多品種少量生産では欠かせない「種類の平準化」とは

2022.09.07S1:組立ラインの投入順序を最適化したい

 生産管理を語る上で避けては通れない平準化。特に品種を均一に生産ラインに流す平準化は、多品種少量生産が主流の今の製造業では欠かせないテーマです。

 今回は種類の平準化とは何か、また、それを実現するうえで欠かせない要素について解説します。

さまざまな工場における種類の平準化

 種類の平準化は、一つの製品をまとめ生産するのではなく、複数の製品を少ロット化して生産ラインに投入することを指します。作る品種に偏りがなくなることで、「生産ラインの負荷を抑える」「在庫を少なくする」「部品の引き取りがバラつかない」などの効果があります

 完成車メーカーの組み立てラインは、種類の平準化を推し進めている代表的な存在でしょう。自動車の組み立て工程は、多種多様な製品が一つの生産ラインに流れる混流生産です。2輪駆動よりも時間のかかる4輪駆動をまとめて投入すると、生産ラインの負荷が一時的に高まり、ラインがストップする可能性があります。

 そのため、生産管理では作業負荷が一時的に高くならないように、どの製品をいつ投入するのかという「投入順序の最適化」を模索するわけです。平準化の分かりやすい代表例として自動車メーカーのラインを挙げましたが、平準化が重要なのは自動車業界だけではありません。

 例えばレトルト食品を製造する食品工場を見てみましょう。レトルトカレーを代表とするレトルト食品には、殺菌工程があります。この殺菌工程では、レトルト殺菌装置を使用しますが、製品ごとに殺菌温度と処理時間は異なるのが一般的です。

 A製品は100℃・90分、B製品は120℃・100分、C製品は120℃・130分の殺菌条件で殺菌機が2台あったとします。この場合、後工程や稼働時間のことも考えて最短で殺菌工程が終わる組み合わせはどれかなど、いつ、どの製品を、どの殺菌機に投入するべきかを考えます。

 ここで注意しなければならないのは、殺菌工程で投入順序を決めるのではなく、その前の原料の投入工程から決める必要があることです。各工程の処理時間などを考慮しながら、製品の投入順序でどれが最適かを考える――具体例を挙げると、これがどれほど大変か分かるかと思います。

スキルの標準化も欠かせない

 投入順序の最適化を図っただけで平準化が実現できるかと言うと、そう単純な話ではありません。なぜなら、実際にその計画に従って動く作業者の存在があるからです。仮に作業者のスキルがバラバラで、作業の処理時間が異なれば、とても計画通りには進まないはずです。

 予定通りに作業を処理するには、各作業者のスキルを揃える標準化が欠かせない要素になります。一人の作業者が、多種多様な生産に対応できる多能工化のようなスキルも必須でしょう。その上で、設定したタクトタイムで作業が終わるように教育を施すのも生産管理の役割です。

 顧客ニーズに応えるために多品種少量生産が求められていますが、それを裏から支えているのは平準化です。とりわけ「種類の平準化」は、変化する需要に応えるための緻密な生産計画と、作業者のスキルを標準化させることが欠かせません。

  • 平準化の詳細情報はナレッジセンターにてご覧いただけます。(会員登録が必要です)

    もっと詳しく見る

技術革新や予測不能な外的要因に迅速に対応できるよう製造業務においては、より一層生産プロセス全体の改善と生産効率向上が求められています。 データやデジタル技術を活用し、生産リードタイム短縮や在庫・コスト削減などを実現する製造現場におけるDX推進の一つとして、生産スケジューラの導入がカギとなります。 次のページでは、生産スケジューラ導入によって具体的にどのような業務改善が実現したのか導入企業の事例もご紹介しています。ぜひご参考にしてください。 img_banner_aps
タグ : 平準化 組立工程