ベネトン

製造と販売の独自のサプライチェーンを構築し成果を上げたアパレルメーカー。全世界にフランチャイズ店のネットワークを張り、末端の需要動向を生産に反映させるサプライシステムを実現。


 イタリアのアパレルメーカーであるベネトン社。同社がローカル企業から世界のアパレルメーカーに成長したのは、サプライチェーン再構築戦略の成果である。同社は、従来のサプライチェーンの順序を否定し、製造と販売の独自のサプライチェーンを構築した。販売については、全世界に直営店とフランチャイズ店のネットワークを張り、末端の需要動向を一週間のリードタイムで生産に反映させるサプライシステムを実現した。
 アパレル業界ではデザインや色柄の組合せには流行があり、ライフサイクルは短かい。新しい流行を早くキャッチアップしても、従来のサプライシステムでは製品化するのに半年のリードタイムを要する。アパレルのサプライチェーンは「糸のつむぎ」から始めて「染める」、「織る」を経て、「原反」という仕掛品を作り、「裁断」、「縫製」を経て「衣服」という製品を完成し、店舗で販売する。原反までの前工程は、コストダウンのために大ロットで処理されるため、半年のリードタイムが常識であった。このロットの大きさとリードタイムの長さが、在庫を過剰にし、かつ機会損失を発生させる要因であった。
 ベネトン社のソリューションは、この手順を逆にして原反まで無地のままで布を作り、必要に応じて小ロットで需要に合わせて「プリント」する後染め方式にしたことである。これにより、一週間のリードタイムでプリントから縫製まで完結でき、短かいサイクルタイムで実需と生産をシンクロナイズすることができるようになった。
 この事例は、ローカル企業が世界企業として成功するサプライチェーン再構築戦略として、ハーバードビジネススクールのケーススタディになったほどのモデルである。仕掛在庫として色付きの反物をもたず、無地の反物をバッファとしてもつことで、色の流行の変化による在庫の陣腐化を防ぎ、短かいリードタイムで全世界に供給するようにしたのである。
 サプライチェーンマネジメントは、需要の動きにサプライチェーン全体の動きをシンクロ(同期化)させることでリードタイムを短縮し、スループットを上げることである。そのためベネトン社はデマンドに素速く追縦できるように、サプライチェーンのオペレーションを再配置して販売と生産の同期化を図ったのである。