VMI(ベンダー管理在庫)

材料供給業者が顧客先の資材や部品などを所有し管理する方式のことを指す。たとえば、富山の薬売りのような方式がベンダー管理在庫といえよう。


 VMI(ベンダー管理在庫)は、ベンダー、すなわち材料供給業者が顧客先企業の資材や部品材料を所有し、管理する方式である。消費された分がそのまま仕入と見なされる。マイケルハマーの『リエンジニアリング革命』で紹介されたP&G社とウォールマート社のVMIは、紙おむつメーカーと小売店のパートナー取引の例として有名である。メーカーと小売店が顧客満足度を共通の目標として、POSデータを共有するパートナー関係からさらに一歩進んで、店の在庫はメーカーのものだとすれば、売れ行きも在庫もすべてメーカーで把握でき、メーカーが小売店に代わって自社への発注を行なう。このVMI方式で、売上が大きく伸びたことが報告されている。
 日本でも富山の配置薬商売は、VMI方式である。定期的に訪問し、消費された分だけの薬を補充・納品するわけで、薬屋にとっては顧客である家庭を小売の場とみなす。P&G社の例でも、ウォールマート社の店は、メーカーであるP&G社に販売の場所を提供しているとみることができる。場所代に相当するのが一定期間の粗利とみれば、ウォールマート社は不動産業を営んでいるともいえる。
 VMI方式は、メーカーが売れ残りを最小にし、商品の回転率を上げるために、広告販売などの戦略を打つ必要性も提起している。このことは、メーカーは製造から流通・販売までの資源配分を同期化させる、すなわち、サプライチェーンマネジメントの戦略的仕掛け作りも重視しなければならないということである。このようにVMI方式は、企業間の取引の連携手段を提供するコンセプトであり、一つのバーチャルコーポレーションを形成するツールともいえる。
 回転寿司のコンベアに載って回っている寿司皿は、ベンダー(寿司屋)の管理在庫(VMI)であり、客がそれをとって自分のカウンターに移したときが、注文かつ納品となる。
 VMIはメーカーにとっては流通業への下流統合となり、流通業にとっては仕入と在庫管理をベンダーにアウトソーシングすることで、自社のビジネスのコアコンピタンスをより顧客に近いところに移動させる機会ともなる。