっていました。現場管理者が生産現場の改善など本来の業務に時間を使えれば、製造全体を改善できると思います。

まだ手書きの作業も残っているので、今後はそういった部分もシステム化していけば仕事が楽になるという機運が芽生えてきました。役員の間でも、システム化によってコスト以上のリターンが得られるということが理解されて来たと思います。弊社では生産計画のシステム化は初めてでしたが、今回の事例を工場全体に広げていきたいと思います。

 

■今後に向けて

 

-- アスプローバ社への要望や期待があれば、教えてください。
現在は、金型破損などイレギュラーな事象が起きたときには手作業で生産計画を修正していますが、これが自動的にできるようになると大変助かります。また、生産の遅れを挽回するために残業する必要があるときに、必要な残業時間が自動設定できると大変便利です。
-- Asprovaの導入を検討されている方にアドバイスがありましたら、お聞かせください。
我々はシステムの素人なので、わからないこと だらけのスタートでした。自分たちだけでわからないこと を考えても良い答えは出てこないので、信頼できるプロに聞くのが一番だと思います。今回は、パナソニックさんに現場に近いところで開発やサポートをしてもらったので、短期間で不満のない導入ができました。

当初は現場からの抵抗もありましたが、今では信頼を得ることができました。プレス工程と同じような作業は他にもあるので、工場全体のシステム化の先駆けになれればいいと思っています。工場全体を見渡せば手作業がまだまだ残っているので、例えば業務日報などもITシステムに取り込んで、他部署からでも見えるようにしていきたいですね。

システム化により工数削減、在庫削減といった目に見える効果も上がりましたが、見える化、情報共有によって社内の風通しが良くなったこともメリットとして挙げられます。スタート時点では不安を感じることもありましたが、自分たちの力だけでなく、導入支援ベンダーの力も借りながら、欲張らずに小さいところから始めたのが良かったのではないかと思います。弊社での取り組みが皆さんのご参考になれば、大変うれしく思います。
 

* 取材日時 2022年3月25日
* 記載の担当部署は、取材時の組織名です。