サービスレベル

サプライチェーンの関係者にとって、ビジネス上の競争優位に立たせるキーは、顧客満足度である。必要なときに必要なものが手にできるというサービスレベルをいかに向上させるかが、問題になる。


 サプライチェーンマネジメントは、経営スピードを向上させることでスループットを上げることが第一の目的である。それを顧客満足度を示す指標に喩えると、顧客を満足させてくれるのは複数の製品提供者の中で、同じ製品であれば必要なときに、必要なだけ提供してくれるサプライヤに他ならない。消耗品の場合は、店頭での品切れがなく、顧客にその存在をアピールしている商品である。
 企業にとっては下流の製造や組立、顧客にとっては上流の製造企業は、必要なときに、確実に部品なり資材を提供してくれるサプライヤである。生産計画に合わせてジャストインタイムで納入してくれることで、トータルのリードタイムを短縮することができる。それ以外に納入頻度がいくらか(一日二回か一回か、三日に一回、週一回、月二回……など)、納期は受注後一ヵ月、二ヵ月、また契約納期達成率九六%、最低ロットサイズ一ケース二四本、または小口バラ売りの一本からとか、注文後二四時間以内に納期を確実に回答できる、……などということがあり、これらをサービスレベルという。
 このようなサービスレベルは、コストアップの要因になったとしても、顧客にとってまたは顧客の顧客というサプライチェーン上の関係者にとって、ビジネス上の競争優位という価値を生む。その価値がスループットに与える影響を、ベンチマーキング分析の結果からさらに相関分析することによって、コストとスループットとの関係が考察できる情報を得ることができるかもしれない。物流コストや製造コストの部分的増加は、売上比五%部分の一〇%の上昇があるとして、スループットの一〇%上昇は比較にならないほどキャッシュフロー上でプラスのインパクトがある。
 売上比五%部分の一〇%増加となるサプライチェーン上のコストで、スループットが一〇%上がれば一〇%-〇・〇五×一〇%=九・五%のキャッシュフローの上昇となる。一般にサービスレベルとスループットとの関係は不透明であることが多いので、サービスレベルのベンチマーキングと財務の総合的な分析は、コンサルティングインタビューなどを通して洞察(インサイト)を得る重要なプロセスである。したがって、サービスレベルは収益向上の改善策抽出のためのキーとなる。
 価格感度分析、サービスレベルと売上伸び率の相関分析など、ベンチマーキングによる事業分析は、一種の洞察力を必要とする。